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スコット・ゴーハム/ブラック・スター・ライダーズ 2017来日インタビュー

インタビュー&文●斎藤新吉 Shinkichi Saito Pic● Takumi Nakajima

古今東西の強力なHR/HMアクトが集結し、‘17年10月に開催された“LOUD PARK 17” において、小細工のないハード・ロックで一際逞しいパフォーマンスを見せてくれたのがブラック・スター・ライダーズ(以下BSR)だ。あのアイルランドの英雄、シン・リジィの変名バンドとしてスタートした当初のライヴでは、リジィのクラシック・ナンバーも大量に選曲していた彼らだが、現在はセットリストの大半を占めているのがBSRオリジナル曲ばかり。懐メロに終わらずあくまで新しい音楽を作ることに重きを置くという、彼らの気概が伝わって来るような選曲スタンスだ。今回の来日時にバンドの精神的中枢とも言えるスコット・ゴーハム(g)をキャッチして話を聞いてみたところ、バンド内の状況は極めて心地よいとのこと。同年2月に3rdアルバム『HEAVY FIRE』もリリースしている彼らだが、コンスタントにアルバムを制作するという昔気質なロック・バンドらしいサイクルを守る、その秘訣はメンバー間のモチベーションが高まっていることにあるようだ。ライヴ出演前の慌ただしい時間帯ながら、スコットは相変わらずの温かな笑顔で語ってくれた。

今のメンバーと一緒に世界を廻るのは楽しい

YG:『HEAVY FIRE』を発表してから、各地での反応はいかがですか?
スコット・ゴーハム(以下SG):色々なプレスのレビューでも五つ星をもらえるぐらい、評判は良いね。1stの『ALL HELL BREAKS LOOSE』(’13年)に始まり、その次の『THE KILLER INSTINCT』(’15年)でさらに評価が上がり、さらに今回また評価が上がった。ファンと一緒にバンドが育っているという実感があるね。1stの時点でのBSRは、まだ半分シン・リジィだった。『HEAVY FIRE』を聴けば、今やBSRというバンドが自分の2本の足でしっかり立っていることが分かると思う。

YG:’16年はフィル・ライノット(vo, b)が亡くなってから30周年を迎えたということで、シン・リジィ名義でのショウを行なったそうですね?
SG:ああ、6公演だ。

YG:BSRとしてのライヴとシン・リジィとしてのライヴでは、気持ちの違いはありますか?
SG:いや、両方に対して同じように誇らしく思っているよ。シン・リジィはもう長い間やってきたわけだから、俺の身体の一部になっているんだ。今すぐステージに出ていって、どんな曲だって問題なく弾けるよ。一方のBSRは新しいバンドであって、今までとは違うことができるから、とてもエキサイティングだね。「あのバンドを辞めて新しいバンドなんか作って、何やってるの?」なんて、さも俺がおかしくなったかのように見ている人もいるようだよ(笑)。完全なゼロからというわけではないけど、BSRはほぼイチから立ち上げたようなものだ。大変ではあるけど、バンドがどんどん成長していくのをこの目で見られるのはとても面白い。

YG:BSRとしての歴史はまだ数年ですが、シン・リジィから生まれたことを考えると大べテランということになりますよね。
SG:そこが他とは違うところなんだな。オーディエンスは俺たちメンバーのことを熟知していて、新しいのは音楽だけ。誰も俺たちのことを知らないところからバンドを始めるんだったら大変な道が待っていただろうけど、俺たちにとってそこはアドヴァンテージだった。

YG:あなたのようなべテランのミュージシャンがこれだけマメにアルバムを作るというケースは近年稀な例になってしまいましたが、スコットとしては新作を作り続ける方がモチベーションが上がるのでしょうか?
SG:今一緒にやっているメンバーのおかげで、そういう気持ちになるね。俺たちは非常に仲の良い友達でもあるんだ。良い音楽を作りたいと思いながら、一緒に世界を旅して廻るのは楽しいよ。それがモチべーションの要因じゃないかな。それに「こんなことって出来るのかな? 分からないけど、ちょっとやってみよう」と思ったことを、実行できるところもありがたい。すでにシン・リジィみたいな音楽の内容は把握しているから、新しいことをやっているんだ。ちょっと危険かもしれない領域にも足を踏み入れるのさ。

YG:バンドとして健全なサイクルになっているというわけですね。
SG:その通りだよ。他のメンバーと同じホテルに泊まるのが嫌、飛行機に一緒に乗りたくない…なんてバンドもいるけど、それがどれほど地獄のような状況か、俺には分かる。俺たちにそんなことは起こり得ないだろうな。あるとしたら、誰かが体力的に演奏出来なくなるということだろう。

YG:現在はドラマーとしてチャド・ズィリガが加入していますよね。何故『HEAVY FIRE』を出したタイミングで、前任のジミー・デグラッソは抜けてしまったのでしょうか? 
SG:ジミーには家に3人の子供がいて、休息が必要だったんだ。ツアーをするとなると、彼はいつも3ヵ月ぐらい家を空けることになっていた。当然家族のことを思って寂しくなるわけだよ。3年は家に戻らないことだってあったんだから。俺たちはみんな今でもジミーのことが好きだし、素晴らしいドラマーだと思ってる! だけどチャドはチャドなりの要素を持ち込んでくれた。こういうと変に聞こえるかもしれないけど、ジミーとはちょっと違うフィーリングを持っていて、俺たちとしても彼のスタイルに慣れる必要があった。俺のドラマーを見る目は相当厳しいよ!(笑)
 
YG:ジミーは非常にタイトなドラマーでしたが、チャドはどんなタイプでしょうか? 
SG:タイトという点では同じだ。ただ彼は手数を増やしたがるという特徴があるね。時々「チャド…もっとゆっくり!」と声を掛けることもあるよ(笑)。ジミーがやらなかったドラム・ソロをやってもいいかと訊かれたんで、もちろんOKした。彼のソロは観ていて楽しいよ。と言っても、“LOUD PARK”では時間が短いのでできないけど。

Chad Szeliga - BLACK STAR RIDERS