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マーティ・フリードマン ライヴ・レポート 2017.7.28@目黒Blues Alley Japan

写真●Mikio Ariga

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去る7月28日(金)、マーティ・フリードマンが目黒Blues Alley Japanにてワンマン・ライヴ『“真夏の宴” Joy and Aggression 〜 An Evening With Marty Friedman』を行なった。2セット形式で行なわれたその様子をレポートしよう。

1stセット:ストリングスを交えた初めての試み

8月2日に最新ソロ・アルバム『WALL OF SOUND』のリリースを控えたこの日、会場には多くのファンが詰めかけていた。今回は通常のロック・バンドのライヴとは若干趣向が異なり、ステージにはベース、サポート・ギター、ドラムに加えてキーボード、ヴァイオリン、そしてチェロの奏者がラインナップされていた。マーティといえば“泣き満載のギター・メロディー”。そのプレイを、ストリングスを交えたアンサンブルで堪能出来ることはファンにとってまたとない機会だといえる。

1stセットは19時より開幕。早速、幽玄なギターのイントロに続いてストリングスによるメロディーが奏でられた。最初の楽曲は1992年に発表された2ndソロ『SCENES』からの「Tibet」、そして「Angel」。「今日は初めての試みが多いので、頭がパンパンだから日本語(の精度)は勘弁して下さい」と流暢に弁解していたマーティだが(笑)、さらに同作から選曲された長編の「Valley Of Eternity」では繊細なクリーン・トーンのギターを中心に、ヴァイオリンやチェロ、そしてピアニカがメロディーを交互に奏で、壮大な曲調を極めてリアルに再現してみせた。エキゾティックなフレーズとヘヴィなリフが絡み合う後半セクションではリズム隊の堅固なサポートも加勢して、序盤からクライマックスさながらの熱量高いサウンドを生み出している。

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続く「天城越え」(2009年『TOKYO JUKE BOX』収録)からはメタル・モードにチェンジ。バンド全体が待ってましたとばかりにエンジンを吹かし、ラウドなアンサンブルで急激に場を盛り上げていった。マーティも冒頭に使っていたフェルナンデスから、今年正式に発表されたジャクソンのシグネチュア・モデルに持ち替え、極太サウンドで力強く泣きを表現。「海外では『マーティの新曲だ!』と勘違いされる」と本人は言っていたが、この曲に限らず、どんなメロディーを弾いていても顔をしかめて歌い上げる歌手の姿が聴き手の脳裏に浮かぶのは、マーティが文字通りいかに表情豊かに、そして思い通りにギターを操れる巧みさを備えているかということに他ならないだろう。1音1音が説得力に満ちている。

中盤には、日本を代表する女性ロック・シンガーであり、マーティとの親交も深い相川七瀬がサプライズ登場した。このコーナーでは過去にマーティが相川のツアーにサポート・ギタリストとして帯同した頃のエピソードを振り返るトークを交えつつ、マーティのアコースティック・ギターを伴奏に相川が自身のバラード「鳥になれたら」「優しい歌」を熱唱。これらの選曲はマーティのたっての希望とあり、穏やかながらも高揚感のあるムードが会場を包んでいた。

そしていよいよ、発売を目前に控えた新作『WALL OF SOUND』からの楽曲がライヴにてお披露目されることとなった。まずは不穏なアルペジオを軸に展開しつつ、中間に顔をのぞかせるラテン風味のパートがユニークな「Whiteworm」、続いて様々なセクションから構成されたオープニング・トラック「Self Pollution」の2曲だ。スタイル的には前作『INFERNO』(’14年)の延長線上にあるといっていいだろう。完成して間もないはずだがバンドの一体感は高く、密度の濃いグルーヴが迫り来るようなハイ・テンションな演奏には圧倒されるほかなかった。

「Thunder March〜Ballad Of The Barbie Bandits」でテンションを高めたまま本編が終わり、アンコールではメタル・アレンジの「Amazing Grace」をプレイ。一般にもお馴染みのメロディーをマーティ節で聴かせ、エネルギーを使い果たさんばかりのパフォーマンスを見せてショウは一旦終了した。

(レポート●蔵重友紀)

2ndセット:年月が経ってもブレない“泣き”のスタイル

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1stセットが終了してから約1時間。新たに入れ替わりで訪れた観客、そして引き続きの参加とおぼしき熱心なファンで、会場は再び満席だ。ちなみに普通の演者ならこの1stと2ndの合間に少しでも英気を養うのだろうが、マーティはこの間にもファンクラブ会員向けのミート&グリートを楽屋で行なっている。短い時間ながらも握手したり一緒に写真を撮ったりの、サービス精神フル発揮。常にエネルギー満タンの彼に休憩は不要ということか…、再びステージに立ったマーティの表情に全く疲れの色はなく、むしろいい具合にアクセルがかかったようにも見える。

荘厳なシンセの音色を背景に始まったのは、1stセットと同じ『SCENES』からの「West」。やはり耳に残るのは、切れ味がありながらも強烈に図太い極上のクリーンだ。特にストレートで伸びやかなロング・トーンが心地よく、一方で流麗な指使いによるシーケンス系フレーズの軽やかさもまた絶品。カウンターのように絡むチェロとのコンビネーションも素晴らしい。そこからメドレー形式で次の曲へ流れるように続く形も、1stセットと同様だ。「Night」のメロディーは「West」よりも若干クサさが濃厚で、静と動が交互に来るダイナミックな曲調の中、陶酔したようにアップ・ピッキング多めで弾く様も実にマーティらしい。

彼のMCによると、『SCENES』の曲は今回のライヴで初めて披露したとのことで、つまり1992年に発表してから一切手つかずだったらしい。「もしかすると僕のバンドのメンバーは生まれてなかったかも」と冗談めかして言っていたが…、続いて3曲目に披露された「Tears Of An Angel」は2008年の曲で、16年もの月日が空いている。にもかかわらず、核となっているテーマ・メロディーには一貫したマーティらしい強い泣きがあり、彼がいかにブレないアーティストであるか分かるというものだ。ヴァイオリンに負けない抑揚の大きさは、何だかオペラ歌手のようにも聴こえる。

さらにバラードが続き、4曲目は「Love Sorrow」。こちらは濃い泣きと言うよりも、穏やかな曲調なのにどこか悲しい、マーティが言うところの“隠し切なさ”がほのかに漂う。アルバム・ヴァージョン(2002年『MUSIC FOR SPEEDING』収録)は若干ミクスチャー感のある作り込んだ音像も特徴的だったが、ライヴで聴くとロックな力強さが加わっているのが面白い。

再び1stセットの流れを踏襲してか、中盤には『TOKYO JUKEBOX』、『TOKYO JUKEBOX 2』(2011年)からのカヴァー曲が続けて披露される。中島美嘉の「雪の華」は分厚いオクターヴ・メロディーから幕を開けスピーディーに疾走するアレンジで、バラード連発からのギャップもあって頭を振りそうになったのは筆者だけではないはず。それに続いた尾崎豊の「I LOVE YOU」は、マーティの自由な発想が爆発した形で、印象的なテーマ・メロディー以外をかなり崩して猛烈に弾きまくり。思わず彼の手元を凝視してしまうが、ふと目線を上げてマーティの顔を見ると、実にギター・キッズ的な表情で楽しそう。あるいはあふれるJ-POP愛が抑え切れないのか。
さらに小休止を挟んだ後、エルヴィス・プレスリーで有名な「Hound Dog」、からのラモーンズ「Rockaway Beach」という、趣味丸出しなメドレーまでも飛び出す。実はロックンローラーでパンク野郎なマーティ、6本の弦をガツガツかき鳴らしながら荒っぽく歌う…の図が、エキゾティックで繊細の極みだった前半とあまりにも違って面白過ぎるが、これもまたマーティらしいと言えばらしい。

「日本に来てから両極端なメリハリを大事にしているので、(激しいパンクの)直後にマーティ節の泣きバラードをやろうと思います」…そんなMCに続いて奏でられたのは、『WALL OF SOUND』からのこの日3つ目の新曲「For A Friend」だ。ニュー・アルバムの中でも特にエモーショナルなこの曲は、マーティ・フリードマン・ミュージックの王道を行くもので、おそらくこの場で初めて聴いた気がしなかった人が多いはず。旋律は穏やかだが、それを奏でるマーティの手の動きはかなり忙しく、指板上を流麗に駆け巡る。盛り上がりに盛り上がりを重ねるようなドラマティックな曲調に、会場中が聴き惚れていることがよく分かる。

タメにタメた粘っこいエンディングから続く「Trance」(これも『SCENES』収録)は、アルバムでは2分弱の短いインタールード的楽曲だが、今回はそのヘヴィなリフにメンバー紹介も組み合わせる形だ。先述の通りバンドはマーティに加えてギター、ピアノ、チェロ、ヴァイオリン、ベース、ドラムの大所帯だが、中でもヤング・ギター的に耳を惹いたのがサポート・ギターを務めた岡 聡志だったことを特筆しておきたい。本編中はあくまでも裏方に徹していた彼だが、名前がコールされるとアウト系の知的なフレージングを難なく繰り出し、短い時間にしっかり観客へ印象付けていた。

メンバー紹介の楽しい空気を引っ張ったまま「Devil Take Tomorrow」の牧歌的メロディーが始まり、ショウはクライマックスを迎える。ポジティヴな雰囲気の中に突然絶望的な泣きフレーズが挿入され、すぐさま再び希望に満ち溢れた音に戻る…、その大胆な感情のコントラストはエンディングに相応しく、この夜最大の拍手が自然と客席から巻き起こる。

本来ならここで一旦ステージから降りる予定だったマーティだが、その盛り上がりっぷりに「このままもう1曲やった方がいいですか?」。もちろん観客陣に異論があるはずもない。そのまま突入したアンコールでは、まずリクエストに応えて「さくらさくら」をクリーンなソロ・ギターで披露(ファンならご存知だろうが、この曲はHAWAII時代からの持ちネタでもある)。素晴らしくコブシの効いた弾きっぷりで喝采を浴びてから、そのまま「Undertow」へと続く。最後は美しく伸びるロング・トーンと艶やかなヴィブラートが、“真夏の宴”を華やかに締めくくるのだった。
(レポート●坂東健太)

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マーティ・フリードマン 2017.7.28 ラインナップ&セットリスト

出演ラインナップ

ベース:
ドラム:CHARGEEEEEE…
サポート・ギター:岡 聡志
ピアノ&ストリングス:マシュマロシスターズ

1stセット

1. Tibet~Angel
2. Valley Of Eternity
3. Bittersweet
4. 天城越え
5. 帰りたくなったよ
6. INFERNO
7. 鳥になれたら(ゲスト:相川七瀬)
8. 優しい歌(ゲスト:相川七瀬)
9. Whiteworm
10. Self Pollution
11. Thunder March~Ballad Of The Barbie Bandits
12. Amazing Grace

2ndセット

1. West
2. Night
3. Tears Of An Angel
4. Lovesorrow
5. 雪の華
6. I Love You
7. メドレー(Hound Dog〜Rockaway Beach)
8. For A Friend
9. Trance
10. Devil Take Tomorrow
11. Undertow