匠&UTA/sukekiyo 『ADORATIO』

匠&UTA/sukekiyo 『ADORATIO』

“1度しか出て来ないフレーズ”が多い

sukekiyo-03

YG:2曲目「グニャ結論。そして血眼。」、これも様々なパーツが次から次へと現れるような構成ですよね。

匠:これはYUCHIが作った原曲を、僕がアレンジしたんだったかな。わりとギターらしいギターを弾いていると思います。でも確かにパーツが多過ぎますね(笑)。かなり細かく振り分けました。

YG:“Pro Tools”を使うと目で見ながら作曲できますから、細かいアレンジも自由自在ですしね。

匠:あまり目で見ながら作るのも良くないんですけどね。でもこの曲は上手く融合したと思います。2人のギターがハモったり掛け合ったり、僕が弾く合間にUTAさんが切り込んで来たり。ギター要素が多い曲ですね。3曲目の「襞謳」もそうかもしれない。

YG:こちらの曲はアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターの歪みで、ハッキリとパート分けされているのが面白いですよね。

UTA:アコギは匠さんが弾いてます。リフ系は俺ですね。

匠:メインはそんな感じですが、ラストのサビでハモっている部分は僕が2本録っていたりして、やっぱりパートごとに2人が入り交じってます。

YG:アレンジの細かさがすごいですよね。とてもキャッチーで憶えやすいフレーズがいくつも出て来るのに、決して何度も繰り返さずに違うフレーズを積み重ねていく…という。

匠:繰り返しのアレンジにしてしまうと、どうしても普通になっちゃうんですよね。だから“1度しか出て来ないフレーズ”が多い(笑)。計算しているわけじゃなく、他に無い音楽を作ろうと思うとこうなるんですよ。ちょっと変わった使い方というか。

YG:4曲目「純朴、無垢であろうが」。これも最初はとても綺麗に始まり、それが突然狂い出すという、異なる要素を持つ曲です。

UTA:これも違うアイデアをくっつけたんですよ。最初のアイデアではピアノが入っていなくて、クリーン・ギターがメインのわりとサラッとした曲だったんですけどね。ちなみに分かりにくいと思いますが、リズムは4分の5拍子です。

匠:アレンジの段階で僕がシンセでコード感を足し、ギターとピアノはどちらもメロディー弾きに徹するという形で、印象的な曲に仕上がりました。さらに中間部にデジタル要素も加わって、そこが一番変わったところかもしれない。

YG:ディレイのかかったクリーン・ギターを弾いているのは、お二人のどちらですか?

匠:あれは意外に僕なんですよ。「UTAさんはこういうのを弾きそうだな」と思っていたら、僕もだんだんシングルコイルでクリーン・トーンを弾きたくなって(笑)。

UTA:ライヴでは匠さんはピアノを弾くから、ギターは俺が完コピします。めちゃくちゃいいフレーズですよね。すごく綺麗な音で録れているし。

YG:6曲目の「艶」と7曲目の「首吊り遊具」、ここで突然明るい要素が入って来て、作品全体の中でも強力なフックになっていますよね。直前の「マニエリスムな冷たい葬列者」までダークな曲調で通して来た分、落差がすごい。曲順を相当考え抜いた印象ですが、曲作りの時点でそれぞれの曲が何番目に来るか、実は想定していたりします?

匠:いや、全く。メンバーみんなが色々なパーツを作って来ますからね。sukekiyoの場合、曲さえも1つの作品のパーツという捉え方をしている気がします。

YG:5人編成のバンドだけあって、最終的な曲順を決めるのはけっこう大変では? 5人分の意見があるわけですから。

UTA:そうでもなかったですよ。特に最初の「疑似ネクロマンサー」と最後の「白濁」だけは、全員一致で決まりました。

匠:みんな見ている方向は同じなんだなと思いましたね。

YG:明るい要素があるとは言え、sukekiyoの場合はやっぱりアレンジが一筋縄では行かなくて…。「首吊り遊具」なんかは素直に聴けば相当キャッチーなはずなんですが、進んで行くに連れてどんどんカオス度が増して行きますね。

匠:だからアレンジに時間がかかりましたね。「艶」の方はアレンジ自体はすんなり行ったんですが、ギター録りに時間がかかりました。原曲を作った時点で曲のイメージが強く頭の中にあったせいか、理想に近付けるためにどう録ればいいか試行錯誤が多くて。同じフレーズをシングルコイルなのか、ハムのセンターなのか、はたまたギターはこれでいいのかとか全部試して(苦笑)。3日くらいかかったんじゃないかな。

YG:UTAさんはどうですか? 匠さんと同様、音作りに時間をかけるタイプ?

UTA:俺は逆に、その時のテンションで行っちゃう場合がほとんどですね。ただ「首吊り遊具」は俺も悩みました、音作りもフレーズも。

匠:「首吊り遊具」はもともとYUCHIが作って来たアイデアから、みんなでかなりアレンジを加えたので、もはや別物みたいな感じです。UTAさんの飛び道具的なギター・サウンドが加わって完成した1曲ですね。