ファイアーウインド13年ぶりの熱狂来日公演、たどり着いたバンドの完成形!  2024.5.15 @渋谷クラブクアトロ

ファイアーウインド13年ぶりの熱狂来日公演、たどり着いたバンドの完成形!  2024.5.15 @渋谷クラブクアトロ

過去曲にも違和感なく溶け込む現ヴォーカリスト:ハービー・ランガンス

5月、ガス G.率いるヘヴィ・メタル・バンド:ファイアーウインドが久々となる単独来日公演を行なった。

2017年にこそガスのソロ単独来日公演もあったが、バンドとしての前回の公演は2011年にまで遡り、実に13年ぶりの来訪ということになる。今回東京公演の会場となった渋谷クラブクアトロは立錐の余地もないほど人で埋め尽くされ、3月にリリースされた新作『STAND UNITED』からのシングル曲「Salvation Day」で幕を開けたバンドは、「待ってました!!」と言わんばかりの大歓声でオーディエンスに迎えられた。2曲目もタイトル・トラック「Stand United」と新曲続きながら、サビの合唱に応じる声は決して少なくない。続いて「World On Fire」「Destination Forever」といった懐かしの楽曲が放たれ、場内はさらにヒート・アップしていく。

ファイアーウインド バンド演奏

前作『FIREWIND』(2020年)から加入したヴォーカリスト:ハービー・ランガンスを伴っての国内パフォーマンスは今回が初めてだ。持ち曲である新作での歌唱は当然ながら、彼の声はどの時代の過去曲にも違和感なく溶け込んでおり、「I Am The Anger」(2003年『BURNING EARTH』収録)や「Mercenary Man」(2008年『PREMONITION』収録)といった人気曲でもオーディエンスをガッチリ引き込み、パワフルな存在感で実に頼もしい歌いっぷりを見せてくれた。

ハービー・ランガンス
Herbie Langhans(vo)

弾きまくりつつ邪魔をしない、ガス G.のセンス

その歌メロに絡むように華を添えるのが、ガス G.のギター・ワークだ。冒頭2曲ですでにハイ・スピードのロング・ソロが展開され、スウィープやフル・ピッキングなど大技に次ぐ大技の連続で、早くもクライマックスを感じさせるプレイが続く。ほとんどの曲にギター的な見せ場が設けられているのはアルバムを聴けば分かる通りだが、それをライヴで矢継ぎ早にクリアしていく底力たるや。常に高エネルギーなシュレッド・プレイを抜群の安定感で繰り出す上、中盤には超絶テクニカル・インスト「The Fire And Fury」をキメてくる。その完成度の高さは控えめに言っても異常なほどだ。

もちろん、そうした華麗なソロ・ワークだけが彼の力量ではない。ザクザクと刻まれるリフの盤石さは言うまでもないが、歌メロの合間を縫うように入るフィルやリードが実に場をわきまえたフレージングになっており、まさに“メロディのバトンタッチ”と言える効果を生み出しているのも印象的だった。「Chains」(『STAND UNITED』収録)もその好例で、ヴォーカルの裏で奏でるアルペジオが上手くメロディと呼応しあったり、次のセクションに自然に流れるようになっていたり。あんなに弾きまくっているのに決して他パートの邪魔をせず、程よく耳を惹くフレーズに収めているのはさすがだ。キャッチーでコンパクトな曲作りを心がけるガスのアプローチが、純粋なパワー・メタルのスタイルにひと味もふた味もユニークさを加えており、そうした所からもオジー・オズボーン在籍時代に経験した数々の大舞台を通して磨かれたセンスを感じずにはいられなかった(余談ながら、ガスはこの日『TRIBUTE』(1987年)のアートワーク…つまりオジーとランディ・ローズが描かれたTシャツを着てステージに臨んでいた)。

ガス G.
Gus G.(g)

ガス&ハービー

初期からバンドを支えるベースのペトロス・クリストと、2012年加入で10年以上の在籍になるドラムのジョー・ニュネスが打ち出すグルーヴも重厚だ。キーボード奏者は配置せずすべて同期音源に任せており、それは今回のライヴでも同様。かつてはメンバーが頻繁に入れ替わり、度重なるラインナップの変更に悩まされることもあったガスだが、現在の4人に落ち着いてからはバンドの一体感が強まったとみえ、柔剛バランスよく配置されたサウンドは活動20年を経て辿り着いたバンドの完成形を表しているようだった。

ペトロス・クリスト
Petros Christo(b)
ジョー・ニュネス
Jo Nunez(dr)

新旧問わずどの曲もよく憶えて、大音声でコーラスや掛け声に応じるオーディエンス。実に19曲が演奏されたが、途中で何度もファイアーウインド・コールが鳴り響き、あまりの騒ぎになかなか次の曲に進まない場面もあったほど。最後は「Head Up High」「Falling To Pieces」といった人気曲の連打で締めくくられ、あっという間に終演を迎えた。ファンの渇望ぶりはしかとバンドにも伝わったことだろう。この盛り上がりを体験したなら、そう遠くない未来に必ず帰って来てくれる…そう確信した、東京公演の夜だった。

ファイアーウインド バンド

終演後 バンドとオーディエンス

ファイアーウインド 2024.5.15 @渋谷クラブクアトロ セットリスト

1. Salvation Day
2. Stand United
3. World On Fire
4. Destination Forever
5. Destiny Is Calling
6. I Am The Anger
7. Orbitual Sunrise
8. Wars Of Ages
9. The Fire And The Fury
10. Longing To Know You
11. Mercenary Man
12. Chains
13. Allegiance
14. Fallen Angel
15. Rising Fire
16. Maniac

[encore]
17. Ode To Leonidas
18. Head Up High
19. Falling To Pieces