アレキシ・ライホ:2008年『BLOODDRUNK』復刻インタビュー[期間限定]

アレキシ・ライホ:2008年『BLOODDRUNK』復刻インタビュー[期間限定]

スピーディーなリックはワン・テイクで弾かなきゃ!

YG:収録曲を紹介してくれますか?

AL:OK。まずオープニングの「Hellhounds On My Trail」は、ギター・ソロが気に入ってるんだ。凄くバカバカしいから。

YG:クロマティック音階が入ったあのソロ?

AL:そう。自分としては結構笑える(笑)。ヤンネと凄く速く弾いてる内に、スレイヤーっぽいフィーリングの曲になった訳。だったらソロもスレイヤー風に弾くべきだって事で、思いっ切り暴れちゃったよ。クロマティック・スケールとかタッピングとか、いろんな要素を盛り込んでね。ワウ・ペダルとアームも使いまくり。ヤンネも完全にイッちゃってるよ。スレイヤーをキーボードで表現出来る人間なんて、あいつくらいしかいないぜ(笑)。

YG:かなり鮮烈で強烈なソロですが、という事は、その場のノリで弾いたもの?

AL:ああ。しかもアッという間だよ。タッピングは簡単だし(笑)。

YG:次の「Blooddrunk」は?

AL:この曲は、頭のリフもいいけど、その後に出て来るヴァース前のギターが気に入ってる。盛り上がって行く感じと言うのかな…、そこがいいんだよね。初めはギター1本でリフを弾いているんだけど、そこにもう1本が加わって、歌に入ると、2本のギターが同じリフのハーモニーになるんだ。カッコいいよ。

YG:キーボード・ソロの前に、凄く難しいリズムのリフが出て来ますが…。

AL:そうそう! あのパートは苦労した。つい、後先考えずに書いちゃったもんだからさ(笑)。バンドで合わせるのはひと苦労だよ。それでも、俺達は何とかしちゃうけどさ!

YG:「Blooddrunk」はアルバム・タイトルでもある訳だけど、またこれ、血生臭いですね。

AL:それが俺達さ(笑)。

YG:この言葉にはどんな意味が込められているんですか?

AL:曲の歌詞は自分の個人的体験に基づいているんだけど、要するに「自分の血を流す事に酔っている」という事。俺って、昔は完全に頭おかしくてさ(笑)…、すぐ傷を作ってたんだ。まだその痕は沢山残ってるよ。今はもう落ち着いたものの、昔はしょっちゅう面倒を起こしてた。よく骨折もしたし、とにかく酔っ払うとバカやっちゃってたんだよな。ビルから飛び降りたりとかさ。もう、そんな事はしないよ。きっぱり止めた。この曲は、その辺りが素になっているんだ。

YG:確か以前、ギプスをしてましたよね。

AL:ああ…、あれは雪が降る12月のヘルシンキだった。ヤンネ達と出掛けて怪我したんだ。俺はもう完全に酔っ払っててさ。何故か停まっていた車のボンネットに登ったら面白そうだな…と思った訳。で結局、雪で滑って大転倒。顔と手首を下にしてね。目には黒いアザ…、顔は何針も縫い、かすり傷なんて数え切れなかったし、手首の骨を3本も折っちゃったよ。俺、何やってんだろうな(苦笑)。

YG:レコード会社やツアーのスタッフは御立腹だったのでは?

AL:黙って見逃してもらったよ(笑)。

YG:「Lobodomy」だけど、これは綴りを変えた造語?

AL:その通り。ロボトミー手術(精神病治療などの前頭葉切除術)のスペルである“lobotomy”の“t”を“d”に変えて、“bodom”を浮かび上がらせた。

YG:キーボードとギターのソロ・パートは、コード進行が複雑そうですね。

AL:でも、これをどうしても演りたかった。Keyに沿ってはいるけども、このコード進行は独特な変化をするし、たまにKeyを考えるとキツいコードも出て来るんだ。そういうバックに合わせる時は、フレーズにそれなりの工夫が必要になるだろ? それだけでソロは特別な感じになるんだよ。そういう意味で、この曲のソロは一番気に入ってる。

YG:次の「One Day You Will Cry」は?

AL:早速だけど、今の言葉、撤回するよ。考えてみると「Lobodomy」のソロじゃなくて、この曲のソロが一番だ(笑)。ソロ前のパートを含めると結構長いから、いろんな展開が出来て楽しかったんだ。メロディックなものから始まり、激しいピッキング・フレーズからスウィープ・アルペジオ…、それに続くヤンネのキーボード・ソロもまた凄い。

YG:ちなみにチューニングは?

AL:“ドロップC”(全弦1音下げ+6弦のみさらに1音下げ)。今回は「Smile Pretty For The Devil」と「Done With Everything, Die For Nothing」と「Roadkill Morning」が“全弦1音下げ”。あとは全部この曲と同じ“ドロップC”で弾いた。

YG:次は「Smile Pretty For The Devil」。全体的には典型的なCOBの空気だけど、ソロはブルージーですよね。

AL:ペンタトニック・スケールを使っているから。スケールに沿って上下してるだけなんだけど、そこにメジャー6thやフラット5th、メジャー3rdを放り込んでるんだ。

YG:アレキシはメジャー6thが好きですね。

AL:大好き! 使い過ぎはNGだけど、ちりばめる程度の適量を適所に入れると、完全に違うサウンドを繰り広げられる。俺の場合だと、ロックともブルースともジャズとも違う、よりクレイジーなニュアンスが出ると言うか…。別に、自分でメジャー6th入りのスケールを発明したと言うつもりはないけど、ペンタトニック・スケールを面白くしようと思ったら、この手のフレーズが生まれたんだよね。

YG:基本はインプロヴァイズ?

AL:基本はね。でもこのペンタトニックという方向性は、バンド・リハーサル中に思い付いたんだ。俺はギタリストとして、常にクレイジーなフレーズ、ユニークな雰囲気を見付けたいと思ってる。その結果だよ。ナチュラル・マイナーやハーモニック・マイナーもいいけど、そればかりじゃ退屈だろ? ハーモニック・マイナーを連発したら、イングヴェイ・マルムスティーンのフォロワーだと思われちゃうよ。星の数ほどいるイングヴェイのパクリ仲間にされたくない(笑)。

YG:ところで、例えばPro Toolsを使ったデジタル録音が一般的になって以降、即興で弾いたプレイの良いパーツを抜き出し、それをつなげるギタリストが多くなりましたよね。アレキシはそれを、潔くないと思っているタイプ?

AL:やっぱり、それはしたくないな。特にスピーディーなピッキングにのめり込んでる真っ最中、止めて残りをつなげるなんて、そんな事は絶対にしない。何故なら、それってインチキだから。実はやりたい衝動に駆られる事もある。でも、インチキをしない程度の品格は俺にもあってさ。そもそも、綺麗に弾けないならアルバムに入れるべきじゃないよ。スピーディーなリックはワン・テイクで弾かなきゃね。ただ、そうではない他の部分は構わないと思う。Pro Toolsは便利だもの。例えば、せっかく1曲丸ごと通して完璧にプレイ出来る…と安心した最後の瞬間、トチるって事は少なくない。昔だったらそこですべてが無駄。初めからやり直す羽目になるよね。でもPro Toolsのようなソフトがあると、最後だけ差し替える事が可能だ。俺達もそういう使い方はするよ。だけど、インチキだけは絶対にしない。俺のイデオロギーに反するから。