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Legend Guitarist~Electric Star~ ライヴ・レポート

レポート●坂東健太 写真●麻生とおる

去る2016年12月21日、ゼップダイバーシティ東京にて、実に熱いギター・イベントが行なわれていたことをご存知だろうか。“Legend Guitarist 〜Electric Star〜”と名付けられたこのライヴ、「伝説のギタリスト」という自信満々のネーミングが何とも大胆だが、実際に当日の素晴らしい演奏を耳にできた観客にとってみれば、そこに少しも誇張や大言壮語が含まれていないことは分かるはずだ。少し遅くなったが、その濃密なステージ模様をここにお伝えさせていただこう。

参加したギタリストはAKIHIDE(BREAKERZ)、KOJI(ALvino)、Leda(Far East Dizain)、RENO(ex.ViViD)、you(Janne Da Arc)という、ヴィジュアル系シーンでも技術の高さで知られた5人。彼らを支えたサポート・ミュージシャンは、NATCHIN(b/21g)、都 啓一(key/Rayflower)、ばる(dr/ex. DuelJewel)という、これまた実力に定評のある面々だ。

★オープニング

筆者は2階席から1階フロアを見下ろす形で観戦させてもらったのだが、ギター・インストのライヴにしては観客に女性層が多い印象。ギター・シーンはどうしても“男の世界”というイメージが強いので、弊誌のような立場としては単純に嬉しい。

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会場が暗転すると人々からすぐさま歓声が上がり、ステージ前面に張られた紗幕に5人の影が次々と映し出されるたび、さらにその声が大きくなる。幕が降りるといきなり出演者全員がずらりと並んでおり、実に華やかなオープニングだ。始まったのはKOJIが作曲し5人全員がアレンジに携わった、当イベントのための書き下ろし曲「Legendary」。5本のギターが爽快かつ重厚なハーモニーを奏で、また個性あふれるソロまわしも炸裂…、こんな良い曲を最初に持って来られたら否が応でも盛り上がるというものだ。ちなみにこの楽曲、フルコーラスではないがこちら(https://www.youtube.com/watch?v=VxFa_3fpuCU)で試聴することもできる。当日聴いた方も未聴の方も、ぜひチェックしていただきたい。

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★Leda

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インパクト大のオープニングが終わると、その後は各ギタリスト個別のセクションへ続く。1番手を担ったのはLeda。彼は基本的にバンドの一員としてキャリアを積んで来たので、ソロ・ギタリストとしてステージに立ったのはこの日が実は始めてだったという。

先述の通り、この日は3人のサポート・ミュージシャンが参加していたが、まずはLeda自身の意向でバッキング・トラックを用いてプレイ(つまりステージ上には彼1人で、オープニングの人口密度とは対照的だ)。始まったのはFar East Dizainの「Cry My Name From The Light」の歌抜きヴァージョンで、8弦ギターの激烈重低音、激しい場面展開、スラッピングを含む変態テクニック…という、いきなり観客の耳を殴りつけるような選曲だ(笑)。
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続いて登場したこの日のための書き下ろし新曲「Octagram」は、エグい低音リフに不思議な旋律が乗る超ヘヴィ・フュージョンで、3曲目のFar East Dizainナンバー「Inhale」(こちらも歌抜き)は爆走するスピードと複雑な展開が超プログレッシヴ。ここまでの選曲は彼のマニアックな側面が前面に出ていた印象だが、4曲目のバラード「White Hole」では一転、分かりやすい鳴きの旋律を聴かせ、唖然としていた観客をじっくり聴き惚れさせる。この表現の振り幅の広さは何とも面白い。

ここまで文字通りソロでパフォーマンスして来たLedaだったが、最後の6曲目ではゲストとしてRENOが呼び込まれ、若手同世代での夢のツイン・ギターが実現。さらにサポートの3人も入り、生バンドの形で「Inner Planets」が披露される。勇壮なハーモニーを奏でる2人の相性は抜群で、個性の全く異なる掛け合いも見事。短いが2人のトークも若々しくて楽しく、おどろおどろしく始まったステージは爽やかな後味で幕を下ろした。

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★RENO

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2番手RENOのステージは、布袋寅泰の「Battle Without Honor or Humanity」から始まるという、幕開けから意外な選曲。ミドル・テンポでじわじわと熱を上げて行ったところで、途中で突然「Boogie」のスピーディー&リズミカルなシャッフル・リフへと転じる。テンポ・アップと共にRENOのパフォーマンスもはじけ、お立ち台に上がって観客を煽りまくる場面も。その後のMCの面白さも含めて、彼のキャラクターにはポジティヴな雰囲気が満ちており、見ているだけで楽しくなってくる。

また続くバラード「OCEAN」ではゲイリー・ムーアばりの“顔で弾く”さまが見られ、チョーキングとヴィブラートの熱が如実に観客席へ伝わって来る。筆者はRENOに対して、テクニックを前面に出すタイプのギタリストだと捉えていたが、この日の演奏を見て実はエモーショナル志向のプレイヤーなのではないかと、認識を新たにした。

ここでお待ちかね、スペシャル・ゲストの登場だ。まず呼び込まれたのはKOJIで、「SONIC ATTACK」のメタリックなリフが両者のギターから飛び出した途端、会場には拳を突き上げる人、頭を振りまくる人が続出。笑みを浮かべながらスマートに弾くKOJI、汗を跳ばしながら熱く弾くRENOという、対照的な2人が細かいツイン・メロディーを緻密に合わせる様子が非常に面白い。

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さらに最後の「JOURNEY」ではKOJIに替わってyouが登場。冷静に音をコントロールしながら高低差のあるソロを聴かせるyouと、やはり熱くエネルギッシュに弦をかきむしるRENO、この両者の掛け合いもまた実に魅力的だった。

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★you

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youのステージは十八番のタッピング技がいきなり全開の「pleasure」からスタート。Janne Da Arcでのデビュー当時から技術の高さで有名だった彼だが、その両手さばきにはますます磨きがかかっているようで、安定感が半端じゃない。ロング・トーンでのメロディー弾きも合間にあるものの、全体の半分以上をその切れ味抜群のタッピングで弾き通すさまは、会場に集ったギター・ファンの心をわしづかみにしていた。

「今日は色んな人とたくさん絡みたいと思います」とMCで語ったyouは、早くも2曲目でゲストを呼び込む。しかも登場したのは先ほど熱演を繰り広げた若手2人、LedaとRENOだ。この3人で披露されたのは「awakening」で、youがLedaとRENOの2人の間を行ったり来たりするような形で、緻密なハーモニーを展開。また3人でお立ち台に乗って順にソロ回しを行なう場面もあり、それぞれが競い合うように高速フレーズを奏でる。こういう問答無用のバトルを見たかった!という観客は多かったはずで、歓声がひときわ大きくなる。

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さらに3曲目では入れ替わる形でAKIHIDEとKOJIが登場し、ゆったりした曲調の「a problem of life」で共演。さきほどの熱気むんむんのコラボとは対照的に、こちらは落ち着いた大人の時間だ。いずれのフレージングも艶やかさにあふれるものだったが、youはテクニカルさ、AKIHIDEはトーンの良さ、KOJIはメロディー・センスがそれぞれ際立っており、それぞれの武器をフル活用。ベテランらしい個性がそれぞれ如実に表れていた。

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最後の4曲目「various cards」では、再びギタリストがyou1人だけに。どことなくファンキーでラテン風味もある楽曲を、ワーミーを効果的に使いながら表現力たっぷりに弾きこなし、テクニック面とは違った部分もしっかり見せてステージを締めくくった。

★AKIHIDE

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AKIHIDEのステージは先の3人とはガラリと趣向を変え、アコースティック・ギターを中心としたアンプラグドなスタイル。スティール弦ギターによるソロ演奏で始まった「月の舟」では、まず鋭く鮮烈な音色でオーディエンスの意識を引きつけ、その音色とある意味対照的な優しいメロディーをじわじわ心に染み渡らせる。途中から入って来たピアノ、ベース、パーカッションとのアンサンブルも実に繊細で美しい。

続く2曲目ではナイロン弦ギターに持ち替え、映画『となりのトトロ』の「風のとおり道」を披露する。指弾きでしっとりと始まったかと思いきや、イントロ後にいきなりラテン調のお洒落なアレンジに変貌。思わず身体が動いてしまうダンサブルなリズムが格好いい。バンド全体を引っ張るAKIHIDEのギター・プレイは、コード・チェンジが実に巧みで、特に強く印象に残った。

3曲目では再び5人のギタリストが勢揃い、もちろん全員がアコースティックを手にしている。演奏されたのはAKIHIDEのインスト・ソロ・アルバムからの「Lapis Lazuli」で、スタジオ・ヴァージョンでは彼自身が独りでオーヴァーダブしながら何役もこなしていたが、今回はそれを個性の異なる凄腕5人で再現するという贅沢な趣向だ。オクターヴ・ユニゾンによる主旋律、トレモロ・ピッキングによるカウンター・メロディー、それらを支えるコード・プレイ…を、5人が入れ替わりながら奏でるさまは、巧みで実に息が合っている。筆者の個人的な感想では、この場面が当イベントの大きなハイライトの1つだったように思う。

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そんな素晴らしくエモーショナルな共演の後は、AKIHIDEがストラトキャスターに持ち替え、エレクトリック・サウンドで「Gypsy Sweets」を披露。哀愁ある旋律をリズミカルに弾きこなし、自身のステージをエネルギッシュに締めくくった。

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★KOJI

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KOJIは爽やかなメロディーが鮮烈な「Greenback」で自身のパフォーマンスをスタート。シングルコイルの繊細な音が、浮遊感のある独特のフレーズを次々と紡ぎ出す。様々な展開を持っているかなりプログレッシヴな曲だが、全体を通して聴くと印象は超ポップという、KOJIならではのセンスが早くも浮き彫りになる。

旋律の爽やかさは続く「White Horses」も共通しており、一切のよどみを感じさせない透明感ある音が、まるで空気清浄機のように会場の空気を綺麗にしていく。この曲ではLedaがゲストとして参加しており、両者のギター・サウンドは全く個性が異なるにもかかわらず、心地よく馴染んで絡み合っていた。

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「Deep Blue Sea」ではAKIHIDEがまたナイロン弦ギターを手にして登場。エレクトリック+アコースティックの組み合わせだが、こちらの音色もとても綺麗に馴染み合う。ちなみに両者とも見た目は優男の部類だが、ブルージーな泣きの曲調だったこともあり、出て来る音はいずれもむせ返るほどに熱い。

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4曲目では再びギタリストがKOJI1人になり、「Chocolate Box」をプレイ。曲調は3拍子のメジャー・ブルースであり、こういう大らかでアメリカンなメロディーも余裕を持って弾きこなす辺り、対応力の幅広さを感じさせる。そして最後は、KOJI自身がギター・インストの世界に足を踏み入れるきっかけになったという重要曲「Olive Crown」。アンプ・テンポのリズムの上に乗る旋律は非常にポジティヴで、聴いているとどんどん元気が増して行くような感覚だ。KOJI自身の穏やかな人柄が音に表れており、優しく笑みを浮かべながらギターを操る姿も魅力的。ギターで聴き手を前向きな気持ちにさせることができるというのは、非常に希有な才能だ。

★アンコール

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5人それぞれのソロ・ステージが終わった後は、当ライヴの時期がクリスマス直前だったこともあり、メンバー全員がサンタクロースの帽子を被って登場。この夜のために特別にアレンジされたクリスマス・メドレーが披露される。ここはもう各ギタリストのテクニックがどうこうという次元ではなく、ただひたすら楽しむコーナー。「聖しこの夜」「赤鼻のトナカイ」「おめでとうクリスマス」「サンタが街にやってくる」「ジングルベル」といったお馴染みの楽曲がハードなギター・サウンドで奏でられ、会場は大盛り上がりだ。その熱を引き継いで、鮮烈なオープニングを飾った「Legendary」が最後に再び披露され、イベントは大団円を迎えた。

ちなみにヤング・ギター本誌では、この“Legend Guitarist〜Electric Star〜”の開催に先駆けて、5人のギタリストの中からKOJIとRENOの2人を招いて対談記事を掲載したことがある(2017年1月号。未読の方はぜひバックナンバーをチェックしていただきたい)。そのインタビューの際、実はKOJIは「5人が様々に絡むような形でイベントを進めて行きたいけど、リハーサルの時間をたくさん取らないといけないので、実際は難しいかも…」と語っていた。売れっ子の面々なので仕方ないか…と筆者も思っていたが、ふたを開けてみれば随所でスペシャルなコラボレーションを見ることができ、それも期待以上のクオリティ。ギター・ファンにとってみれば夢のようなひと時であったと、誇張なしに言うことができるのではないだろうか。アンコールのMCでは第2弾の開催を期待させるような言葉もあったことだし、ぜひとも近いうちに必ず実現させていただきたい!

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