アレキシ・ライホ:2019年『HEXED』復刻インタビュー[期間限定]

アレキシ・ライホ:2019年『HEXED』復刻インタビュー[期間限定]

前作から約3年半ぶりのリリースとなったチルドレン・オブ・ボドム(COB)の10作目『HEXED』は、ダニエル・フレイベリをセカンド・ギタリストに迎えた新たな布陣で制作。キャッチーさを備えたCOBらしさ満載のスタイルに、ネオ・クラシカルの要素もみせる興味深い作品に仕上がった。

2019年4月号の本記事をもってYGにおける彼のインタビューは最後となってしまったが、曲作りやダニエルとのレコーディングなどについて語る様子を、アルバムを聴きながら振り返ってみていただきたい。

注意事項

※この記事は2021年8月までの期間限定で公開されます。
※インタビューの内容は、基本的に当時のヤング・ギター本誌に掲載されたものを復刻しています。

今やこのバンドには2つの個性的なギターがある

YG:デビュー以来、わりとコンスタントに作品を出し続けて来たチルドレン・オブ・ボドムですが、今作は前作『I WORSHIP CHAOS』(2015年)から3年半ぶり。これほど時間が掛かったのは初めてでは?

アレキシ・ライホ(以下AL):ちょっとわけがあってね。前作を出した後は2年半ツアーに出ていたんだけど、それはいつもの通り。そこからすぐ曲作りを始めた後、さらにツアーをいくつかやらないといけなくなってね。それが2018年の初めのこと。秋にはアルバムをリリースする予定だったんで、4月にスタジオ入りして、5月末か6月初頭にはマスタリングまで終わっていた。そこが納期だったから必死になって作業していたのに…、ちょうど色々終わった頃、「2019年の3月までアルバムは出さない」って言われたんだよ。どうすれば失礼のない言い方に出来るか分からないけど、何というか…めちゃくちゃ腹が立った。あんなに一生懸命やって来たのに、突然半年間何にもすることがなくなったわけ。一体どうすりゃいいんだ!?って感じだよね。ただその後、ヨーロッパのフェスティヴァルなんかにも色々出たりして、結果的にそれが良い経験になったな。普通なら少なくとも新作を出さないとツアーなんて出来ないもんだけど、昔の曲をセットリストに入れ込んだりして工夫し、それがすごく上手く行ったんだ。というわけで、長く掛かった理由はそういうことさ。スケジュールにちょっとした不備があっただけで、バンドが決めたことじゃなかったんだよ。自分たちにはどうすることも出来なかった。

YG:前作から今作までの間に、COBにはダニエル・フレイベリ(g)が加入しましたよね。時間が掛かったのは、彼とバンドが上手く馴染むためだったのかとも思ったのですが。

AL:いやいや。ダニエルは憶えが早いし努力家なんで、その辺りは全然問題なかった。

YG:アレキシから見て、ダニエルはどういうタイプのミュージシャンですか?

AL:素晴らしいギタリストであることは間違いないし、俺のスタイルとはかなり違うね。彼はプログレ・メタル・バンドやその手のギター・プレイが好きなんだ。一方俺のスタイルはもっとロックンロールだと思っている。それがいいんだよ。今やこのバンドには、2つの個性的なギターがあるわけだからね。前作のレコーディングで、俺がギター・パートをすべて弾いたことは今も誇りに思っているよ。特にリズムなんて、何本ものギターが完璧にシンクロしていて我ながらすごいと思う。でも『HEXED』にはまた違ったヴァイブがある。ダニエルは自分自身のパートをしっかりレコーディングしたし、俺は俺のパートを責任持って録ったんで、プレイの質が違うんだ。それが音楽そのものに多大なインパクトを与えた。

YG:つまり、COBの本来あるべき姿へと戻ったわけですね。

AL:ああ、その通りだ。

YG:最近、作品を重ねるごとにどんどん楽曲がコンパクトかつキャッチーになっている気がしますが、別に意図しているわけではないんですよね? 「アルバムを作る前に明確なコンセプトを設けることはない」と、アレキシは常々言っているので。

AL:そうだな、もちろんたまたまそうなったんだ。前もって決めることが何もないというのは本当だけど…。でも曲のアレンジをよりシンプルにした方がいいって風に、意識し始めたことは明らかだよ。と言ってもそれは曲構成のことであって、必ずしもギター・プレイには当てはまらない。1つのリフの中でも、かなり複雑なことが起こったりしているからな。でも構成を練るのは少しだけ控えめにした。簡潔さを重視することで、みんなが憶えやすいようにしたんだ。

YG:今回のプロデューサーは、お馴染みのミッコ・カルミラ。

AL:彼は『HATEBREEDER』(1999年)をミックスしたし、『FOLLOW THE REAPER』(2000年)の一部もミックスしたし…つまりCOBのほぼすべてのアルバムに関わって来た。『ARE YOU DEAD YET?』(2005年)では初めてレコーディング・エンジニアとしても起用したね。俺たちはずっと一緒にやって来たし、今も彼を必要としている。アルバムの音を素晴らしいものにしてくれるからね。特にドラムや他の楽器を録る際の、マイク・セッティングが天才的なんだ。

YG:制作場所は“Danger Johnny Studio”と名付けられた、あなた方のスタジオですか?

AL:そうだよ。『I WORSHIP CHAOS』や『HALO OF BLOOD』(2013年)の時と同じだ。あそこの素晴らしい点は、俺たちがいつも練習している部屋を、そのままレコーディング・スタジオに出来るってこと。ミッコが“Pro Tools”の入ったPCとか、様々な録音機器を持ち込むんだ。他にもデカいホールがあって、そこに機材や車を保管している。ドラムはそこでレコーディングするんで、ナチュラル・リヴァーブが思いっきり掛かるんだ。フェイクじゃないから、きちんとマイキングすると素晴らしい音になるのさ。さらにゆったりとくつろげるエリアもあって、そこでは好きなことが出来る。ベッドルームもあるから、俺は大抵そこで時間を過ごしているよ。ずっと仕事モードでいたいからな。実際ほとんど24時間いたけど、気が向いたら自宅にも帰れる。俺の家はほんの20分のところにあって、行ったり来たり出来るのさ。こんな完璧な状況があるんだから、わざわざ他のスタジオを使う必要がどこにある? 利用しない手はないよ。

YG:ここからは1曲ずつ詳しく聞かせてください。まず「This Road」は、COBのオープニングとしては珍しい3連リズムのナンバーですね。

AL:キャッチーだから幕開けとして打って付けだし、それに“いつもと違う”ってのがいいんだ。この10年間、俺たちはいつだって一番速い曲、一番ヘヴィな曲をオープニングに持って来ていたからね。ただ今回のアルバムはデッキに入れて再生ボタンを押すと、すぐにこれまでとは少し様子が違うってことが分かる。確かこの曲を作った頃は、オジー・オズボーンの昔のアルバムをよく聴いていたんじゃないかな? ジェイク・E・リーっぽいハーモニクスがたくさん入っているしね。それにエディー・ヴァン・ヘイレン、ランディ・ローズ…彼らがよく使っていたアイデアをいただいたのさ。新しいハーモニクスを見付けるのって、楽しいよね。「4弦のこのフレットでやってみたらどうなるだろう?」とかさ。そうやってメロディックなアイデアを試してみるんだ。

YG:アレキシはレコーディング時、細かいバッキングもなるべく最初から最後まで通して弾きたいタイプなんですよね?

AL:まあ、ほとんどの場合はね。大抵は細かい部分をやり直さなければいけないけど、出来るだけノン・ストップで弾く。その方がよりナチュラルな結果が得られると思うよ。

YG:これほど切れ味の良いグルーヴで弾きこなすとなると、相当時間を掛けて身体に叩き込んでから録音に臨むわけですか?

AL:もちろん、準備万端整えておかないといけない。でもギター・リフはすべて俺が書いているから、曲作りの段階で既に染み込んでいるんだよ。続けざまに何千回も弾かないといけないから、展開は俺の頭の中に刻み込まれている。ただいつも簡単ってわけじゃなくて、気合いを入れて取り組む場合もあるよ。曲によるかな。

YG:中間のリズム・チェンジするパートでは、左右のギターがものすごく不穏な音使いでハモってますよね。単純ではなさそうですが、理論的に考えて作るわけですか? それとも感覚で?

AL:両方が重要だけど、意味を成すためには理論的に考えなければいけない。だから俺は1音1音を分析しながら作るよ。超スローに弾いてみて意味を成すかどうか確認するし、頭の中にあるアイデアをダニエルと一緒に試してみることもある。おかしなハーモニーだけど理論的にはキッチリしているから、完璧にぶっ飛んでいるというわけじゃない。逆に言えば、クレイジーなニュアンスを出したければ感覚に任せることもある。そういう音を見付けるのも楽しいんだ。

YG:「Under Grass And Clover」は昨年末、既にウェブ上で公開していた曲ですよね。つまり、アルバムのリリースに向けてじわじわとファンに興奮してもらうための戦略?

AL:その通り! 少なくともシングルと映像を、早い時期に発表することが出来て良かったよ。3年半もの間、ファンに何ひとつ届けられないという事態は避けたかったんでね。俺のお気に入りの曲でもあるから、余計に嬉しかった。最初に出て来るリフはサビにも登場するんだけど、あれは頭から離れないよな。ちなみにこの曲の映像はファンをスタジオに入れてライヴさながらに撮ったんだけど、プレイバックに合わせた“当て振り”だったにもかかわらず、みんな大興奮していた。PAスピーカーから大音量で流していたからね。あの反応を見て興奮しないわけがない。まあ最初は「こいつはやりにくそうだぞ」って思ったけど、いざ始まったらそんなことは忘れてしまった。その後のサイン会でも、みんなこの曲が大好きだって言ってくれたよ。「キャッチーでガツンと来る!」って。俺にとっては最高の褒め言葉だね。

YG:明るいイントロがとても印象的…というか、ポップと形容してもいいほどですよね。例えば以前からアンドリューW.K.のカヴァーなどもしていたCOBですが、オリジナル曲でここまでキャッチーなのは驚きでした。

AL:そうだな、書いた当初はそんなこと考えてもいなかったけどね。バンド・メンバーの誰かがこの曲のアイデアを聴いた時「お前、最近アンドリューW.K.にまたハマってるわけ?」って聞いて来たんで、「そうなんだよ!」って返しておいた(笑)。確かに彼の曲と言われてもおかしくないよな。それも嬉しい感想だね、俺たちはみんなアンドリューのことが大好きだからさ。でもこの曲はイントロが終わるとマイナーなリフが現れるし、よりダークになる。そしてまたあのメジャーなリフが戻って来る! 明るいのと暗いのを行き来するところがいいんだ。さらにダークな内容の歌を被せているから、それもコントラストになるし。

YG:左チャンネルのギターは忙しいメロディーを常に弾いていて、右のチャンネルはコードを弾いている場面が多いですよね。アレキシは敢えて難しいことに挑戦したいタイプなので、ライヴではもちろん、歌いながら忙しい方のフレーズを弾くんですよね?

AL:そうさ(笑)。他の曲よりも練習しなけりゃいけないだろうけど、大丈夫。俺にとっては困ることじゃない。確かに俺はチャレンジが好きだけどね。…と言いながら、今はダニエルにより難しいメロディックなパートを弾いてもらい、俺がコードを弾く場合もある。そうするとヴォーカルにより専念出来るからな。ここ10年、俺の中では歌の比重がどんどん大きくなっているし。大抵はギターを弾きながら歌うことが自然に出来るけど、ダニエルが大きな責任を背負ってくれることもあるわけさ。