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ジェフ・コールマン/コズモスクアッド 2017年来日

インタビュー●Jun Kawai Pic●naoju5155nakamura 機材写真●ヤング・ギター編集部

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去る2017年8月、ジェフ・コールマン(g)が率いるコズモスクアッドの来日公演が行なわれた。このバンドは1997年にアルバム『COSMOSQUAD』でデビューして以来、これまで4枚のアルバムをリリースしているが、現時点での最新作である4作目の『THE MORBID TANGO』は、10年ぶりの作品ということになる。また彼らが日本でライヴを行なうのも10年ぶりだ。現在のメンバーはジェフと、B’zのサポート・メンバーとしても有名なシェーン・ガラス(dr)、そして新加入のケヴィン・チャウン(b)という3人。ライヴではこれぞプロフェッショナルと唸らせられる凄まじい演奏を披露した彼らだが、そのステージを観られなかったという人もアルバムを聴けば、この3人だからこそ成し得たようなイマジネーション溢れる複雑な楽曲と、それを成立させられるアレンジ力と演奏力にただひたすら驚かされるだろう。このアルバムが一体どのように作られたのか、来日時のジェフに語ってもらった。

このバンドのルールは“ルールを持たないこと”

YG:コズモスクアッドの久しぶりの日本でのライヴはいかがですか?
ジェフ・コールマン(以下JK):素晴らしいよ。オーディエンスがショウの間中、ずっと声を上げて盛り上がってくれていたから、とても刺激的だった。日本ではもう10年ぐらいツアーをしていなかったけど、その間にベーシストが替わったんだ。と言っても、1993年から(エドウィン・デアーのメンバーとして)一緒にプレイしていたケヴィン・チャウンだけどね。彼と一緒に新しいアルバムを作ってライヴが出来たのはとても特別なことで、結構な回数のライヴを経て本当に「バンドだ!」って実感しているよ。寄せ集めのジャムとは違うんだ。言うなればシンガーのいないヴァン・ヘイレンといったところかね(笑)。

YG:アルバムが出たことも久々ですが、『THE MORBID TANGO』はいつ頃から作り始めたのですか? 
JK:アルバムは(2017年の)1月に発売されたんだけど、リリースまでに時間がかかったんだよ。ちょっと時間の感覚がおかしくなってるな…多分始めたのは2016年の春かな? シェーンのスタジオで3週間かけて作ったんだ。毎日ジャムって、3週間のうちにすべての曲を作った。確か、それまでに2〜3曲は出来ていたけど、あとは全部その場でプレイしては録っていったんだ。だからとても短期間で作れたね。

YG:曲が出来上がる度にレコーディングして…という感じですか? 
JK:いや。例えば「Recollection : Epilogue」は僕のアコースティック・アルバム(2015年『HILLS OF GRANADA』)に入っていた「Recollection」という曲が元になっている。今回のはもっとヘヴィだけど、雰囲気は共通しているところがあって、「Recollection」の第2パートが生まれたような感じだ。「Sangfroid」は僕が温めていたコード・チェンジのアイデアを使ったもので、元々はチャド・スミス(dr)のボンバスティック・ミートバッツ用に書いたものだけど、ケヴィンとシェーンが凄く気に入ってくれたから、ちょっと作り変えて使うことにしたんだよ。「Still Life」は最初3つのコードがあった。そんなところかな。残りはジャムりながら曲にしていった。Pro Toolsを常時セッティングしておいて、アンプのマイキングも済ませておいて、レコーディングしては聴くことの繰り返しだ。「あっ、これはいいけど、こっちに行くともっといいかも」と相談したり、ちょっと休憩してはまた戻って来て「もう1回聴いてみよう」とか…。「これだ」と思えるまで繰り返すんだ。4つのアイデアを揃えておいて、「今日はこのアイデアを使ってレコーディングしよう」なんて感じでね。さっき挙げた3曲以外に、プリ・プロダクションらしいことはしていない。

YG:ミートバッツとコズモスクアッド、それぞれ曲の作り方に違いはありますか?
JK:全く別もので、ミートバッツの方が楽だね(笑)。あっちは1970年代的ファンクやR&Bの影響があって、チャドのドラムがグルーヴを叩き出せば簡単にファンキーになる。対してコズモスクアッドはまるでオリンピック競技だ! トライアスロンだよ。変拍子を入れたりして限界を押し広げているし、ギター・ソロの裏でコード・チェンジする音が欲しいところ、トリオでライヴ演奏しているとそれが無いし(註:ジェフのギター以外にメロディー楽器奏者がいないという意味)、演奏する側にとってもトリッキーなんだ。「Morbid Tango」なんて凄いよ。

YG:このアルバムには何かコンセプトはありますか? 
JK:ああ、このアルバムはただ集まって曲を作っただけじゃないんだ。本来ならうちのベーシスト(ケヴィン)に訊いてほしいところだけど、可能な範囲で説明してみよう。アルバムを作り始めるまでの間、僕達にはいろんなことが起こった。シェーンは両親を亡くし、ケヴィンは兄弟や母を亡くした上に脳の手術も受けたし、人生における様々な試練があったんだ。彼ら2人は同じレベルで人生について語ることが出来ていた。「Morbid Tango」は人生の中で降り掛かる試練をどう切り抜けていくか、それらへの対処の仕方を説いているんだ。それがまるでダンスのような動きだから、「Morbid Tango」という名前にしたんだよ。“Dance Of Life”だね。自分にはコントロール出来ないことが起きたら、もう笑いながら進んでいくしかないんだ。死に直面し、それを乗り越えるまで…。そういう体験のストーリーを、ケヴィンは曲を上手く要約しながら伝えることに長けている。レナード・バーンスタインの劇みたいだ。そういう会話をした後に曲を書くと、話したことが僕の曲にも影響してくる。それで僕が思いついたコード進行をケヴィンが聴いて、「じゃあ、この曲はこんなタイトルにしよう」と決めたこともあった。

YG:度々タイトルの挙がる「Morbid Tango」ですが、この曲はどうやって作っていきましたか?
JK:これは最後に書いた曲の1つなんだよ。ある日皆が集まった時に、シェーンが「アルバムをタンゴで始めようよ!」と言い出した。このバンドはジャンルがどうこうとか、「ファンがどう考えるかな」とか考えることはほとんどない。このバンドのルールは、ルールを持たないことだよ。やりたいことをやる。それが、「タンゴをやろうよ!」と言い出すもんだから…。「とりあえず叩いてくれないか?」…で、そのリズムに合わせて始めてみた。すぐにそれが、コズモスクアッドらしい壮大でカオスな曲に変わっていったよ。タンゴなのは最初の10秒だけ、その後はコズモスクアッドのヘヴィな音がタンゴを飲み込んで吐き出してしまったような感じだ(笑)。これに対して「The Ballad Of Rick James」は最初に書いた曲で、シェーンが「ファンクをやろうよ!」と言ったことが始まりなんだけど、結局それがコズモスクアッドのサウンドに変わっていった。

YG:ヘヴィであったりスローであったり、色々なパートが混在していて、とてもユニークですね。
JK:ああ。でもそうやって曲のギアを変えることは簡単だよ。難しいのは「つじつまを合わせる」ことだ。世の中のインストゥルメンタル曲を聴いていると、曲が一体どこに向かおうとしているのか、理解出来ないものがあるんだよ。音楽は聴いて感動できるものじゃなきゃ。映画音楽の巨匠、ジョン・ウィリアムスみたいにね。もちろん彼のような天才と自分たちは比べるのもおこがましいけど、彼の曲のように納得のいく流れが出来ていないと。曲がカオティックなセクションに変わるのは、そういう流れの中にあるからだ。楽器の腕を見せびらかしたいからカオティックにしているんじゃない。そうなってしまっている音楽はよく聴くけど、僕の心は動かないね。セクションごとにどんな目的があるのか、それが見える音楽作りをコズモスクアッドでは心がけているんだ。

YG:「ここをギター・ソロのパートにしよう」というようなことは誰が決めるのですか? 
JK:全員でだよ。シェーンと僕がメイン・ライターで、生まれた日が2日しか離れていないとか、共通点がとても多い。僕が書いたものをシェーンに聴かせると「このパートは好きだけど、こっちはちょっと’80年代的過ぎるな」と言わて、変えたりする。「ここにソロを入れよう」とかね。そうして出来上がったものに、ケヴィンはどれだけの要素を追加すればいいかよく把握している。このバンドには彼のような適任者が必要だったんだ。他にも優れたベーシストはたくさんいたけど、レコーディングするとなるとバンドのサウンドが今までと変わってしまうことは避けたかった。だから新しいアルバムを作るまでこんなに間が空いたんだよ。

COSMOSQUAD SET LIST 2017.8.21