アレキシ・ライホ:2019年『HEXED』復刻インタビュー[期間限定]

アレキシ・ライホ:2019年『HEXED』復刻インタビュー[期間限定]

つまりアルバム全体が“hexed”な状態だった

YG:続いて「Glass Houses」。ブリッジ・ミュートのギター・リフ、そこにユニゾンするキーボード、速いドラム…が、あたかもマシンのように延々と正確にプレイし続けるのがものすごいですね。今作の中で最も、演奏するのに体力を必要とする曲なのでは?

AL:ああ、このオープニング・リフを弾き続けるのはかなり大変なんだ。タイトなサウンドにしようと思えばなおさらだよ。ヴァースのリフだって、聴いた感じほど簡単じゃない。ちなみにオープニング・リフに関しては、久しくやっていなかったネオ・クラシカルなヴァイブがある。そこもすごくクールだと思うね。

YG:ちなみにアレキシはツアーに備えて、あらかじめ体力作りをするタイプ?

AL:最近はそうしているよ。ツアー中はもう飲まないし、シラフでいようと心に決めたんだ。俺ももう年だからな(笑)。20歳の若者じゃないんで、二日酔いに耐えられない。1日中、ずっと最悪な気分になるんだ。ライヴ前もライヴの最中もそんな具合だと、楽しめないだろ。「俺にとって、酒と音楽とどっちが大事なんだ?」って自問した時、音楽を選ぶことは明らかだったよ。それに身体も全体的にボロボロになっていて…、飲み過ぎで胃潰瘍になったんだよ。5年ほど前のことだ。入院もしたし、かなりヤバかった。あんなのはもうゴメンだね! 酒をやめたおかげで、今は何もかも素晴らしく良くなったよ。ただ、最初はちょっと違和感があった。かつては俺が一番のクレイジーなパーティ野郎だったんだから、頭が受け入れられなかったんだな。常にシラフでいなければならないというのは、落ち着かない経験だったけど…次のツアーが始まる頃にはもう意識せずに済んだよ。終わったらたまに友達と酔っぱらうこともあるけど、もう大酒は飲まない。何日も連続してパーティすることもないよ。というわけで、「普通の人のように飲む」っていうのがここしばらくの俺の目標だったんだ(笑)。ガチなアル中にとっては簡単じゃないだろうけど、俺には出来るんだってことを、自分にも周囲の人間にも示したわけ。今後もこれを維持して行くよ。

YG:いい決断でしたね! 話を「Glass Houses」に戻すと…この曲のコーラス部分のコード進行、いかにもアレキシにしか思い付かなさそうな、不思議で予想外の動き方をするんですが。例えば今までに誰もやっていなさそうなコード進行を、普段から考えて溜めていたりするんですか?

AL:いつもってわけじゃないけど、典型的な普通のCメジャーとかAマイナーとかじゃない、変化が必要な時っていうのがあるんだ。そんな場合は意識して違う要素を少し入れてみたりする。ヘンテコなコードのアイデアをね。でも絶対に、意味を成すものにすることが大切だ。そうすれば曲を上手く終わらせることが出来る。まあとにかく色々と試してみて、メロディーやハーモニーが上手く乗るか、自然に感じられるか、そういうことを考えるんだ。

YG:「Hecate’s Nightmare」。前作ではケルト神話の女神をタイトルにした「Morrigan」という曲がありましたが、ヘカテもギリシャ神話の女神の名前ですよね。女神シリーズ?

AL:そんな風に考えたことはなかったけど(笑)、俺は昔から魔術全般に魅かれているんだ。特に黄泉の国の女神にすごくインスパイアされる。何故だか分からないけどね。「Halo Of Blood」も、ヒンドゥー教の女神であるカーリーについての曲だった。書かなきゃって強迫的に思っているわけじゃなくて、ただ自然に出て来るんだよ。大抵、この手のテーマは歌詞的にドラマティックになる。この曲もまさにそうだよね。内容は半分フィクションで、ヘカテへの謝罪の手紙という体裁になっている。何度もヘマをした人が、チャンスをもらおうとしているんだ。一度ヘカテについて調べてみてから歌詞を読めば、より意味が分かるかもね。かなり興味深いコンセプトだと思うよ。音楽自体も歌詞と完璧に合っていて、すごく不気味だ。間違いなく俺のお気に入りナンバーさ。

YG:キーボードから始まるイントロは、COBとしては珍しいくらい空間を活かした、良い意味でスカスカした感じで、これも今までにない要素ですね。

AL:不穏な雰囲気で、ほとんど壊れたオルゴールみたいだよな。ドラムが入って来ても、君が言ったように音はスカスカのまま。ギターのメロディーがダブルで弾いている場面はあるけど、スペースがかなり空いている。最初のヴァースの後のプリ・コーラスでも、ドラムは変わらずリズムを刻んでいるし、ヘンカ(ブラックスミス)は8分音符でベースを鳴らしているけど、スペースは空いたまま。それでも曲はどんどん盛り上がって行くんだ。この曲のコーラスは、少なくとも俺にとってはかなりキャッチーだな。そしてとてもメロディックで、’80年代のヴァイブがある。色々な要素が詰まっている曲だよ。

YG:この曲のギター・ソロは細かく転調しているような感覚を抱かせる、アレキシならではの音使いで面白いですね。聴く人の耳を飽きさせたくない、驚かせたいという意思を感じるというか。

AL:ありがとう。この曲の場合はプリ・コーラスにソロを被せて超ロックンロールなニュアンスを出したかったんで、頻繁にベンディングしたし、それにワウ・ペダルをかなり使った。一方ソロのバックにも注意を向けると、全く新しいリフが何度も出て来るよ。キーボードとのハーモニーもある。単に荒っぽく弾いているだけじゃなくて、ちゃんと練り上げているんだ。あのソロはかなり多様だよ。

YG:「Kick In A Spleen」は猛烈に怒っている曲! こういうのはオーディエンスにライヴで暴れてもらいたいという思いで作るんですよね? でもCOBの場合は演奏が正確でタイトなのが面白くて…、乱暴な曲だからといって適当に演奏していいわけではないということ?

AL:そう、でないとすべてがバラバラになってしまって、もはや音楽でなくなる。というか、COBではなくなるんだ。だから俺はきっちりとタイトに弾きたいし、ヴォーカルのリズムもバッキングとバッチリ合うようにしたい。コードはもっとシンプルにしても良かったかもね。例えばAやFを長く伸ばしても良かったけど、でもダーク・スローンやインペイルド・ナザリーンみたいな古典的ブラック・メタルっぽくしたかったからさ。かなりいい出来になったと思うな。あと俺とヤンネ(ウィルマン/key)がユニゾンで弾いているパートもあって、そこはかなり個性的だ。ソロは曲の中の全く別のパートって感じで、違う曲が入っていると言ってもおかしくない。ブレイクのところに入っている速いハーモニーも気に入っているし、あれはかなりCOBらしいね。ライヴでやるのが楽しみだよ。

YG:「Platitudes And Barren Words」の左側のギターはものすごく分かりやすいメロディーを弾いていて、右側のギターはウネリのあるアグレッシヴなリフを弾いていて…。全然違う2つが上手く補完し合っているのが巧みだと思いました。こういうのって、曲のアイデアを思い付いた時点で同時に頭に浮かぶわけですか?

AL:ああ、大抵はそうだね。ああいうメロディーを際立たせるには、バックにすごくヘヴィで生々しいものが必要なんだけど、これまた自然に出て来るものなんだよ。そういう風に組み合わせるのは、俺にとっては常識なわけ。この曲のメロディーはポップ・ソングにもなり得るけど、でもCOBの音楽はポップじゃない。だからバックを出来る限りヘヴィにしなけりゃいけないんだ。全体的には純然たるメタルだよ。ただ、構成をきっちりと練り上げるのがやたら大変だった。今回のアルバムの中でも最も苦労したんじゃないかな? ちなみにこの曲、次のシングルになっていて、既に映像も撮り終わっているんだ。そろそろ公開されるんじゃないかな。

YG:楽しみですね! 次の「Hexed」は「Glass Houses」と同様、少しネオ・クラシカルな雰囲気があって、最近のCOBとしては珍しいですよね。ちょっとした心境の変化?

AL:どうかなあ。まあ、遂に再びやる準備が整ったということだな。こういうアイデアをまたやれるようになるまで、長い年月が必要だったんだ。ヘヴィ・メタルにおけるあのネオ・クラシカルのコンセプトが、俺は大嫌いになっていた。似たようなことをやっているバンドが昔はやたらといて、猫も杓子も…って状態だったからね。俺が嫌いなタイプのバンドも多かったし、そういうクソ忌々しいバンドと一緒くたにされたくなかった(苦笑)。だからある時、ネオ・クラシカルなものを一切弾かないようにしようと、意識的に決断したんだ。でも今回でそれは終わり。曲作りの時、冗談混じりで「こういうパートがあったら楽しいんじゃない?」って弾いてみたら、みんな「いいんじゃないの? もう10年以上もやってないんだから、どうなるか試してみようよ」って言ってくれたんでね。実際、試してみたら最高にいいものが出来た! 「Hexed」はすごくスラッシーで速くて、ある意味複雑さの対極にあるような曲だったから、面白くするためにチャレンジングなパートをぶちこんだわけ。バッチリだったよ。だから次のアルバムで同じような曲が生まれたとしても、もう驚きじゃないね。

YG:この曲をアルバム・タイトルに持って来た理由は?

AL:クールな響きだったし、アルバム・ジャケットに記した時の見た目も良かったから。普段、俺はアルバム・タイトルにメッセージなんか入れ込まないんだけどさ。さっき、リリース日のことについて話したよね? すべてが先送りになったんで、「一体いつになったらこいつは出るんだ?」って気分になって、つまりアルバム全体が“hexed”な(呪われた)感じだった。だからピッタリだと思ったんだ。