聴く者を飽きさせないセット作り
6月に待望の1stソロ・アルバム『PLUVIA』をリリースしたSAKIが、本作を引っ提げてのメジャー・ソロ・デビュー・ライヴを全国5箇所で行ない、去る8月11日に東京・新宿ReNYにてツアー・ファイナルを迎えた。当日は関東に台風15号が接近中とのことで、会場周辺の天候や交通機関の動向も懸念されたが、結論から言えば公演に支障をきたすことはなく、満員に膨れ上がった観客を前に、約2時間超にわたって濃密なギター・エンターテイメントが繰り広げられた。
アルバム冒頭を飾る「PLUVIA」のイントロ・アルペジオ(SE)に導かれてメンバーがステージに登場すると、SAKIによる同曲のしっとりとしたメロディ弾きからショウはスタート。勢い一発のオープニングと違い、1音1音に集中力を求められるこの種の演奏では、精神面を含めた事前の入念な準備が必要になるが、ステージを重ねてきたことによる自信の表れか、そのプレイは実に堂に入っている。続けて演奏された「Dezerted Zygos」では、6/8拍子主体のリズムに軽快なフィルを入れまくる川口千里(dr)はもちろんのこと、Mary’s Blood以来のライヴ共演となるYASHIRO(g)、今回のツアー皆勤賞となるちい(b)といったバンド・メンバーの巧手振りも顕示され、ファイナルならではの特別編成(その他の公演は、主にドラムを元Janne Da Arcのshuji、サイド・ギターをGacharic Spinのはなが務めた)でありながら、そのアンサンブルには一分の隙もない。この時点で、この日のステージが素晴らしいものになるであろうことを確信したのは、筆者だけではなかったはずだ。

その後、SAKIによる挨拶代わりのMCに続いて3曲目に演奏されたのは「HORIZON」。この曲では早くもメイン・メロディのパートで観客の唱和が発生。直前のMCでは「インストなので盛り上がりづらいのは分かってる」と自虐的に語っていたSAKIだが、早速自らのステージが単なるギター・マニア向けの余興ではないことを証明した格好だ。続く「TEMPEST」では激しいビートに合わせてヘッドバンギングを誘発した一方、「THE EMPRESS」ではスティーヴ・ヴァイ彷彿のメロウなトーンで奏でられるオリエンタルなフレージングに観客は陶酔。この辺りのメリハリの効いたセット作りも、聴く者を飽きさせない工夫が凝らされている。
さらにアルバムから「翠雨」、「Flores a Flores」(途中ちいのベース・ソロとYASHIROのギター・ソロをフィーチュア)といったテイストの異なるナンバーが披露され、ショウも中盤へ。ここでステージに呼び込まれたのは、Like-en-AngelでSAKIと活動を共にするRENOだ。当日は某バンドのライヴに出演するため20時までに有明へ移動しなければならないというタイトなスケジュールにありながら、自身の「JOURNEY」(2016年発表のシングル)、「From the sky」(2015年『UNIVERSE』収録)と映画『キル・ビル』のテーマ曲「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」(布袋寅泰/2000年)でのセッション、さらには聖飢魔IIの「Fire After Fire」(1986年『THE END OF THE CENTURY』収録)カヴァー共演で、SAKIのソロ・ツアー・ファイナルに花を添えた。
飽くなき探究心が現れた、ギター・サウンドの秀逸さ

そして、ここからはライヴも後半戦。ファンの歌声を取り入れたダンサブル・ナンバー「M.D.D.」と異色のレトロ・ロック・チューン「Teeny Tiny Dance」で場内の空気を再びソロ・アーティスト=SAKIの世界観へ引き戻すと、冒頭からキラー製7弦“KG-Fascinator”をプレイしてきた彼女が手にしたのは、古くからのファンには馴染み深いスパークル・レッド・フィニッシュの6弦モデル。となれば、続いて演奏されるのはもちろん、Mary’s Bloodのナンバーだ。『Countdown to Evolution』(2014年)から「Wings」と「Marionettes」、『Bloody Palace』(2015年)から「Bite The Bullet」が披露され、多様かつプログレッシヴな質感も内包したソロ楽曲から一転、アグレッシヴなメタリック・サウンドで会場を熱くする。そして、そこから立て続けに、SAKIのメタル嗜好が表出した2021年発表のソロ・デビュー・シングル「BRIGHTNESS」をプレイ。メンバー一丸となっての熱演で本編は締め括られた。
この時点ですでに1時間50分超。しかし、まだこの日のステージは終わらない。観客の声援に応えて再び登壇したメンバーはまず「Redemption」を演奏。続くMCではファンへの感謝の気持ちと次作に対する意欲を述べると、そこからコードを一発鳴らしてプレイされたのは、現在のSAKIの活動の起点となった2024年発表のソロ曲「GERMINANS」だ。ここでは印象的なメロディをSAKIがギターと歌唱で力強く歌い上げ、会場一体となっての盛り上がりを見せる。そこに漲るエネルギーは小柄な女性ミュージシャン4人から放たれたものとは思えぬパワフルさで、この日の大団円に相応しいポジティヴな空気に満ちていた。
かくして全19曲、ソロ・アーティスト=SAKIのあらゆる魅力を体感できたこの日のライヴだったが、個人的にとりわけ印象に残ったのが、そのサウンドの秀逸さだ。本編ラスト4曲のメタリック・チューンではかつてのシュレッダー振りも顔を覗かせていたものの、全編を通して丁寧にメロディを紡ぐことに注力していたことも、一層その印象を強くさせた要因かもしれない。太く艶やかなサステインと、繊細なタッチをつぶさに表現する豊潤なアタックは、歌ものバンド時代のそれとは一線を隠す、“インスト系ギタリスト”へのドラスティックな変化を感じさせるものだった。聞けば、この日のメイン・システムはフラクタル・オーディオ・システムズのFXとボグナー“Ecstasy”アンプを軸にピート・コーニッシュ製バッファーを加えたものだったそうだが、比較的シンプルなセット・アップでありながら、高級バッファの導入でさらなる高みを目指さんとするその姿は、SAKIのサウンド・メイクに対する飽くなき探究心が現れた格好とも言える。そんな日々の研鑽の成果が至るところに垣間見えた今回のライヴ、ソロ・アーティスト=SAKIの本格始動を高らかに宣言する上で十分なインパクトを残したことは間違いないだろう。
SAKI SOLO MAJOR DEBUT TOUR 2026 “PLUVIA” 2026.8.11 @新宿ReNY セットリスト
1. PLUVIA
2. Dezerted Zygos
3. HORIZON
4. TEMPEST
5. THE EMPRESS
6. 翠雨
7. Flores a Flores
8. JOURNEY
9. From the sky
10. BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY
11. Fire After Fire
12. M.D.D.
13. Teeny Tiny Dance
14. Wings
15. Bite the Bullet
16. Marionettes
17. BRIGHTNESS
[encore]
18. Redemption
19. GERMINANS
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