昨年12月末に、惜しくもこの世を去った元チルドレン・オブ・ボドム(以下COB)/ボドム・アフター・ミッドナイトのアレキシ・ライホ。ヤング・ギター2021年3月号では彼の偉業とロック・シーンへの貢献を讃える114ページの大特集を組み、亡きメタル・ギター・ヒーローを追悼している。そのコンテンツのひとつである“Hate Crew Deathcography”ではCOBが発表したスタジオ・アルバム全10枚について、ジェイソン・リチャードソン&Ryoji(GYZE)というアレキシのプレイに熱狂してきた2名のギタリストに、各作品の魅力を語ってもらった。以下では、スペースの都合で誌面に掲載することが叶わなかった1st『SOMETHING WILD』から5th『ARE YOU DEAD YET?』までの5作品に対するRyojiのコメントを公開。ぜひ本誌と併せてご覧いただきたい。
『SOMETHING WILD』
アレキシが18歳の時にリリースされたデビュー作で、「イングヴェイ・マルムスティーンがデス・メタルやっちゃいました!」みたいな感じがすごく好きでした。僕はリアルタイムで聴いていたわけではないですが、本作はネオ・クラシカルとデス・メタルが見事に融合していて、エクストリームな音楽がより幅広いリスナーにとって馴染みのあるものとなるきっかけになったのではないかと思います。モーツァルトの引用から始まる「Red Light In My Eyes, Pt 2」なんかはしびれますし、何より「Lake Bodom」のイントロは今聴いてもゾクゾクしてしまい、その魅力はまったく色褪せていません。
当時のライヴを観ると、ディセクションのジョン・ノトヴェイト(vo, g)からの影響を窺わせるような位置にマイクをセッティングしていますね。死神が描かれたジャケットのアートワークを見ても、ディセクションとイングヴェイが好きだったんだなと感じます。
『HATEBREEDER』
アルバム冒頭の「Warheart」は、モーツァルトを題材にした映画『アマデウス』に出てくるサリエルという人物のセリフのサンプリングから始まります。それが「ネオ・クラシカルをやるぞ!」という意思表示のように感じますね。 前作に比べて音が締まり、タイトになっている印象もあります。歴代のCOBのアルバムの中でも、ギターのサウンドメイクは1、2位を争うクオリティです。 それと、前作より良い意味でポップになったというか──正直1stは「なかなか一般受けしにくいかも?」という部分が多いと思っていたんですけど、この2ndアルバムからよりガツンと来るメロディーが増えた気がしますね。曲単位だと、「Bed Of Razors」は北欧バイキングっぽさがあって好きでした。
『FOLLOW THE REAPER』
COBのすべてのアルバムの中で、本作が1番好きです。最も聴いた彼らの作品でした。1曲目のタイトル・トラックからして最高。「Mask Of Sanity」のイントロのキラキラとした雰囲気も、「ザ・北欧メタル!」って感じ大好きです。また、本作は一番ギター・サウンドのハイ・レンジがきれいに出ているアルバムで、今も自分の曲をミックスする時に聴き返して参考にすることがあります。とにかく、僕の中でCOBといえばこの『FOLLOW THE REAPER』です。
『HATE CREW DEATHROLL』
一般的にCOBの代表作であり、傑作とされている4作目。確かに 1曲目の「Needled 24/7」のイントロは素晴らしく、たくさんのキッズをノックアウトしてしまったのでしょうね。個人的には「Triple Corpse Hammerblow」が1番好きで、この曲の分かりやすいスウィープは今でも手が覚えていますよ! ちなみに、前作までギターは右チャンネルと左チャンネルで別々のフレーズを弾いていたのに対し、本作から同じバッキングを重ねるスタイルになったからか、サウンド全体の印象が変わった気がしました。
──編註:この件について、当時のインタビューでアレキシは次のように話している。「俺は基本的にギターのダビングが嫌いでさ。COBではやったことがなかった。でも今回は敢えて挑戦してみた。もちろん、凄く速いリフは重ねなかったけど、メロディーのバックで弾くコードなんかは4回重ねたり…。結局バッキングの80%は重ねたかな。その効果はあったと思うよ。サウンドに深みが出るし、よりヘヴィになる」──
『ARE YOU DEAD YET?』
ギター・パートについて話をすると、ドロップ・チューニング(註:全弦1音下げ+6弦のみさらに1音下げ)が増えたからか重い印象が強くなりましたけど、メロディーの節々にはアレキシ節がしっかり入っていますね。 曲は「Trashed, Lost & Strungout」が好きでした。イントロに「スリップノット!?」みたいなフレーズもありますけど、本作で一番COBらしい曲だと思っています。
演奏は以前よりもラフになった印象ですが、それが楽曲にマッチしていて、これはこれで良いなと感じていました。