不世出のギタリストに惹き付けられた様々な個性-藤岡幹大- 追悼LIVE「My Little God」at 新宿ReNY 2020.1.19

不世出のギタリストに惹き付けられた様々な個性-藤岡幹大- 追悼LIVE「My Little God」at 新宿ReNY 2020.1.19

藤岡幹大の39歳の誕生日を祝うライヴ・イベント、“-藤岡幹大-追悼LIVE「My Little God」at 新宿ReNY”が、去る2020年1月19日に開催された。“My Little God”というタイトルを冠したライヴは(彼が急逝した年である)2018年の4月23日に初めて行なわれており、今回で4度目になるだろうか。藤岡という不世出のギタリストの記憶を風化させまいと、多くのミュージシャン仲間たちとファンが集い続ける…、この日の新宿ReNYは実に美しい空間であった。

出演バンドはJupiter、Gacharic Spin、C4、大村バンドの4組で、加えてスペシャル・ゲストとしてSYU(GALNERYUS)の参加も告知されていた。藤岡にゆかりのあるメンツとはいえ、音楽的にはかなり多岐に渡っている…というか分かりやすく言えばバラけている(メタル寄りとは言えるか)。さらに幕間には藤岡幹大 of TRICK BOXによる唯一のアルバム『TRICK DISC』の、ジャンル分けし難い特殊フュージョンが流れ続ける。様々な個性を楽しめるのもこういったイベントならではで、あらゆる音楽を愛した藤岡に似つかわしいと言えば似つかわしい。中でもヤング・ギター的にはやはり、各バンドで全く異なるサウンドを響かせるギタリストたちに耳を奪われた1日であった。ということで、ここではギタリストを中心に各々のステージ模様をレポートしていこう。

まず登場したJupiterは、藤岡の地元(兵庫県淡路島洲本市)で開催された昨年の“My Little God”に続き、2回目の参加だ。彼らがオープニングを任されたからには、じわじわと耳を慣らすような緩やかな始まり方になるわけもなく、のっけからパワフルなスピード・メタルがガンガンに繰り出される。ありとあらゆる場面で息の合ったツイン・ハーモニーを聴かせるのは、ドレス姿で華麗に旋律を奏でるHIZAKI(g)と、美しい御御足でステージを舞うTERU(g)の2人。聴く者の耳と目の両方から、分かりやすく勇ましさを伝えてくれる様は、実に痛快極まりない。

Jupiter

Jupiter

Jupiter

2番手を担ったGacharic Spinもハイ・テンションぶりでは負けておらず、カラフルな6人のメンバーがステージに登場すると華やかさが一気に増す。特に弦楽器隊は文字通り(LEDで)光っており、TOMO-ZO(g)のギターはボディー外周が、はな(vo, g)のギターはフィンガーボードが、F チョッパー KOGA(b)のベースは上から下までウネるように、それぞれ青く輝くのが超フラッシー。中でもTOMO-ZOは忙しいフレーズを笑顔で弾きながら常に跳ね回っており、動きも派手なのが実にロックだ。また中盤では彼女らのステージに大村孝佳(g)が参加し、3月11日リリースのGacharic Spinのニュー・アルバム『Gold Dash』から、彼が提供した楽曲「起死回生 Forever」を7人で披露するという嬉しいサプライズもあった。

Gacharic Spin

Gacharic Spin

Gacharic Spin: TOMO-ZO

その大村孝佳はC4と自身の率いる大村バンドで登場し、つまりイベント後半(の手前から)は出ずっぱり。藤岡の教え子であり同僚であり相方でもあった彼が、この“My Little God”の核になっているのは誰もが認めるところで、観客も確実に大村のギター・プレイに最も期待を寄せている。彼がこの日手にしていたのは当然、バーガンディ・カラーのESP藤岡幹大シグネチュア・モデル(正確に言えば6弦の“Snapper Fujioka Custom”と7弦の“Snapper-7 Fujioka Custom”)。さらに背後にはこれまた藤岡が使用していた、マーシャルの2×12″スピーカー・キャビネット“1936”がある。そしてご存知のとおり、藤岡が使っていたケンパー“Profiling Amplifier”のリグ・データは、もともと大村がプロファイルして作った音が基本になっていた。つまりこの日ステージから聴こえた大村のギター・サウンドは、藤岡本人とほぼ同じ機材から作られており、そこに気付いたファンは感慨深さを覚えたに違いない。

もちろん弾き手が異なれば、出て来る音楽も全く異なる。大村のサウンドには常に鋭い輪郭があり、C4ではTOKI(vo)の熱く男っぽい歌声に寄り添いながらシャープに後押しし、大村バンドでは久世敦史(vo)の伸びやかなハイトーンに対して競り合うように切り込む。何を使おうが最終的に自身の色で染めてしまう辺りが流石で、この辺りは藤岡に通じるとも言えるか。

C4

C4

大村バンド

大村バンド:大村孝佳

ステージに呼び込まれたSYUが白い7弦ギターを携えて登場したのは、大村バンドの終盤のこと。久世がステージ袖に引っ込もうとした時、何が演奏されるか察した観客から大きな歓声が上がる。藤岡と大村の絆を具現化した曲として既にお馴染みの、「The Hill Of Wisteria」だ。ちなみに藤岡もSYUも大村も、東京で本格的にアーティスト活動を開始し始めたのはほぼ同じ2000年代の半ば頃で、ほぼ同期と言ってもいい世代。彼らが同じ曲でギターを奏で合う姿を見ると、それだけでグッと来てしまう…という人は多かったのではなかろうか(かく言う筆者もその1人で、テクニカルに弾きまくる彼らの写真を撮りながらちょっと変な声を出してしまった)。

大村バンド:SYU

大村バンド:SYU&大村

そんな変則トリプル・ギターによる熱演の後は、SYUと大村のツインによる「Never Surrender」でもう1つのピークを迎え、本編は終了。だがもちろんこの後にさらなるクライマックスが控えていることを、会場の誰もが知っている。その日の出演者のほぼすべてが呼び込まれ、今度はHIZAKI、SYU、大村のトリプル・ギターでメタリカの「Battery」を炸裂。TOKIと久世のツイン・ヴォーカルも煽りに煽り、この日一番のヘドバンを会場中で誘発させたのだった。

アンコール

川崎のクラブチッタにて行なわれた初回の“My Little God”を観た時にも感じたことだが…、これだけ多彩なミュージシャンたちをつなげてしまう藤岡幹大というギタリストは、我々が知る以上に幅広い音楽性を持ち、そして強い求心力を持っていたのだろう。そう思うとともに、こんな豪華な誕生日を祝ってもらえる彼に対して、純粋に人として羨ましさを覚えてしまった(こんな言い方をしても不謹慎ではないはず)。ちなみに個人的なリクエストをすると、そろそろ出演バンドそれぞれが藤岡の持ち曲をカヴァーするようなライヴも観たいので、どうか次の開催の際はご検討いただきたい。

-藤岡幹大- 追悼LIVE LIVE「My Little God」at 新宿ReNY 2020.1.19 セットリスト

Jupiter
1. Drastic Night
2. Bring me out
3. No cry no more
4. SHOW MUST GO ON
5. Theory of Evolution

Gacharic Spin
1. LosT AngeL
2. 赤裸ライアー
3. 起死回生 Forever
4. ハンティングサマー
5. BROKEN LOVER

C4
1. PASSIVE
2. DETNIX
3. UNITE
4. Velsus
5. forgetis sky
6. Pylebanker
7. MARVELY

大村バンド
1. GOODBYE LOST IN STATIC
2. Now I Understand
3. Under One Flag
4. Soldiers Of The Fire
5. Distant Thunder
6. Every Time
7. The Hill of Wisteria
8. Never Surrender

アンコール
1. Battery(METALLICA)

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