ヤング・ギター&文化放送の配信ギター・イベント“Shred RACERS ONLINE”をレポート!

ヤング・ギター&文化放送の配信ギター・イベント“Shred RACERS ONLINE”をレポート!

去る8月29日、ヤング・ギター&文化放送主催の配信ライヴ・イベント“Shred RACERS ONLINE”が行なわれた。その名の通り“シュレッド・ギター”をコンセプトに据え、優れた“速弾き”の使い手である日本人ロック・ギタリストの演奏を国内外に向けて発信するのが本イベントの目的だ。“F1(フレットワン)”と題された第1回目のアーティストとして招集されたのは、300年後の未来からやってきたサイボーグ・ギタリスト(!)のEdiee Ironbunny(IRONBUNNY)、ポップスからメタルまで幅広く弾きこなす人気ギター・ガールのYUI(Cyntia)、Seiji&Yukiという強力なギター・チームを擁するインストゥルメンタル・バンド:D_Driveの計3組。また、ゲスト・ヴォーカルとしてNEMOPHILAのmayuも参戦した。

配信された映像ではステージ全体の俯瞰や各パートの演奏者を個別にとらえた視点など、およそ5〜6種類のアングルが随時切り替わっていたが、ギタリストの手元に寄ったショットが頻繁に使われていたのは“速弾き”の祭典ならではだろう。無観客ライヴゆえにオーディエンスの歓声などは皆無なので、一抹の寂しさを感じないでもなかったが、一方でリアルタイムの演奏をクリアなトーンで一音一音じっくり堪能できる点は配信ライヴの大きなメリットである。また、生のライヴの醍醐味であろう一発勝負だからこそ漂うスリリングさは、たとえ会場にいなくとも十分に体感することができた。イベント全体を通して、そういった感想を抱いた次第だ。そんな“Shred RACERS ONLINE”において各アーティストがどんなプレイを見せてくれたのか、登場順に振り返ってみよう。

Ediee Ironbunny / IRONBUNNY

Ediee Ironbunny / IRONBUNNY

先陣を切ってステージに立ったEdiee Ironbunnyは、メタリック・ブルーのフィニッシュが鮮やかなコンバット・ギターズの新しい7弦モデルを携えて全4曲を演奏。前半2曲には、自身のオリジナル・ナンバーから「Three Shots Thruster」と“Shred RACERS ONLINE”のテーマ曲「Highside Racing」がセレクトされていた。どちらも彼の奏法的な引き出しの多さが光る弾きまくりのインスト・ナンバーとなっており、一切無駄のない正確無比なフィンガリングによるテクニカル・フレーズがひっきりなしに繰り出され、観ているこちらは思わず息をのむ。また、今さら強調するまでもないが、甲冑でカスタマイズされたロボコップみたいなギタリストが超絶テクを駆使して弾きまくる姿には、画面越しでも絶大なインパクトがあった。まるで少年期の創造力溢れる空想の世界に叩き込まれたようなショックを与える彼のルックスとパフォーマンスは、初めてEdieeのショウを体験した視聴者を圧倒したに違いない。

後半ではmayuを迎えて、アニメ番組『ドラゴンボール超』の主題歌「限界突破×サバイバー」(氷川きよし)と初期MR.BIGの代表曲「Addicted To That Rush」をカヴァー。2人が共演するのは今回が初めてのことだが、Edieeのハードなギター・サウンドとワイルドなエネルギーに満ちたmayuのヴォーカルは実に相性がよく、「もっと彼らのアンサンブルを観てみたい!」と思わせる求心力の強いコラボレーションだった。

mayu / NEMOPHILA

YUI / Cyntia

YUI / Cyntia

二番手を務めたYUIは、本格的なライヴは実に2年ぶりだったという。それゆえか、1曲目の「閃光ストリングス」の出だしこそ表情に硬さが感じられたものの、ショウが進むにつれて徐々にほぐれていき、同曲のソロ・パートでは爽快なメロディーを奏でながらとびきりの笑顔をのぞかせた。1曲目を歌ったmayuに代わり、2曲目のマイケル・シェンカー・グループのカヴァー「Assault Attack」では、“Shred RACERS ONLINE”のMCを務める声優の鷲見友美ジェナがヴォーカルを担当。続いて3曲目には、YUIのソロ曲でギター・バラードの「My Grandma」が演奏された。彼女のステージにおいて印象的だったのは、この曲を筆頭にゆったりと奏でる泣きのギターを随所で聴かせてくれた点だ。“速弾き”をフィーチュアしたイベントではあるが、そういった歌心重視のスローなプレイが合間に挟まれたことで(他のアーティストも含む)シュレッドしているパートがより際立ち、加えてショウ全体が平坦に感じられることを防ぐ効果もあったように思う。その意味で、ヴィブラートやチョーキングをふんだんに使って哀感たっぷりにメロディーを奏でた彼女のパフォーマンスは重要な役割を果たしたと言えよう。

鷲見友美ジェナ

その一方で、「閃光ストリングス」における鮮烈なタッピングや高速ピッキング、4曲目に披露された「It’s Shine Days」の躍動感溢れるリフ・ワークなど、アグレッシヴな側面もしっかりと打ち出してくれた。彼女のライヴを心待ちにしていたファンにとって、その多彩な魅力が遺憾なく発揮された約20分間のステージは、至福の一時となったことだろう。

Seiji & Yuki / D_Drive

Seiji / D_Drive
YUKI D_Drive

続く3組目のD_Driveは、自身のアルバムやシングルから5曲をセレクト。全編オリジナル・ナンバーで勝負したところに、世界デビューを果たしたインストゥルメンタル・バンドの矜持を感じずにはいられない。そんな彼らの音楽における要が、SeijiとYukiの一糸乱れぬツイン・リード・ギターであることは論を俟たないだろう。具体的なパートを挙げ出すと枚挙に暇がないが、わけても「Attraction 4D」や「GEKIRIN -逆鱗-」におけるスウィープやタッピングなど高度なテクニックを含んだ長尺のハモリ・パートは、2人の技量の凄まじさとチームとしての結束の堅牢さを雄弁に語っていた。

また彼らは、卓越した演奏で聴覚に訴えるだけでなく、視覚的にも楽しませることを疎かにしていない。ジューダス・プリーストよろしくメンバー全員がフォーメーションを組み、リズムに合わせて上半身を激しく揺さぶりながらリフを奏でるなど、無観客ではあってもネット回線を通して視聴しているオーディエンスが一体感を覚えることができる、全力のパフォーマンスを見せてくれた。そんなD_Driveが最後に披露したのは、ダークでグルーヴィな疾走チューン「1,000,000 hp」。うねるようなリフの合間にクロマティック・スケールをなぞる高速ピッキング・フレーズやお約束のメロディアスなハーモニー・パートが挟み込まれる同曲には、リズム隊が混ざってのソロ回しもあり、最後まで緊張感の途切れないパワフルな演奏で魅了した。

そしてフィナーレでは、3組のアーティストが勢揃いしてのスペシャル・セッションが繰り広げられた。mayuがヴォーカルを担当し、ホワイトスネイクの「Bad Boys」とディープ・パープルの「Burn」という誰もが認める名曲をカヴァー(後者には鷲見も参加)。4本のギターが絡み合うド迫力のアンサンブルでラストを飾り、記念すべき“Shred RACERS ONLINE”の初回は幕を下ろしたのである。

この日発表されたように、本イベントの2回目の開催が9月26日に決定した。第1回に引き続きEdiee Ironbunnyが出演する他、Li-sa-XとSAKI(Mary’s Blood、NEMOPHILA)という国内メタル・シーンの最前線で活躍する女性ギタリスト2名が登場。シュレッド・ギターをこよなく愛し、ロック・ミュージックを燃料にして日々を過ごしている音楽ファンの皆さんには、ぜひとも次回の“Shred RACERS ONLINE”を視聴して“速弾き”エネルギーをチャージしてもらいたい!

INFO
この「Shred RACERS ONLINE F1」ダイジェスト版のアーカイブ配信が決定。アーカイブ視聴可能期間は、9月18日(金)24時から9月21日(月・祝)23時59分まで。現在チケット発売中(¥2,000/USD20.00)。

Shred RACERS ONLINE F1 2020.8.29 セットリスト

Ediee Ironbunny

1. Three Shots Thruster
2. Highside Racing
3. 限界突破×サバイバー(氷川きよし)
4. Addicted To That Rush(MR.BIG)

YUI

1. 閃光ストリングス(Cyntia)
2. Assault Attack(THE MICHAEL SCHENKER GROUP)
3. My Grandma
4. It’s Shine Days

D_Drive

1. The Last Revenge
2. Attraction 4D
3. Thumbs Up
4. GEKIRIN -逆鱗-
5. 1,000,000 hp

Session

1. Bad Boys(WHITESNAKE)
2. Burn(DEEP PURPLE)