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カルロス・ロザーノ&フィリップ・バルダイア/ペルセフォネ 2017来日

インタビュー、文&写真撮影●奥村裕司 Yuzi Okumura

’14年春の初来日公演から3年余、南欧の小国アンドラよりプログレッシヴ・デス・メタラー:ペルセフォネが日本再上陸を果たした!

前回来日時からはセカンド・ギタリストとドラマーが交代。マルク・マルティンス(vo)、カルロス・ロザーノ(g)、トニ・メストレ(b)、ミゲル“モエ”エスピノーサ(key,vo)は’04年から不動のままだが、’15年にセルジ“ボビー”ベルディゲル(dr)、’16年にフィリップ・バルダイア(g)を新たに加え、今年2月に第5作『AATHMA』をリリースした彼等──そのサウンドは、以前に増してエモーショナルに、アンビエントに進化と深化を遂げている。また、ライヴ・バンドとしても定評のある彼等は、さらにタイトになった緩急自在のパフォーマンスでオーディエンスを圧倒。やはりメンバー・チェンジを経て、パワー・アップしていた共演バンド:イタリアのダーク・ルナシーともども、東名阪各地で熱狂を巻き起こした。

では、ペルセフォネのニュー・ラインナップはどのようにして成立に到ったのか? そもそも、フィリップの前任:ジョルディ・ゴルゲスの脱退理由は? そして、新鋭:フィリップのバックグラウンドとは? 東京公演のショウ前、カルロス&フィリップにインタビュー取材を行ない、意外な関係にあった2人に、何ともストイックなバンド哲学も含め、たっぷりと語ってもらった…!!

Persefone-2016-Andorra[PERSEFONE: L. to R.]Carlos Lozano(g)、Miguel “Moe” Espinosa(key, vo)、Toni Mestre(b)、Filipe Baldaia(g)、Sergi “Bobby” Verdeguer(dr)、Marc Martins(vo)

カルロスに習っていた頃は1日に8時間は練習していた(フィリップ)

persefone2017 
YG:久々の来日ですね!
カルロス・ロザーノ(以下CL):うん。凄く楽しみにしていたよ!

YG:フィリップは、これが初めての日本ですか?
フィリップ・バルダイア(以下FB):そうだよ。

YG:カルロスから日本のことを何か聞いていましたか?
FB:ああ、沢山ね! 実は、このバンドに加入する前、僕は彼の生徒だったんだ。それで前回、日本から帰って来た時に、オーディエンスに圧倒されたことや、僕達が慣れ親しんでいるヨーロッパの文化とは全く違うといったことを話してくれた。そして、僕がバンドに入った時、「一緒に日本とアメリカへ行くと約束する。だからしっかり頑張らなくちゃいけないよ」と言われたのさ。

YG:昨日の名古屋公演はいかがでしたか? 
CL:僕達の楽曲には色んな要素が入っているんで、演奏するのがとても難しい。だからツアー中は、連続で2〜3公演やって、ようやくステージ上での動きにも慣れてきて、4日目に完璧にまとまってくるという感じさ。勿論、事前にしっかりリハーサルは行なっているけど、ライヴ本番は目の前にお客さんがいるからね。あと、時差ボケもあるし…。
FB:機材トラブルが起きることもある。
CL:そうそう。でも、僕達にとって日本は特別な場所だから、“ファンに最高のショウを見せる!”と自分達にしっかりプレッシャーをかけていたんだ。おかげで、昨晩のショウはとても良かった。全体を通してとても良いエネルギーに満ちていたね。僕自身は、懐かしさを感じたよ。観客の反応が凄く良かったから、“ホームでプレイしている”と感じたのさ。あと、フィリップやボビー(セルジ・ベルディゲル)と一緒に、初めて日本へ来られたのも凄く嬉しかった。彼等も興奮していたよね。ダーク・ルナシーのメンバーや、プロモーターも含め、とにかくみんなとても良くしてくれたし。テクニカルな問題はあったけど、それ以外はすべてが完璧で最高だったよ。この思い出は大切にしたいな。
FB:例えば、北欧なんかでプレイすると、オーディエンスの反応が凄く静かで──まるで演奏を分析されているような印象を覚えることがあった。でもここでは、クレイジーになる人もいれば、一緒に歌ってくれる人もいる。そういった様子を見られたのが嬉しかったね。ありがたかったよ。
CL:そうだね。ある国で誰かが曲を作るとする。歌詞には人々に伝えたいメッセージが込められていて、世界のどこか別の国で、言葉も生活習慣も違う人達がそれを聴いてくれる。そしてある時、彼等の元へ行くと、目の前でその曲を歌ってくれるんだ。何て素晴らしいことなんだ…と思うね。僕はステージに立つ時、歌詞や曲に大きな意味を持たせて演奏している。すべてに対して感情を込め、生きていることの素晴らしさを歌っているのさ。一方ファンや家族も、僕達がギターを手に目的を持って行なっていることを、凄く喜んで、楽しんでくれている。ショウの成功とかそれ以前に、この状況全体が忘れられないモノになるんだ。
FB:全く同感だよ。僕達の曲が成長していくのを目の当たりにしたい。彼等と一緒に、もっともっと楽しんでやっていきたいね!

YG:ところで、フィリップの前任:ジョルディ(ゴルゲス)は、どうしてペルセフォネから脱退したのでしょうか?
CL:彼は父親になったんだ。娘さんが生まれてね。とっても可愛い子だよ。
FB:うんうん!
CL:彼は寛大で、優しい心の持ち主で、大人しくて礼儀正しい。
FB:これまで会った中で一番親切な人だったな。
CL:そんな彼から、ある時「もうすぐ父親になる。そうなったら、バンドを続けていけるか分からなくて…」と相談されてね。僕は「ゆっくり時間をとってくれ」と答えたよ。それで彼(フィリップ)を新たに加えたんだけど、最初は一時的なメンバーとして迎えるつもりだった。でも、フィリップがバンドに大きく貢献してくれることが分かって、これならジョルディが戻ってきて、ギタリストが3人になるのも良いかもしれない…と思ったのさ。(’16年)2月には(フィリップ加入について)正式発表もしたよ。ところが──1年経って、ジョルディは自分のことで手一杯になり、電話で話していても、「やりたいんだけど…(出来そうにない)」という状況が伝わってきたんだ。彼はこれまで、このバンドの音楽にすべてを捧げてきた。ヨーロッパを2〜3度ツアーして廻って、色々なところでプレイしてきたし、僕達にとって憧れのバンドと共演することも出来た。そして──結果、彼はこう言ってきたんだ。「ここで辞めても僕は幸せだ。どうもありがとう。育児に専念したい」とね…。今でも彼とはソウルメイトみたいな関係だ。「アンドラの近くでプレイする時は呼ぶから」とも言ってあるよ。
FB:本当に最高の人物だね。彼の代わりにプレイすることになった時、曲の弾き方を全部教えてくれたし、「分からないことがあれば電話してこい」と言ってくれた。だから今でも、困ったら必ず彼に尋ねるんだ。

YG:フィリップは元々、カルロスの生徒だったとのことですが、最初の出会いはいつでしたか?
CL:16歳の頃だったかな?
FB:いや、14歳だよ。実は、僕はポルトガル出身で、当時はあっちにいたんだ。ただ、母親はアンドラに住んでいて、ある時「アンドラに来て、一緒に暮らさない?」と言われてね。自分の国を離れたくなかった僕は、「ここでイイよ。ギターも弾いているし」と答えたんだけど、「試しに来てみるべきよ。きっとアンドラの人達が気に入るわ」と言うから、「だったら3ヵ月だけ…」と行ってみることにしたのさ。そしたら今度は、「ギターのレッスンを受けてみない? ペルセフォネというデス・メタル・バンドのカルロス・ロザーノという人がギターを教えているみたいなの」と言われて、「楽しそうだな。じゃあ、2〜3回レッスンを受けてみようかな」と会いに行って、いよいよレッスンが始まった。当時、カルロスはESPの”Horizon”を弾いていて……
CL:ああ、あの赤いヤツだね!
FB:そうそう。そのプレイを観て、「何てこった…彼からすべてを学ばなきゃ!」と思い、最初の5分で、「何もかも習得し終えたら、ポルトガルに戻って、自分の音楽をやろう」と心に決めたよ。でも──結局、今もまだアンドラにいるんだ…!
CL:僕が引き止めたからな(笑)。
FB:いやいや、彼のおかげで僕はアンドラに住み、バンドもやっているし、生活を確立することが出来た。人生最高の出来事だったね。ポルトガルは景気が悪くなる一方だし、煩わしい問題から遥か遠くに逃れて、ここ(アンドラ公国)で暮らせて本当に良かったよ。カルロスのレッスンを受けていたのは3〜4年ぐらいだったかな。その頃は1日に8時間は練習していたんだ。
CL:素晴らしい生徒だったね。
FB:先生が良かったからさ!
CL:その通り!(笑) ただ、生徒は沢山いたけど、みんな彼のレヴェルまで上達したワケじゃない。彼の努力の賜物さ。彼がレッスンを受けに来た時、僕はちょうどギター教室を始めたばかりでね。今から約10年前──彼はまさに僕の最初の生徒だったんだよ。だから、レッスンの内容も当時は酷かったと思う。建物は工事中だったし、アンプも小さいのが2つしかなかった。でも、僕が教えたことを、彼は何でも真剣に取り組んでくれて、実に教え甲斐があったね。その後、自分もギター講師になった彼は、NAMIというバンドを結成したと教えてくれたんだ。アンドラでも有名なバンドで、僕達と一緒にツアーしたこともある。そういえば、逆に「突然ギタリストが脱退したから、代わりに弾いてくれませんか?」と頼まれたこともあったな(笑)。無論、快諾したよ。彼のバンドを気に入っていたから。NAMI(のライヴ)では、みんながフィリップのプレイを注視していた。だから、凄く誇らしく思ったな。最初にレッスンを受けた時から、随分成長したなぁ…ってさ!
FB:あの時は嬉しかったよ。「自分の先生と一緒にツアー出来るなんて…!」ってね。
CL:そんな感じだったから、人間的にもお互いをよく知るようになって、ペルセフォネに彼を呼んだ時も、既に友人のような関係だった。彼のエネルギーは凄まじい。今じゃ、僕がジョルディの立場だよ。今回のツアーでも、そういうところを見てもらえると思う。

Carlos Lozano▲重厚リフから緻密なリード、流麗なシュレッドからアンビエントなクリーンまで、正確無比なプレイでギター・フリークの視線を釘付けにしていたカルロス・ロザーノ!

YG:カルロスは今でも教室を続けているのですか?
CL:うん。まだまだ拡大していて、今ではギター教室の他に、別の学校でも音楽理論を教えて2年になる。あと、TVやラジオの番組用に楽曲を提供する仕事もしているし、ゲーム音楽にも関わっている。また、セッション・ミュージシャンとしても色々な人達と共演していて、ずっと音楽をつくり続けているんだ。毎日、一生懸命働いて、そんなに稼いでいるワケではないけど、幸せだよ。大好きな音楽を仕事にすることが出来てね!

YG:フィリップは、14歳でアンドラに来た時、どれぐらいギター歴があったのですか?
FB:ポルトガルで6ヵ月ぐらいクラシック・ギターを習っていたよ。その頃、先生に「メタリカの“Battery”の弾き方を教えてください」と言ったら、「他へ行きなさい」と返事されてしまって…!(笑) だから、カルロスの教室に通い始めた頃は、ちょうどギターがどんなモノなのか、正式に習い始めたばかりだったね。
CL:毎週、課題を出していたんだけど、それを全部コナしてくる。「コイツは飲み込みが早い!」と思ったよ。僕の準備の方が大変だったね(苦笑)。

YG:お母さんもメタルを聴いておられたのでしょうか?
FB:いや…母親は音楽が嫌いでね。

YG:えっ…?
FB:「私の大好きな音楽は“沈黙”よ」とよく言っていたな。だから、僕が1日に8〜10時間もギターを弾きまくっていたのは、母にとっては不快だったに違いない(苦笑)。でも、ずっと僕のことを信じていてくれたんだ。僕が情熱を注いでいるモノ──それは絵を描くことと、ギターを弾くことだったんだけど──を信じ、いつも「ギターが弾きたいのなら、ベストを尽くしなさい。そうでないと弾かせません」と言っていたよ。時間を無駄にするぐらいなら、やらない方がイイ…ってね。だから、手厚く応援してもらえたんだ。
CL:良いお母さんだな。何かと世話を焼いてくれてさ。
FB:「音楽の先生になりたい」と言うと、父親は「ダメだ。医療系にしなさい」なんて反対したけど、母親は「分かった。どこで勉強したいの? お金は出してあげるから」と言ってくれたんだ。本当にラッキーだったよ。母とカルロスのおかげで、いま僕はペルセフォネにいるようなモノさ。カルロスは、僕にとって兄貴みたいな存在なんだ。
CL:おいおい、俺を泣かせるつもりかい?(笑)

YG:「Battery」が弾きたかったということは、最初のギター・ヒーローはジェイムズ(ヘットフィールド)やカーク(ハメット)だったんでしょうか?
FB:実は……僕のことを“カーク・ハメット”と呼ぶ人が結構いるんだ(苦笑)。
CL:ホラ見てくれよ、この口ヒゲを!(笑)

YG:確かにちょっと似てますね(笑)。
FB:最初は父親の影響で、’70年代のプログレやサイケデリック・ロックをよく聴いていたよ。その後ニュー・メタルを聴くようになり、パンクにハマって、メタリカに目覚めた。するとカルロスが、「メガデスは知ってる?」って言ってくれて。マーティ・フリードマン在籍時のメガデスさ! メタリカ、メガデス、そしてデス。それが10代の頃の3大バンドだね。いずれもギタリストに限った話だけど。
CL:彼は当時、「デスは世界一のバンドだ。でもメガデスはもっとカッコいい! だって、“メガ”な“デス”なんだから!!」と言っていたよ(笑)。

YG:シュラプネル系にハマったことは? 
FB:あまりシュレッド系の音楽は聴いていないんだ。影響という意味では、(カルロスを指差し)彼が一番だね! まぁ、ポール・ギルバート、ジェフ・ルーミズは大好きだし、マーティ・フリードマン、ジェイソン・ベッカー、つまりカコフォニーもよく聴いていたけどね。あと、アーチ・エネミーの1stアルバム(’96年『BLACK EARTH』)で弾いていた頃のクリストファー・アモットとか、ガスリー・ゴーヴァンも好きだし、トム・クァイルとか、ジャズ/フュージョンのシーンにも好きなギタリストがいる。他はいま思い出せないけど、僕のトップ・シュレッド・ギタリストといったら、そんなところかなぁ…。

persefone2017-06