春畑道哉、次に繋げるギター・インスト35年の集大成 2022.6.5 “SPRING HAS COME ⁺next”最終日レポート

春畑道哉、次に繋げるギター・インスト35年の集大成 2022.6.5 “SPRING HAS COME ⁺next”最終日レポート

ソロ・デビュー35周年の節目となる今年、4月27日に発表された春畑道哉(TUBE)の新ソロ・アルバム『SPRING HAS COME』。本作に伴うツアー“MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2022 SPRING HAS COME ⁺next”から、千秋楽となった6月5日、昭和女子大学 人見記念講堂で行なわれた東京公演の模様を遅ればせながらお届けしよう。

まずは最新作のタイトル・トラック「Spring has come」、そしてアルバムと同じ流れで2曲目「FANTASIA〜LIFE WITH FOOTBALL〜」からスタート。アグレッシヴなソロやジャンプしたりのエネルギッシュなパフォーマンスに、満員の会場はすでにお祭り騒ぎだ。トランス・ピンク・カラーのフィニッシュが美しいフェンダーのストラトキャスターが、その魅力溢れるトーンを全開にしている。そしてグルーヴィな16分リフと爽快なヴォーカル・パートが印象的な「Daybreak Highway」、赤い照明のインパクトも強いヘヴィ・スタイルな「Freaky Jammin’」へと、ヴァーサタイルな音楽性を提示するように様々な楽曲が続く。レリック加工のストラトで速弾きを繰り出し、多彩な音を操るキーボードの宮崎裕介とワウ・プレイに興じたりと、テンションの高いギター・ワークや揃いのキメが大きな盛り上がりを作った。

春畑道哉 2022.06.05 ストラトキャスター(レリック)

一段落したところで、再度ギターを交換。今度は「Charさんからもらいました」と話す、フェンダー“Char Mustang”だ。コラボ時の様子やプライヴェートでの交流といった敬愛ぶりが伝わるエピソードに続き、Charのペンによる「I feel free」が披露されたのだが、「もっとギター・インストの世界を知ってほしい」という春畑の要望で、この曲のみ携帯電話での撮影・録画やSNS共有が許された。カメラを構える観客の準備が整うのを見守ってから、演奏の合図を出す春畑。原曲ではCharとのギター・ソロを掛け合うのが見せ場だが、ここではサックスの勝田一樹とのトレード・オフで魅了した。ムスタングを弾きこなす春畑の姿は新鮮で、シャッフル調の「Jack in the Box」も同モデルで通し、ソロ回しご機嫌なロック・サウンドを響かせてくれた。定番の「DRIVIN’」でググッと盛り上がった後、ステージは一度暗転。

春畑道哉 2022.06.05 I Feel Free演奏

春畑道哉 2022.06.05 ムスタング

再び舞台が照らされ、ピアノの前に1人座る春畑が浮かび上がる。新作からの「ノスタルジア」だ。蒸し暑い日本の夏を忘れさせるような、清涼感のあるサウンドが心地よい。穏やかな空気を保ったまま、今度はアコースティック・ギターに持ち替える。奥野翔太のムーディーなベース・ソロに続けて「Hello」、そしてラテン風味の「Wings」もアコースティック・アレンジで、オーガニックな印象だ。ゆったりとした「Promised Land」でエレクトリックに戻り、強弱のコントロールやフィードバック音などを織り込んだフレーズが壮大なサウンドの要となって曲を伸びやかにリードする。

春畑道哉 2022.06.05 アコースティック・ギター

春畑道哉 2022.06.05 ストラトキャスター(ブルー)

トークが入るたびに何度も「(ショウを)終わりたくない」と繰り返していた春畑だが、それほどこのツアーには大きな手応えを感じていたようだ。その思いはバンド内にも波及したようで、メンバー紹介のMCでは、SATOKOや奥野などがいかに今回のツアーを楽しみ、惜しみつつあるかを打ち明けていた。

春畑道哉 2022.06.05 勝田一樹

春畑道哉 2022.06.05 宮崎裕介

春畑道哉 2022.06.05 SATOKO

春畑道哉 2022.06.05 奥野翔太

再びトランス・ピンクのストラトに持ち替え、’80sの香り漂うアップ・テンポな「Solid Sky」へ突入。テクニカルなソロをガツガツ弾きまくり、ステージを左右すみずみまで移動してオーディエンスを煽る。さらにテンションを上げた「Shooting Stars」のエンディングではSATOKOが入魂のドラム・ソロを披露。春畑の変幻自在なスタイルに柔軟に溶け込む彼女一番の見せ所となった。そして迎えたエネルギッシュな「Kingdom of the Heavens」は文字通りのクライマックス! 絶妙なタイミングでサックス・ソロが入るというのも春畑ライヴ・アレンジの妙だが、ここにもそのマジックが起きていた。最後は問答無用の「青いコンバーチブル」…まさに全力疾走のパフォーマンスで駆け抜け、いったんショウは幕を閉じた。

春畑道哉 2022.06.05 ストラトキャスター(トランス・ピンク)

野球、サッカー、プロレスに至るまで、名だたるテーマ・ソングを手掛けてきたという事実だけでも相当な快挙だが、そのどれもが長年愛されてきたのは、人々に勇気を与える楽曲を作り、琴線に触れるプレイで表現するという両方を成し遂げられる春畑だからこそ。アンコールでは、新作にも収録された女子プロサッカーリーグ:WEリーグのアンセム・ソング「WE PROMISE」が演奏され、バックに流れる映像と相まって感極まる瞬間を作り出していた。この高まりはアグレッシヴな「JAGUAR ‘13」でピークに達し、新作最終曲のエモーショナルな「Period.」で静かに締めくくられた。

春畑道哉 2022.06.05 アンコール バンド演奏

バンドが名残惜しそうにステージを去り、しばらく時間が経っても客席の拍手はいつまでも鳴り止まず…そう、「終わりたくない」のはオーディエンスも同じなのだ。とうとう、春畑が1人でギターを手に再々登場。クリーンのアルペジオとその余韻が美しい「Dec. horoscope」で大喝采に。さらにはバンドを呼び込んで本編冒頭の「Spring has come」を再び演奏し、後味も軽やかに本当の終演を告げたのだった。

MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2022 SPRING HAS COME ⁺next @昭和女子大学人見記念講堂 2022.6.5 セットリスト

1. Spring has come
2. FANTASIA 〜LIFE WITH FOOTBALL〜
3. Sunrise
4. Daybreak Highway
5. Freaky Jammin’
6. I feel free
7. Jack in the Box
8. DRIVIN’
9. ノスタルジア
10. bass solo – Hello
11. Wings
12. Promised Land
13. Solid Sky
14. Shooting Stars – drums solo
15. Kingdom of the Heavens
16. 青いコンバーチブル

Encore
17. WE PROMISE
18. JAGUAR ’13
19. Period.

Encore 2
20. Dec. horoscope
21. Spring has come