REPENTLESS/SLAYER

REPENTLESS/SLAYER
アーティスト名SLAYER
スレイヤー
アルバム名 REPENTLESS
リペントレス

CD | ワーナーミュージック・ジャパン | 2015年9月11日発売

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通算11作目の本作も相変わらずの通常運行。ここには“いつもの”“誰もが想像する通りの”スレイヤー曲しかない。しかしその事実にこそ、特に彼らの動向をよく知るリスナーならばこれまでにない絶大なインパクトを感じ取ることだろう。おそらくバンドの現メンバーもそんな感覚なのではなかろうか。

病気離脱したジェフ・ハンネマン(g)の復帰を信じて助っ人を加えライヴ活動のみ継続したため、6年という長いインターヴァルになった。先行き不透明に耐えきれず脱退したデイヴ・ロンバード(dr)の穴を出戻りのポール・ボスタフが埋め、祈り叶わずハンネマンが世を去ったのち、助っ人役に献身してきたエクソダスのゲイリー・ホルト(g)をようやく正式にバンドに迎えて完成した本作。精神的にも作曲面でも支柱に他ならなかった人物を失う大惨事を経てなおも一片の情緒さえ感じさせぬ、この徹頭徹尾のコワモテ披露である。特徴的な音とフレーズを持つホルトもここでは自己主張を封印し、ケリー・キングとのツイン・ギターの絡みはリフ/ソロのぶつけ方ともに従来のスレイヤー様式を完全再現している。しかし一方でボスタフのドラムがまさしく彼固有の音に聴こえることから、あざとい懐メロ狙いには感じられない。あくまで自然なスレイヤーの健在宣言。ハンネマンが一番聴きたかったのは、たぶんこういう新作だった。

【文】平野和祥