“最良のMary’s Bloodの姿をオーディエンスの目に焼きつけたい…”
昨年末に、2022年4月をもって無期限の活動休止に入ることを発表したMary’s Blood。2009年に始動し、2012年に現メンバーとなって以降は不動の編成で精力的かつ順風に活動を行なってきたバンドだけに、「活動休止」の報には驚かされた。日本を代表するガールズ・メタル・バンドの1つであり、海外でも高い評価を得ていて、今年は現体制になって10周年。メンバーがソロ活動を行なったり、他のバンドに参加したりすることがあっても、彼女たちの“ホーム”としてMary’s Bloodは存続していくと思っていたが、メンバーそれぞれには外野からは計り知れない想いがあり、心に曇りがある状態で活動を続けることを良しとできなかったのだろう…。そのことからは、彼女たちの真面目さやなによりMary’s Bloodというバンドに対する深い愛情が感じられる。
そんな彼女たちは去る3月に<The Final Day>と銘打ったライヴを大阪と名古屋でそれぞれ行ない、4月9日には活動休止前の最終公演となる<The Final Day 〜Countdown to Evolution〜>を東京・豊洲PITで開催。当日は、当然のことながら彼女たちの最後の勇姿を絶対に見逃すまいと多くのファンが会場に集まり、場内は開演前から異様なまでの熱気に包まれていた。
暗転した場内に荘厳なオープニングSEが流れ、Mary’s Bloodのメンバーたちがステージに姿を現した。客席から湧き起こる盛大な拍手を圧するようにEYEの「いくぜぇー!」という声が響き、ライヴはファスト・チューンの「Without A Crown」〜「World’s End」を続けざまにプレイする流れでスタート。激しいステージングを織り混ぜながら、抑揚を効かせた歌声を聴かせるEYE。軽やかにステージを行き来して、高度なテクニックとエモーションを両立させたギター・ソロを奏でるSAKI。クールな雰囲気とファットにドライヴする重低音のマッチングが最高にカッコいいRIO。ドラム・セットの後ろから強い存在感を放って、高速ビートや多彩なフィルをパワフルに叩き出すMARI。Mary’s Bloodの華やかさと緊迫感を湛えたステージは実に魅力的で、目を奪われずにはいられない。オーディエンスもオープニングから熱いリアクションをみせ、場内のヴォルテージは一気に高まった。
「遂にこの日が来てしまいました。こんなに集まってくれて、ありがとうございます。このメンバーになってからもうすぐ10年に差しかかるところですが、活動休止という選択肢を採ることになりました。最後にみんなと最高の景色を作りたくて、今日のライヴを設定しました。今日は腕がもげるくらい、腰が砕けるくらい暴れて帰ってほしいと思います!」というEYEの挨拶を挟んだ後は、メロディアスな「Wings」やハードネスとキャッチーさを融合させた「Let Me Out」などをプレイ。勢いと安定感を兼ね備えた上質なサウンドはさすがのひと言で、10年に渡って様々な場所でたくさんのライヴを行なってきたバンドならではの凄みを感じさせる。同時に、活動休止という事実に気持ちを切らせることなく、メンバーそれぞれが最良のMary’s Bloodの姿をオーディエンスの目に焼きつけたいという思いを抱いてステージに立っていることも伝わってきた。
「活休が決まった時は正直ね、バンドに懸けたことが全部無駄になったなと思ったんです。私の10年はもうないわって。でも、無駄ではなかったんだよね。凄くない? だって、うち今1000人に観られているんでしょう? こういう経験も無駄じゃないということを信じて、これからも頑張っていこうと思っています。これだけバンドがたくさんある中からMary’s Bloodを見つけてくれて、愛してくれて、ありがとうございます」というRIOのMCが入った後、ダーク&ヘヴィな「Hunger」とパワフルに突進する「R.I.P」が演奏された。激しいステージングとハードなサウンドの応酬に心を駆り立てられる中、EYEの「1部のラストいくぜ!」という声が響き「Counter Strike」をプレイ。今回のライヴは“Final Day”にふさわしく2部構成になっており、第1部のラストを飾るこのファスト&アグレッシヴなナンバーではMary’s Bloodとオーディエンスが発するエネルギーが溶け合い、場内は怒涛の盛り上がりとなった。
ホワイト衣裳にチェンジ、明るい楽曲が生み出す華やかな世界観
15分間の休憩を挟み、第2部はアッパー&キャッチーな「It’s Alright」と爽やかなテイストの「HANABI」からスタート。前半のブラックからホワイトを基調にした衣裳に替わったメンバーたちの姿と明るい楽曲が生み出す華やかな世界観は、ハードだった第1部とはまた違った輝きを放つ。キャッチーなMary’s Bloodも本当に魅力的で、彼女たちが決して平坦なメタル・バンドではないことを、改めて実感することができた。
2曲聴かせたところで、SAKIのMCに。「私は、できない約束はしたくない性分なので必ず戻ってきますとは言えないけど、絶対あるとも言えないし、絶対ないとも言えないと思っています。私にギターを持とうと思わせてくれた人が言っていた言葉ですけど、「バンド・メンバーは兄弟/姉妹みたいなものだ」と。私もそうだと思います。なので、どこかで必ずつながっていくものだと思います。皆さんを心から愛しています。本当にありがとう」。
その後はエモーショナルな「Campanula」やメタルコアが香る「Bite the Bullet」などを披露。ドラマティックな曲でオーディエンスの感情を揺さぶると、再びハード・チューンを聴かせる流れがキマって、場内の空気がさらに昂ぶっていることが感じられる。「楽しんでいますか? 私は、最高の景色を見せてもらっています。ここまで頑張ってこられたのは、こうして応援してくれている人たちのおかげです。ありがとうございます。今日まで、本当に素晴らしい時間を過ごしてくることができました。そして今日も、心から一緒に楽しみましょう!」というMARIのMCが入った後、ライヴは終盤へ。ステージ全体を使ったフィジカルなステージングを展開しながら、ラウドな「Coronation Day」や切迫感を放つ「Burning Blaze」を聴かせるバンドと、それに熱狂的なアクションで応えるオーディエンス──ラストを飾ったメロディアス&ドラマティックな「Promised Land」で盛り上がりは最高潮となり、第2部は幕を降ろした。
「今日は本当にありがとうございました。このメンバーで幸せな時間の中をずっと突っ走ってこられたのは本当に奇蹟だと思うし、皆さんのおかげです。これからもMary’s Bloodの曲たちを聴き続けて、Mary’s Bloodのことを大事にしてください。よろしくお願いします!」というEYEの言葉を交えつつ、アンコールではハイ・ヴォルテージな「Blow Up Your Fire」や光を感じさせる「Starlight」などをプレイ。メンバーそれぞれが正直な気持ちを吐露するシーンがありつつ、曲が始まると“ビシッ!”となるのはさすがだし、長丁場のハードなライヴでありながら、最後までまったくパワー・ダウンしないのも見事。という言葉が似つかわしいパフィーマンスを見せてくれたことでネガティヴな雰囲気はなく、バンドがステージから去っていった場内は爽やかな余韻に包まれていた。
最後まで高いミュージシャンシップに裏打ちされた上質なライヴで楽しませてくれたMary’s Blood。これほどまでに魅力に富んだステージングを展開できるバンドだけに、今さらながら無期限の活動休止は本当に残念だが、メンバーたちが前向きな気持ちになっていることを感じられたのは嬉しく思う。それぞれがMary’s Bloodを通して得た糧を活かして、今後も充実した活動を見せてくれることを期待したい。
Mary’s Blood<The Final Day ~Countdown to Evolution~>@豊洲PIT, 2022. 4.9 セットリスト
[第1部]
1. Without A Crown
2. World’s End
3. Wings
4. Let Me Out
5. Moebius Loop
6. Hunger
7. Bass Solo 〜 R.I.P.
8. Counter Strike
[第2部]
9. It’s Alright
10. HANABI
11. Campanula
12. Drums Solo 〜 Marionette
13. Bite the Bullet
14. Coronation Day
15. Burning Blaze
16. Promised Land
[encore]
17. Blow Up Your Fire
18. Queen of the Night
19. Starlight
20. Say Love