熱気渦巻く壮烈なパフォーマンス! METAL WEEKEND 2019レポート @ゼップダイバーシティ東京 2019.9.14〜9.15

熱気渦巻く壮烈なパフォーマンス! METAL WEEKEND 2019レポート @ゼップダイバーシティ東京 2019.9.14〜9.15

去る’19年9月、ゼップダイバーシティ東京で2日間にわたって開催された“METAL WEEKEND 2019”は、ヴァラエティ豊かな真性ヘヴィ・メタル・アクトが集ったことで、熱気渦巻く壮烈なパフォーマンスが連発。大いにオーディエンスを沸かせて大成功を収めた。

開場から開演までの時間には、オープニング・アクトとして、Mary’s BloodのSAKI(g)らによって結成されたオール女性メンバーの新バンド、NEMOPHILAが登場。アイアン・メイデンの「The Trooper」のカヴァーなどをパワー全開でプレイし、会場をしっかり温めていたことを記しておこう。

BEAST IN BLACK/バンドとファンの理想的な一体感

ヤニス・パパドプロス

フィンランド発の多国籍メタラーが今年2度目の来日! 5月来日の際、ヴォーカルのヤニス・パパドプロスが「日本が気に入ったから、また戻って来るよ!」と言っていたが、まさか4ヵ月足らずで本当に戻って来てくれるとは…!!

イベント初日にトップ・バッターを務め、翌日は2番手としての登場となった彼等は、とにかく盛り上げ上手。共に歌いたくなるパワフル&キャッチーな佳曲を多数そろえていること、メンバー全員のスキルが並みでないことは言わずもがなで、さらに、各メンバーがパフォーマー、ある意味エンターテイナーとしても抜きん出ている点も見逃せない。中でも、パワフルにも、エモーショナルにも、ジェントルにも歌えるヤニスは、激しいアクションでも観客を魅了。ファンの熱狂的な反応に感激し、思わず涙ぐんでしまう…というナイーヴさも、多くのファンの心に突き刺さったろう。

一方、鉄壁のギター・チーム:アントン・カバネン&カスペリ・ヘイッキネンも、ただギターを掻き鳴らすだけでなく、常に“魅せる”プレイを心掛けている。いずれも強力なシュレッダーで、そのテクだけでも充分に圧倒させられるが、両者とも、表情豊かに文字通り“顔で”弾いてみせたり、絵になるポーズで大仰にピッキングしてみせたりと、様々なアクセントを加味するところがなかなか心憎い。また、時にヤニス&ベースのマテ・モルナールも交えての、ジューダス・プリーストやアクセプトを彷彿とさせるフォーメーション・プレイも、いつだってオーディエンスを熱くさせ、ヘッドバンギングとフィストバンギングを誘発させまくりだ。

アントン・カバネン

カスペリ・ヘイッキネン

セットリストは、「Cry Out For A Hero」でスタートし、「Die By The Blade」と「Sweet True Lies」を挟み、「Blind And Frozen」〜「End Of The World」でシメるという点だけは2日間とも同じだったが、他の4曲は日替わり。2日目に披露されたバラード「Ghost In The Rain」での、アントンの泣きのリードは心に沁み入るようで、実に感動的だった。また、やはり2日目のみの「Crazy, Mad, Insane」では、ハイテク(?)サングラス&ロボット・ダンス風フォーメーションといったお馴染みの演出が飛び出し──そんなお茶目な面でも、きっと多くの新しいファンを掴んだのでは?

以前、アントンは「日本のオーディエンスはリフやリックまで歌ってくれるから最高」と言っていたが、今回も「Sweet True Lies」などで、イントロから「オオオオ〜♪」と大合唱になり、その様子にメンバー全員が満面の笑顔を浮かべていた。バンドとファンの理想的な一体感──それが自然と生まれるのが、ビースト・イン・ブラック最大の強みと言えよう!(★)

アントン&カスペリ

ビースト・イン・ブラック

ビースト・イン・ブラック セットリスト

2019.9.14 1日目
1. Intro(SE)〜Cry Out For A Hero
2. Unlimited Sin
3. Beast In Black
4. Born Again
5. Die By The Blade
6. Sweet True Lies
7. From Hell With Love
8. Blind And Frozen
9. End Of The World
10. Outro:No Easy Way Out(Robert Tepper/SE)

2019.9.15 2日目
1. Intro(SE)〜Cry Out For A Hero
2. Eternal Fire
3. No Surrender
4. Sweet True Lies
5. Crazy, Mad, Insane
6. Die By The Blade
7. Ghost In The Rain
8. Blind And Frozen
9. End Of The World
10. Outro:No Easy Way Out(Robert Tepper/SE)

METAL SOULS/メタルの名曲をスペシャル・カヴァー

METAL SOULS

初日に2番手、2日目にトップバッターを務めたのが、若井 望(g)とロニー・ロメロ(vo)によるプロジクト: METAL SOULS。若井は自身のDESTINIAですでにロニーを起用してアルバム『METAL SOULS』(’18年)の制作とライヴを行なっているが、今回はその2人によるメタルの名曲をカヴァーする特別なプログラムが目玉だ。リズム隊はロニーが以前に在籍したローズ・オブ・ブラックのハヴィ・ガルシア(b)とアンディ・C(dr)であり、旧編成のローズ・オブ・ブラックに若井が加わったというようなラインナップになっていた。

まずはDESTINIAのオリジナル・ナンバー2曲から始まり、その後はジャーニー、ジョン・サイクス、クワイエット・ライオットといったナンバーを立て続けにプレイ。HR/HMファンにお馴染みの曲ばかりだけに、観客が歌いまくりな会場の盛り上がりぶりはメタル・ディスコさながらだ。

若井は序盤に機材トラブルで泣かされた一幕もあったが、あくまでメロディックなギター・プレイで勝負。彼とは勝手知ったるといった関係であろうロニーの歌声は 原曲のヴォーカル・スタイルが多種多様なものだったにもかかわらず、独特なアクの強さと色気で楽曲の魅力を100%引き出していた。ロニーが「ボン・ジョヴィの曲(Born To Be My Baby)をやる」と宣言するとファン(約1名)から拒否されてレインボーを求められながらも(予定通り)ボン・ジョヴィ曲を披露するという、朗らかなやり取りもあったりと、ムードは終止フレンドリーだ。

若井 望

ロニー・ロメロ

2日目はカヴァー曲が完全入れ替えされ、クイーンのライヴ時のアレンジを踏襲した「We Will Rock You」ファスト・ヴァージョンで幕開け。ヨーロッパ、ホワイトスネイク、MSGと、どちらかと言えばブリティッシュ/ヨーロピアンなこの日の選曲の方が、若井とロニーのカラーにはよりマッチしていたように思える。特にホワイトスネイクの「Fool For Your Loving」ではオリジナル・ヴァージョンとリメイク・ヴァージョンそれぞれのギター・ソロをミックスしたようなアレンジが光った。

さらにゲイリー・ムーアの「Over The Hills And Far Away」からは麗しのヴァイオリニストAyasaが参加し、壮大なメロディーをさらに強調。前日とは真逆のオーラスに配された「Metal Souls」で盛大なエンディングを迎えたのだった。(●)

AYASA&若井 望

METAL SOULS

METAL SOULS セットリスト

2019.9.14 1日目
1. SE〜Metal Souls(DESTINIA)
2. Rain(DESTINIA)
3. Separate Ways(JOURNEY)
4. Please Don’t Leave Me(John Sykes/PRETTY MAIDS)
5. Bang Your Head(QUIET RIOT)
6. Born To Be My Baby(BON JOVI)
7. Stand Up And Shout(DIO)

2019. 9.15 2日目
1. SE〜We Will Rock You(Fast Version/QUEEN)
2. The Final Countdown(EUROPE)
3. Fool For Your Loving(WHITESNAKE)
4. Looking For Love(MSG)
5. Over The Hills And Far Away(Gary Moore)
6. Judgement Day(DESTINIA)
7. Metal Souls(DESTINIA)

MYRATH/シアトリカルな演出で魅了した中近東メタル

ミラス

北アフリカはチュニジアが生んだ奇跡のグループ:ミラスはこれが3度目の来日。今回の“METAL WEEKEND”では、両日ともに3番手──つまりトリ前を任され、大いに喝采を浴びていた。

民俗楽器をふんだんに使い(ライヴでは基本的に同期音源で再現)、エスニック&エキゾティックな魅力が満載されたその楽曲は──実のところ、意外にもキャッチー。民族テイストが濃いからといっても、妙な取っ付き難さはなく、聴けば自然と体が動き出す。きっと、メタル・サウンドと中近東風味が「こんなにも合うのか…!」と、初めて観てすぐにファンになった…という人が続出したのではないだろうか。

ベリーダンサーを起用してのシアトリカルな演出も、もはや恒例。前2回の来日公演では、ダンサーを現地調達していたが(つまり、日本人ダンサー)、今回は母国での公演で起用していたジョージア人ダンサーが日本にも帯同し、曲毎に衣装(往年のジュディ・オングもかくや…というヒラヒラ系中心)と小道具(燭台やLEDライト付きのヴェールなど)を替えてのダイナミックな舞いで、ミラスならではのアラビックな独自音世界に官能的な彩りを加えていた。

ザヘル&ダンサー

バンド・アンサンブルは、これまで通り安定感抜群。10:15製のカスタム・モデルを駆るマレク・ベン・アルビアの正確かつ丁寧なプレイも、随所でギター・フリークの目を釘付けにしていたろう。唯一残念だったのは、リード・サウンドが今ひとつガツンと響いてこず、時々バッキングに呑み込まれそうになっていたこと。リフやリズムのヘヴィなサウンドは申し分なかっただけに、せっかくの流麗なソロが前へ出てこないのは、何とも勿体なかった…。ただ、いつもはあまり動かないマレクが、下手の定位置から上手側へスッと移動したり、ステージ中央でリードを執ったり…と、これまでで最もアクティヴだった点は特筆しておきたい。

マレク・ベン・アルビア

そして、「ニホン! 最高デスカ?!」 「アナタ達ガ大好キデス!!」…などなど、日本語MCにますます磨きが掛かっていたフロントマン:ザヘル・ゾルガティは、今年発表の最新作『SHEHILI』収録の「Monster In My Closet」を、日本語ヴァージョンで見事に熱唱(かなりカンペに頼っていたが…)。その心意気にはみんなしみじみ感じ入ったことだろう。メタル・ファンにとっては、今も“未知の国”であるチュニジア。そんなイメージも、いずれミラスによって払拭される日がくるに違いない…!(★)

ザヘル・ゾルガティ

マレク・ベン・アルビア

ミラス セットリスト

2019. 9.14 1日目
1. ASL(SE)
2. Born To Survive
3. You’ve Lost Yourself
4. Dance
5. Darkness Arise
6. Lili Twil(Les Freres Megri)
7. Wicked Dice
8. Monster In My Closet
9. No Holding Back
10. Beyond The Stars
11. Believer

2019. 9.15 2日目
1. ASL(SE)
2. Born To Survive
3. You’ve Lost Yourself
4. Dance
5. Mersal
6. Wicked Dice
7. The Unburnt
8. No Holding Back
9. Believer
10. Monster In My Closet
11. B eyond The Stars

LOUDNESS/大音量のアンサンブルと切れ味鋭いギター・サウンド

ラウドネス

“METAL WEEKEND”は元々、’18年9月にラウドネスがゼップダイバーシティ東京で行なった一連のライヴに付けられたシリーズ名であり、言うなれば自分の庭のようなものか。初日のヘッドライナーとして登場したのはもちろん彼ら。最初からラウドネスがお目当ての観客も多かったようで、フロアの密度は一気にアップしてすし詰め状態だ。

ライヴは「Crazy Nights」からスタートし、当然のごとくあの名リフによって場内はこの日最大級の大歓声が渦巻いたのだが…とにかく音がデカい! バンド名通りに飛び抜けた大音量であることは最初から分かっていたものの、それまでの出演バンドとは格段に違う爆音に思わずのけぞってしまった。しかしながらバンド全体の音が団子状態になってしまうことはなく、高崎 晃のギター・サウンドが切れ味鋭く迫って来るというバランスの良さは相変わらずだ。

高崎 晃

二井原 実

“サポートという立場である西田竜一の参加から1年以上が経過し、アンサンブルは極めてタイト。高崎もその土台の上で高難度のソロ・フレーズを華麗に決めながら、基本的な定位置であるステージ上手から自由に動いて観客を次々に煽り、轟音と技巧を両立させながら余裕すら感じさせるギター捌きを見せつけてくれる。ハイテク・ギタリストが多数顔を連ねる今回のイベント中、やはり高崎の貫禄は図抜けていたと言わざるを得ないだろう。

「Soul On Fire」「I’m Still Alive」という最新作からのアップ・テンポ2連発と、初期のクラシック「In The Mirror」などを挟み、久々にプレイされた第3期ラウドネスの「Black Widow」や、「So Lonely」などの’80年代キャッチー路線が混在するというセットリストは、全11曲の演目の中で可能な限り曲のスタイルをバラけさせたという印象だ。

最後は「Crazy Doctor」と「S.D.I.」の連打という必殺コンビネーションが繰り出され、アンコールなしであっという間に終わってしまった。実際に演奏時間は意外にも1時間に満たず、長時間のイベントの最後としては十二分過ぎるほどの充実度だっただろう。ちなみにライヴの途中にはビースト・イン・ブラックのメンバーがフロアで観ていたりもしたのだが、海外勢にも日本にラウドネスありという事実を改めて印象づけたに違いない。(●)

西田竜一

山下昌良

ラウドネス セットリスト 2019.9.14

1. 8118(SE)〜Crazy Nights
2. Intro(SE)〜Heavy Chains
3. Soul On Fire
4. I’m Still Alive
5. In The Mirror
6. So Lonely
7. Jam〜Black Widow
8. This Lonely Heart
9. Crazy Doctor
10. S.D.I.

HAMMERFALL/大歓声で迎えられた伝統的HR/HMの守護者

ハンマーフォール

イベント2日目のヘッドライナーを務めたのは、スウェーデンが生んだ伝統的HR/HMの守護者:ハンマーフォール!! 彼等が日本でプレイするのは、’15年の“LOUD PARK”以来約4年振りだが、その前となると、さらに10年を遡って’05年だったりする。よって、どれぐらいの集客が見込めるのか、正直ちょっと予測がつかなかった。頻繁に来日していないからこそ、渇望感を覚えたファンが大挙して押し寄せる可能性もあるものの、しばらく来日のペースが鈍っていたことでファン離れが進み、寂しい結果になってしまうこともあり得なくはない。果たして──結果は大盛況! みんな彼等が戻って来るのを待ち望んでいたのだ。実際、観客の反応はのっけから凄まじかった。まず、この夏に出たばかりの最新作『DOMINION』からの2連打で幕を開けると、いきなり場内のテンションは急上昇。以降、新旧の人気曲・代表曲が次々と繰り出される度に、会場を揺るがさんばかりの大歓声が沸き起こり、多くの楽曲で大合唱となっていたのも言わずもがなだ。驚いたのは、日本のファンの間で最も人気が高いと思われる初期2作からプレイされたのが、2nd『LEGACY OF KINGS』(’98年)の「Let The Hammer Fall」のみで、デビュー作『GLORY TO THE BRAVE』(’97年)からは1曲もピック・アップされなかったこと。それでも、オーディエンスのノリが最後まで全く途切れなかったのは、本当に素晴らしいとしか言いようがない。

ヨアキム&オスカー

ステージ上のメンバー達も、ひたすら熱狂しまくる観客の姿に大興奮。必然的にバンドの演奏はどんどん熱を帯び、そのパワーとエネルギーを感じ取って、観客の熱狂もさらに昂っていって…と、抜群の相乗効果がそこには生まれていたのである。

そんな中、ギター・フリークの視線はもっぱら、下手に陣取るポンタス・ノルグレンに注がれていた。実は、ネオ・クラシカルなプレイも得意とする万能シュレッダーである彼は、ハンマーフォールではあまり派手に弾きまくることはないが、飽くまで楽曲至上のスタイルを貫きながらも、「弾く時は弾く!」との姿勢で臨んでいるようだ。殊に、『(R)EVOLUTION』(’14年)からの「Hector’s Hymn」と、『DOMINION』からの先行シングル「(We Make)Sweden Rock」のメロディアスなソロ・ワークは共に絶品で、バンドの首魁:オスカー・ドロニャックとのツイン・リードでも、大いにオーディエンスを沸かせていた。

ポンタス・ノルグレン

オスカー・ドロニャック

そうして──’02年の第4作『CRIMSON THUNDER』からの必殺曲「Hearts On Fire」で大団円を迎えたショウは、全12曲/約65分で幕を閉じ、何故かアンコールはナシ。よって、「短過ぎる!!」と思ったファンも少なくなかったと思うが、シンガーのヨアキム・カンスは最後に「HAMMERFALL has to come back to Japan very very soon!」と宣言してくれた。その言葉を信じ、近々に実現するであろう久々の単独再来日に今から備えようではないか…!! (★)

ハンマーフォール

ハンマーフォール セットリスト 2019.9.15

1. SE〜Never Forgive, Never Forget
2. One Against The World
3. Renegade
4. Riders Of The Storm
5. Any Means Necessary
6. Blood Bound
7. Hector’s Hymn
8. Last Man Standing
9. Let The Hammer Fall
10. Hammer High
11. (We Make)Sweden Rock
12. Hearts On Fire
13. Outro:Dreams Come True(SE)