Mary’s BloodのSAKI(g)が指揮を執る音楽イベント“WORLD GUITAR GIRLS COLLECTION” (以下WGGC)。国内のロック・シーンで活躍している女性ギタリストをフィーチュアした本企画は、元々は’17年春に開催された“NAONのYAON”の中のワン・コーナーとして始まったもので、複数のプレイヤーが有名曲の数々をインスト&メドレー形式で演奏するという内容だった。その後同年7月と11月にWGGCの名を冠したイベントが行なわれているが、前者はMary’s BloodとCyntiaの2マン・ライヴと同時開催、後者は人気イベント“CLASSIC ROCK JAM”とのコラボ開催ということで、どちらもWGGC自体を全編で展開したものではなかった。そして今年4月の“NAONのYAON 2018”を挟み、去る8月19日、ショウ全体がギター・インストのみで構成されたWGGC単独公演が遂に実現! “GIG 1”と題された今回は、レギュラー開催化にあたっての初回にあたるということだ。
参加ギタリストはバンド・マスターのSAKIの他、LoVendoЯの宮澤茉凜、Mary’s Bloodのサポート・メンバーとして知られ、ソロとしても活動中のYASHIRO、Disqualiaの葉月、AstroveryのAYUMIという計5人。更にゲストとして、昨年秋にトリオ・バンド:ASTERISMでデビューを果たした話題のギター・ガール:HAL-CAも参戦した。この6人によって繰り広げられた当日のセットリストは本ページの下部に記した通りで、冒頭と終盤に国内外の有名ナンバーをメドレー形式で演奏するメンバー総出演の目玉コーナー(HAL-CAはアンコール以降のみ参加)を配置し、その間に各メンバーのソロ・タイムやSAKI&宮澤といったスペシャル・コラボによるパフォーマンスが次々と展開された。本誌読者の方にはこの表現で伝わるかと思うが、端的に言えば“GENERATION AXE”方式である。こうした構成が組まれた本公演において各メンバーがどんな活躍を見せたのか、以下では個別に印象的だったポイントを紹介していきたい。
SAKI
おなじみの赤いキラー製カスタム・ギターを手に、メドレー時にはステージ中央で熱く華麗に弾きまくる姿が実に痛快だったSAKI。彼女が自身のソロ・タイムでセレクトした曲は人気レスラー蝶野正洋氏の入場テーマ曲「CRASH〜戦慄〜」(註:ロイヤル・ハント「Martial Arts」のエディット・ヴァージョン)で、当日は氏がプロデュースしているファッション・ブランド:ARISTRISTから提供されたというTシャツ&サングラスを着用して、これまた熱烈なプレイを聴かせてくれた。また宮澤とのツイン・ギター体制で演奏したアイアン・メイデンの「The Trooper」では、SAKIのトレードマークとも言える怒濤のシュレッドも炸裂! 近年はハイブリッド・エンタテイメント“魔界”への参加や他アーティストのサポートなどMary’s Blood以外のフィールドでの活躍も目立つ彼女だが、そういった場数を踏んでギタリストとしてだけでなくエンターテイナーとしても著しく成長した姿が、非情に頼もしく感じられたステージだった。
宮澤茉凜
LoVendoЯでのプレイにも見え隠れしているが、宮澤はギターを始めた頃から鋼鉄音楽愛好家。ということで、様々なHR/HMの名曲が連打される本イベントはまさに彼女の真骨頂が発揮されるシチュエーション、と言えるかも…? そんな彼女がソロ・タイムで演奏したのは、敬愛するギタリストの1人だというマイケル・シェンカーの傑作インスト「Captain Nemo」だ。強弱の付け方やリズム的なタメなどを繊細にコントロールする力を要する難曲ということで、苦戦している箇所も見受けられたが、堂々とエモーションたっぷりに弾き切ったそのパフォーマンスに観客はすっかり魅了されていた。なお彼女の使用ギターは、’16年に製作されたというアディクトーン カスタム ギターズの青いSTシェイプだった。
YASHIRO
昨年念願だったソロ・アルバム『Astraia』を発表し、アーティストして大きくステップ・アップしたYASHIRO。そんな彼女は今回、ソロ・タイムに同作からのオリジナルを2曲披露した。哀愁漂うテーマ・メロディーが光るハードなナンバー「Betelgeuse」では、安定感のある演奏でテクニカルなパートも見事にコナし、続いてSAKIを招いてプレイしたメロディック・メタル・チューン「Frozen Rose」では2人による激しいソロ・バトルでオーディエンスを圧倒。またこれらの前には宮澤と2人でTOTOの「Child’s Anthem」をカヴァーしたが、敬愛しているスティーヴ・ルカサーの名演とあってか、テーマ・メロディーをハモる姿が実に生き生きとしているように感じられた。
葉月
現在活動休止中のDisqualiaのメンバーであり、RAMI(vo/Raglaia)のソロ・ツアーのサポート・ワークでも知られているギタリストの葉月。ESPモデルを愛用する彼女はメドレーで演奏した他、AYUMIとタッグを組んで2曲のカヴァーをプレイした。1曲は春畑道哉の定番インスト「JAGUAR」、もう1曲はスティーヴ・ヴァイの客演が話題となったオリアンティの「Highly Strung」だ。王道のメタル・スタイルを得意とする彼女だけあり、ヘヴィなリフさばきやシステマティックなフレージングが特に際立っていたように思う。また「Highly Strung」では、フィーリング重視で刻みまくるスピーディーなフル・ピッキングも迫力満点だった。
AYUMI
注目の新人ロック・トリオ:Astroveryでフロントウーマンを務めているAYUMIは、ブルージーでR&Rなフレージングを得意とするワイルドな弾きっぷりが魅力のギタリストだ。比較的HR/HM寄りなメンバーが多い中、ギブソンの箱ものを駆り情感たっぷりに奏でる彼女の存在は、WGGCの色合いをより豊かなものにしてくれている。先述したようにAYUMIは葉月と組んで2曲のインストをプレイしたが、メタル・スタイルに長けた葉月とのコントラストが印象的で、その意味でとても鮮烈なギター・バトルとなっていた。「JAGUAR」における抑制の効いた美しいパートは、その煌びやかなトーンも相まって、今回彼女が最も輝いていた場面の1つだっただろう。
HAL-CA
今回ゲスト・アーティストとしての参加だったHAL-CAはアンコールのみの登場。故に出演時間は長くはなかったが、そのギター・ヒーロー然とした佇まいとロング・ヘアを振り乱しながらプレイする荒々しい弾き姿、そして目を見張るレベルの技巧で迫り来る彼女の演奏に、一瞬でノックアウトされたオーディエンスも少なくなかったのではないだろうか。時に強烈なタッピング技やアーミングをからめながら高度なフレーズを次々に決めていくHAL-CAのサウンドは、間違いなく本イベントをよりエキサイティングで激烈なものへと高めてくれた。ぜひ次回は、ゲストではなく正式メンバーとしての参加に期待したいところだ!
さて、このように実に激熱な内容となったWGGCの“GIG 1”だが、早くも第2回の単独公演となる“GIG 2”が10月20日(土)に渋谷GARRET udagawaで開催されることが決定している。これまでとは異なりゲスト・ヴォーカルが加わることになっており、JupiterのKUZEとVOLCANO他のNOVが参加予定だ。あくまで“ギターが主役”というコンセプトは引き継ぎつつ、新たな要素も加えて更に進化していくWGGCにぜひ今後もご注目いただきたい。本イベントに関する詳細・お問い合わせはページ下記を参照のこと。
“WORLD GUITAR GIRLS COLLECTION 2018 GIG 1”2018.8.19 @渋谷WWW セットリスト
※()内はオリジナルのアーティスト、/以下は参加ギタリスト
1. Special Medley #1/SAKI、宮澤茉凜、YASHIRO、葉月、AYUMI
2. CRASH 〜戦慄〜(ROYAL HUNT)/SAKI
3. The Trooper(IRON MAIDEN)/SAKI、宮澤茉凜
4. Captain Nemo(MICHAEL SCHENKER GROUP)/宮澤茉凜
5. Child’s Anthem(TOTO)/宮澤茉凜、YASHIRO
6. Betelgeuse(YASHIRO)/YASHIRO
7. Frozen Rose(YASHIRO)/YASHIRO、SAKI
8. JAGUAR(春畑道哉)/葉月、AYUMI
9. Highly Strung(ORIANTHI)/葉月、AYUMI
10. Special Medley #2/SAKI、宮澤茉凜、YASHIRO、葉月、AYUMI
[encore]
11. Guitarists’ solo time/SAKI、宮澤茉凜、YASHIRO、葉月、AYUMI、HAL-CA
12. Special Medley #3/SAKI、宮澤茉凜、YASHIRO、葉月、AYUMI、HAL-CA
“WORLD GUITAR GIRLS COLLECTION 2018 GIG 2”概要
日程:2018年10月20日(土)
会場:渋谷GARRET udagawa
出演者:SAKI、宮澤茉凜、YASHIRO and more
ゲスト・ヴォーカル:KUZE(Jupiter)、NOV(VOLCANO、地獄カルテット) and more
開場:16:30 / 開演:17:00
チケット料金:4,500円(税込)
詳細・お問い合わせ:ディスクガレージ
WORLD GUITAR GIRL’S COLLECTION 2018