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アラン・ホールズワース追悼企画 アレックス・スコルニック特別インタビュー

インタビュー&文●ヤング・ギター編集部

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ヤング・ギター2017年7月号には、4月に逝去したアラン・ホールズワースの特別追悼特集が掲載されている。その企画内には当初、ホールズワースから影響を受けたギタリストの1人であり、7月5日から3日間にわたってNYの“イリディアム”というクラブで開催される追悼イベント(詳細リンク)に出演予定の、アレックス・スコルニック(g/テスタメント、アレックス・スコルニック・トリオ他)のインタビューも含まれる予定だった。しかし、スケジュールの都合により残念ながら掲載を断念。その後、彼のご厚意でメール取材に応じてもらえることになり、ホールズワースに関するいくつかの質問に返答をいただいた。

YG:初めてホールズワースのプレイに触れたのはいつの時でしたか?
アレックス・スコルニック(以下AS):彼の音楽を初めて耳にしたのは1980年代始めの頃で、俺は14歳ぐらいだった。確か『I.O.U.』(’82年)か『METAL FATIGUE』(’85年)だったっと思う。当時俺はエディー・ヴァン・ヘイレンの大ファンでね。彼は自身が影響を受け、なおかつお気に入りのギタリストとして、アランの名前を挙げていた。正直に言うと、当時の自分にとってアランの音楽は、かなり難しいものだった。特にハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ファンの若者にとってはなおさらだ。でも彼の才能は第一級だということは感じられたよ。何度も聴いていくうちに、だんだん好きになっていった。いくつかコードやリックをかじったけど、今になるまで本当に真剣に取り組んだことはなかったね。彼がこの世を去ってしまわなければ良かったのにと思う一方、こうして彼の音楽を研究できることに大きな喜びも感じているよ。ミュージシャンとして彼の音楽に大きな価値を見い出し、理解を深める機会を与えられたんだ。

YG:ホールズワースに実際に会ったことはあるのでしょうか?
AS:一度だけあるんだ。その時のことはよく憶えてるよ。ある年のNAMMショウに行った時、どこかのホテルの廊下で出くわしたんだ。俺はスチュ・ハム(b)と一緒にいたんだけど、彼がアランに紹介してくれた。アランはとても良い感じの人で、ちょっと照れているようにも見えたね。俺もだったけど。その場にはもう1人俺の友人がいた。イギリス出身で高い教養を持つクラシック・ギタリストで、ニオール・フォーダイスというんだけど──実は、ニオールと彼の兄弟はアランと全く同じように、イギリスの奥地にある珍しいエール(ビール)探しを趣味にしていることが判明したんだ。ニオールが話上手だったこともあって、ビール好きのイギリス人はすっかり意気投合してしまったよ。俺とスチュは顔を見合わせて、イギリスのビールで盛り上がる2人を見ているしかなかったんだ!

YG:ホールズワースのキャリアの中で、どの頃の彼の音楽が一番お好きですか?
AS:長い間好きだったのは、I.O.U.プロジェクトだね。それからトニー・ウィリアムスとやっていた時代も好きだった。マイルス・デイヴィスが最後にストレート・アヘッドのジャズ・コンボで演奏した時のドラマーでもあるトニーだけど、アランとやっていた音楽はかなりロック寄りだった。でも、最近聴き始めた『THE SIXTEEN MEN OD TAIN』(’99年のソロ作)は、彼の作品の中でも最高峰に位置すると言わざるを得ないほど素晴らしい。ギター・サウンドと“SynthAxe”(ギター型MIDIコントローラー)のブレンド具合が最高だ。トランペットのような彼のサウンドがとても気に入っているよ。

YG:ツイッターに寄せたホールズワースへの追悼メッセージで、「彼の音楽には実際理解しづらいこともあった」とおっしゃっていましたよね。具体的に、それはどういう部分だったのでしょうか?
AS:アランの音楽には難解な要素が多かった。それはコードのヴォイシングからユニークなハーモニーのライン、拍子の取り方や聡明なアレンジ力に至るまで、様々だ。彼の音楽を聴くまでは、ジェフ・ベックやアル・ディメオラを難しいと感じていたけど、アランに比べたら彼らの音楽はシンプル同然に聴こえてきたね! 同時に、アランの音楽からは凄く誠実さが感じられた。大人になってからより分かるようになったよ。特にインプロヴァイズの経験を積んでからはね。

YG:ホールズワースがギター・シーンに残した功績はいろんな側面から語られると思いますが、最も大きなものは何だと思いますか?
AS:アランは最も洗練されたコードを作り出し、最もダイナミックなメロディー・ラインを生み出すなど、様々な面においてギターの可能性を刷新したことで評価されるだろう。その中でも俺が最大の功績だと思っているのは、自分のヴィジョンに従い、それをあれほどまでに高いレベルの芸術として完成させたことだ。よりキャッチーな曲を書いて、もっと多くの人に分かってもらえる音楽を作ることもできただろうし、より注目を集めやすいプロジェクトへの加入だって可能だったはずだ。そうする代わりに、彼は自らに挑戦を課し、“自分が”興味を惹かれるような曲を書いていった。これは絶対的に賞賛されるべきところだね。
俺は1984年に日本公演を行なった時のコンサートの様子やインタビューを収めたビデオを観て、じっくり研究しているんだ。そこでの発言やプレイを聴いていると、彼は注目を集めたいとか認められたいといったモチヴェーションを抱かない、真のアーティストであることがハッキリ分かるよ。人気投票や誰かのベスト・ギタリストに選ばれるかどうかなんて気にせず、ただ感じたままにプレイした人なんだ。

YG:間もなくアランのトリビュート・ライヴが始まりますが、これにはどういう経緯で参加されることになったのでしょうか?
AS:俺も100%知っているわけじゃないんだ。最近“イリディアム”でよくプレイしていたんだよ。アレックス・スコルニック・トリオ、スチュ・ハム・バンド、Jane Getter Premoniton(マイルス・デイヴィス・エレクトリック・バンドのアダム・ホルツマンやパット・メセニー・グループのマイク・イーガンが一緒だ)など、いろんなプロジェクトで出演した。だから多分コンサートの企画には“イリディアム”も絡んでいたのかもしれないね。アランの影響はジャンルを超えた広範囲に及んでいるということをみせられるから…インプロヴィゼーションのスキルに加えて、俺がヘヴィ・メタルの世界でも知られた存在だということがあったみたいだ。正直、俺はそっちの方が有名だろう。まあどんなきっかけだったにせよ、これ以上光栄なことはないといった気分だよ。

YG:そのライヴであなたと共演する ヴァージル・ドナティ(dr)にもインタビューしたのですが(7月号に掲載)、彼は「アランの音楽を形容する言葉には“sublime”(「崇高な」の意)が最も相応しい」という趣旨のことを言っていました。アレックスがホールズワースの音楽を一言で形容するなら、どんな言葉を使いますか?
AS:1つだけ言葉を選ぶのは難しいね。でも、ヴァージルのチョイスには俺も大いに納得だよ。そこに付け加えるとしたら、“majestic”(「荘厳な、威厳のある」の意)かな。

YG:ヴァージルによればアランがしばらく演奏していなかったような曲もやるそうですね。選曲はどのようにして決めたのでしょうか? 
AS:俺がセットリストを作ったわけじゃないけど、演奏予定の曲のリストから選曲はさせてもらったよ。トニー・ウィリアムス・ライフタイム時代の2曲…「Proto-Cosmos」「Red Alert」(ともに’75年『BELIEVE IT』収録)、それとアランのソロ作品から2曲。「Letters Of Marque」(『I.O.U.』収録)「Metal Fatigue」(『METAL FATIGUE』収録)だ。実は「Proto-Cosmos」はスチュとチャド(ワッカーマン:dr)と一緒に6月16〜17日にプレイすることになっていたので、既に曲を憶え始めていた。「Red Alert」はずっと好きな曲だったんだよ。ややレッド・ツェッペリンを思わせるね。「Letters Of Marque」「Metal Fatigue」は遥か昔にかじったけど、ちゃんと弾くのは今回が初めてだ。今この2曲を憶える機会が持てるとは、最高だね。

YG:アレックス・マカチェク、ニール・フェルダー、ティム・ミラーといったギタリストも参加するのですよね。彼らとは以前に共演したことがあったのでしょうか?
AS:彼らとはプレイどころか会ったこともないんだ。名前はよく知っているけどね。共演をとても楽しみにしているよ。

YG:トリビュート・ライヴにアレックスが一番期待していることを教えてください。
AS:このライヴが素晴らしい楽曲で溢れ返ったものになることを想像するだけで、もの凄くエキサイトしているよ。アランの友人や家族がたくさん集まる中で、彼のバンドでプレイするというのはちょっと凄過ぎる話だね。俺達は誰1人として彼のように弾いたりなどしない。そもそも、全くもって無理だからだ。しかし、彼の楽曲は独自解釈に適しているので、俺達インプロヴァイザーは彼の音楽を通して自らを表現できる。もちろん、アランのリックをそのまま弾く所もたっぷりあるよ! 

YG:あらためて、天国のホールズワースに一言メッセージをお願いします。
AS:あなたに感謝を捧げ、その音楽や自らの作品への貢献、純粋な芸術的才能が、まだ地上にいる俺達にとってこの世界を良いものにしてくれた…ということを伝えたいね。