アーティスト名 | TRIVIUM トリヴィアム |
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アルバム名 | IN WAVES イン・ウェイヴズ |
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前作『SHOGUN』(’08年)からほぼ3年──アメリカはフロリダ産の若武者メタラーによる、待望のニュー・アルバム。通算5作目にして、新ドラマー:ニック・アウグストを迎えての初作品でもある本作──まずは、これまでと全く雰囲気の異なるジャケット・デザインが目を惹くものの、実際のところ彼らは、結成から11年を経た今、また新たな領域へと踏み出したようだ。アルバムの全体像から伝わってくるのは、初期からの集大成的な要素と新たな試みの絶妙なるミクスチャー。しかも、その2つの側面は様々に組み合わされ、1曲の中で混在することも少なくない。
最大の変化はヴォーカル。今回コリィは全く歌わず、グロウルも含めてすべてマットがコナしたそうだが、クリーン・パートの多くがエモーショナルなキャッチーさをまとい、意外にもマットが傾倒するブラインド・ガーディアンからの影響が随所から窺えるのだ。一方、飽くまでヘヴィさを失わないリフ・ワークは、メタルコアのルーツに回帰したようなパターンから、メロデス風やスラッシュ風、新機軸とも言える鋭いカッティング・プレイまで、その多彩さこそ肝と言えよう。更には、バラードと言っていいナンバーまでもを収める中、必殺のツイン・リードがこれまでになく抑え気味だったのにはちょっと驚かされた。なお、本レビューの時点では、ボーナス・トラックのほとんど&限定盤に付くDVDは未着…。どっちも気になって──リリースが待ち遠しくて仕方ない!
(奥村裕司)
鉄壁と思われたリズム隊の片割れ、ドラムのトラヴィス・スミスが脱退し、暫くドラム・テクとして彼をフォローしていたニック・アウグストを新メンバーとして迎え入れての5th作品。思えば、前作『SHOGUN』は技巧的なギター・プレイ満載だった。もちろん、曲そのものの仕上がりを第一に考えた上でのテクニック的な凝りだったが、今回は更に「まず曲ありき」がアルバム全体を覆っている。それをモロに反映しているのが、バンドのイニシアチヴを握るマットのプレイ。プロデュース的見地から「今回はこれだ」と方向を絞ったということだろう。ペンタトニック大放出のスタイルは、これまでと明らかに異なる。コリィに関しては依然、簡単に言うと“速弾きやスウィープやスキッピングなどコンテンポラリーなアプローチ”が肝になっているが、ヴォーカルに新境地を見出した感のあるマットは、バンド内に於けるギタリストとしての役割も見直した、そんな印象がある。
曲の作りは、シンプルさを恐れない…という表現に集約される。豊富なリフの応酬、スピード感、変拍子、それらを駆使したスリリングな展開もあるが、基本的には「聴いて即、あの曲だと伝わるシンプルなリフ」が今回の新機軸だと言っていい。ご存知の通り、トリヴィアムはアルバム毎に変化を見せてきた。今回もまたその意味での彼ららしさを出したと言える。マットの言葉を借りれば、これは新たな「自分達への挑戦、ファンへの挑戦」だ。
(福田真己)