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レッド・ホット・チリ・ペッパーズ ライヴ・レポート@ FUJI ROCK FESTIVAL ’16

レポート●勝又龍介 pix(c)Masanori Naruse

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「『THE GETAWAY』は確実に(今の)俺達の完成型と言える」──レーベルが公開したオフィシャル・インタビューにて、去る6月に発売された5年振りの最新作についてそう語っていたレッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニー・キーディス(vo)。’09年に脱退したジョン・フルシアンテ(g)の後任にツアーのサポート・メンバーだったジョシュ・クリングホッファーが迎えられてからの第1弾作品『I’M WITH YOU』(’11年)では、彼らはまだ完全に新ラインナップでの理想型を見付けることができなかったが、今作ではそのマジックを最大限に発揮できた…アンソニーはそう言いたいのだろう。

その『THE GEATWAY』がリリースされてから約1ヵ月後の7月24日、チリ・ペッパーズが“FUJI ROCK FESTIVAL ’16”に4度目となる出演を果たした。今回は同フェスの記念すべき20回目の開催という特別なタイミングであり、台風に見舞われた第1回目で伝説的なステージを残した彼らが今回のヘッドライナーに抜擢されたのは至極当然、誰もが認める大トリだったわけだ。以下では、その時のパフォーマンスについてお伝えして行こう。なお最初に断っておくと、正直なところ今回のライヴではジョシュのギター・プレイを正確に聴き取ることができなかった。というのも、今回YGはライヴ前のジョシュにインタビューさせてもらうことができたのだが(そちらは本誌10月号に掲載予定なのでお楽しみに!)、取材後に彼のご厚意でステージ袖からライヴを鑑賞させてもらえることに。ただ下手側(ベースのフリー側)だったためかリズム・ギターの音が埋もれがち…という状況下で鑑賞したためである。ということで、ここでは何とか聴き取れた範囲で、ジョシュのプレイについても触れていきたい。

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チリ・ペッパーズの面々が最大規模のステージである“GREEN STAGE”に現れたのは、20時から数分過ぎた頃。もちろんイントロは、ジョシュ、フリー、そしてチャド・スミス(dr)ら楽器隊によるフリー・ジャムだ。そしてそこからは、お決まりの「Can’t Stop」が!…と思いきや、まさかの新譜収録曲「Goodbye Angels」。これには面を食らったファンも多かったことだろう(そして結局「Can’t Stop」がこの日演奏されなかったのはもっと予想外だった)。かなり攻めた選曲だと思ったが、同曲のエンディング──フリーのハイ・テンションなスラップ・ベースが炸裂し、ジョシュの情熱的なコード弾きが重なる頃には、すっかりバンドも観客もヒートアップ。

ここから「Dani California」「Scar Tissue」という鉄板曲でつないだ後、新作のリード曲「Dark Necessities」が披露された。ピアノがフィーチュアされたこの曲はチリ・ペッパーズにおいてかなり新鮮なものだと思うが、シンプルで印象的なベース・ラインとギターの単音リフが絡み合って作るグルーヴは、紛れもなくチリ・ペッパーズのそれ。キャッチーな歌メロも奏功し、新参者ながら新たなバンドのキラー・チューンとしてすっかりオーディエンスに受け入れられていた。

続いて’99年の『CALIFORNICATION』から「Parallel Universe」と「Otherside」が演奏され、ジョシュのキレッキレなカッティングが響き渡った前作収録の「Look Around」、新作のタイトル・トラック「The Getaway」が続く。そして「Californication」がプレイされたが、個人的にはこの日一番ジョシュが光っていたなと感じられたのはこの曲のソロ・パートだった。フルシアンテのオリジナル版では“枯れたギター”と表現された物悲しいフレーズが展開されていたが、ジョシュ版ではその物悲しさを引き継ぎつつ、まるでお化けの囁きのような繊細なトーンで独自のムードを演出。フルシアンテとは異なるこの浮遊感のあるサウンドは、ジョシュの大きな個性であり武器とも言えるだろう。

この後、新作の中でも特に高い完成度を誇る「Go Robot」、満場の大合唱が繰り広げられた定番曲「Under The Bridge」、ZEP的リフが心地よい「Detroit」とショウは進行して行き、本編最後は必殺チューン「By The Way」で締め括られた。

そしてアンコールである。海外のフェスではアンソニーがベースを弾きフリーがキーボードを担当してのセッションといったスペシャルな演出があったりしたが…再び現れたメンバーが演奏し始めたのは新作のラストを飾った「Dream Of A Samurai」だ。これが同曲のライヴ初披露ということで、おそらく彼らなりの日本への特別な贈り物だったのだろう。で、この曲でちょっとした事件が。曲の終盤に差し掛かったところでアンソニーがマイクをステージに叩きつけ、一瞬パフォーマンスかな?と思ったが、その後もスタンドやらモニターやらを押し倒したりと…明らかにキレている。その怒りの原因は正確にははっきりしないが、誰もが「ここで中断するのでは…?」とヒヤッとしたことだろう。しかしライヴはそのまま滞ることなく続行され、問答無用のファンク・チューン「Give It Away」へ。ジョシュがアグレッシヴにリフを掻き鳴らした同曲から、そのままエンディング・ジャムへと移り、見事ヘッドライナーとしての大役を務め上げたのだった。

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以上、10年振りに“FUJI ROCK FESTIVAL”のステージへ戻って来たチリ・ペッパーズのパフォーマンスを駆け足で振り返ってみた。セットリストにケチを付け始めたらキリがないことは分かっているが…しかしあえて言わせてもらうと、海外のフェスでやっていた「Magic Johnson」や「Nobody Weird Like Me」といった『MOTHER’S MILK』(’89年)の曲が全くなかったのは、やっぱり残念無念。結構期待していたファンも少なくなかったはずだし、もし今後日本ツアーが実現するのであれば、ぜひともより濃厚なセットリストを期待したいところだ。そうは言いつつも、やはり彼らの発するエネルギーに直に触れられたことの嬉しさは筆舌に尽くしがたいものがあるし、そのカリスマ的パフォーマンスには圧倒されるものがあった。そしてジョシュと他メンバー3人による激辛バンド・マジックに、ポジティブな未来を期待できたことも今回は特筆すべきことだっただろう。

なお最後に補足しておくと、今回目視した限りで、ジョシュはサンバースト・フィニッシュのストラトキャスターをメインで使用し、数曲でグレッチをプレイ。ただストラトは同じ個体を使い続けていたのではなく、数本を弾き分けていたようだ(ジョシュの話では計4本のストラトが用意されていたという)。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 2016.7.24 @苗場スキー場“FUJI ROCK FESTIVAL ’16” セットリスト

1. Intro Jam
2. Goodbye Angels
3. Dani California
4. Scar Tissue
5. Dark Necessities
6. Parallel Universe
7. Otherside
8. Look Around
9. The Getaway
10. Californication
11. Go Robot
12. Under The Bridge
13. Detroit
14. By The Way
[encore]
15. Dream Of A Samurai
16. Give It Away