A DRAMATIC TURN OF EVENTS/DREAM THEATER

A DRAMATIC TURN OF EVENTS/DREAM THEATER
アーティスト名DREAM THEATER
ドリーム・シアター
アルバム名 A DRAMATIC TURN OF EVENTS
ア・ドラマティック・ターン・オヴ・イヴェンツ

CD | ワーナーミュージック・ジャパン | 9月7日発売

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誰もが耳を疑ったまさかのマイク・ポートノイ(dr)脱退から1年──ネット公開されて大きな話題を呼んだ後任オーディションの末、新たにマイク・マンジーニ(スティーヴ・ヴァイ、アナイアレイター他)を迎えての通算11作目。驚くべきは、マンジーニ加入の正式アナウンスから、僅か4ヵ月で本作リリースにまで到ったというハイ・ペースぶり。しかし実際にアルバムを聴いてみると、むしろ過去数作よりもずっと丁寧に、慎重に仕上げられたとの印象がある。また、全体像がクリアでより整合感に満ち、柔らかで伸び伸びとしたムードに包まれている点も見逃せない。逆に言えば、これまでいかにポートノイがすべてを厳格に取り仕切り、彼が望む方向へとバンドを常に引っ張り、結果どんどん閉塞感を強めていったのかが分かろうというものだ。
 ただ、あらゆるアイデアに制限を設けず、メンバー全員が自由度の高さを謳歌しながらも、楽曲スタイルに驚くような変化が見られるかというと、実のところそれはない。打ち込みビートを絡めたり、より視覚的にイマジネーションを広げたりといった手法も、決して“らしさ”保持の邪魔はしておらず、お馴染みジョン・ペトルーシ(g)&ジョーダン・ルーデス(key)による超高速ユニゾンも飛び出せば、ヘヴィなギター・リフ主体のナンバーもあって、いい意味でこれまでのスタイルはそのまま踏襲されている。尚、新ドラマー選考ドキュメンタリー入りDVDが付いた限定盤には、mp3にて全曲のインスト・データが収録されるとか。
(奥村裕司)

これまで幾度かのメンバー・チェンジを経験してきたドリーム・シアターではあるが、今回の[マイク・ポートノイ脱退〜マイク・マンジーニ加入]は、バンド始まって以来の事件。アヴェンジド・セヴンフォールドの作品『NIGHTMARE』(’10年)に参加したポートノイはそのままツアーに同行し…云々(ペトルーシのインタビュー参照)…、ファンは本当に驚いたと思うが、ただ、マンジーニを得たメンバーは既に“その先”を見据え、精力的に活動を再開している。その最初の成果が、この新作だ。
アルバム通してのコンセプトを設けていないのは前作『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』(’09年)と同じだが、「白紙で臨んだ」という前回に対して、今回はドラマーを除くメンバーでアイデアを出し合い、練り込み、方向性を絞り込んでいる…というのは、ポートノイの脱退を受けて、他のメンバー間の繋がりが以前よりも強まった証なのか。何にしても、計算された、構築された曲・曲・曲。そこには、意欲的な制作姿勢が見て取れる。元々ドリーム・シアターは構築美が個性だが、展開もテンションも更に深まっていることは聴けば分かるはずだ。例えば、ギター奏法的に超常現象の③、延々と続くスリリングなリフの⑤、“打ち込み”のような全バンド的キメの⑥と⑧辺り。ペトルーシのギターが鍵を握ってはいるが、集団としての驚異がこれらからは伝わってくる。“負”を糧にしてしまった1枚、そんな強さを感じさせる。
(福田真己)