WOA2024レポートDAY3:8月2日(金)

WOA2024レポートDAY3:8月2日(金)

Cherie Currie

“Wacken Open Air”会場

明けて金曜日──フェス3日目も朝から晴れ。雲はあるが、カラッと天気良好で、最高気温も22℃と、日本の酷暑とは比べるべくもない。

午前11時ちょっと前にW:E:Tステージへ行くと、もうかなりの観客が集まっていた。程なくして、そこへ登場したのはシェリー・カーリー! 元ザ・ランナウェイズの伝説的シンガーだ。

シェリー・カーリー

昨日のスージー・クアトロほどではないとしても、シェリーもキャリア50年超の大ベテラン。’70年代中盤当時、元祖ガールズ・バンドとでも言うべきザ・ランナウェイズ(ジョーン・ジェットやリタ・フォードも在籍)は、日本でも一大センセーションを巻き起こした。ただその絶頂期は短く、その後シェリーは女優に転身。正直、近年の活動ぶりについては何も知らなかったが──ザ・ランナウェイズの「California Paradise」(’77年『QUEENS Of NOISE』収録)で始まったショウは、当時64歳のシェリーが現役感ハンパない妖艶な歌唱で、まだ寝ぼけ眼のオーディエンスを序盤からグイグイ惹き付けまくり!

シェリー・カーリー

最後まで観ることは出来なかったが、約45分のショウは、ザ・ランナウェイズ最大のヒット曲「Cherry Bomb」(’76年『THE RUNAWAYS』収録)で締め括られ、やはりというか、演目の大半がランナウェイズ・ナンバーで占められていたようだ。

SONATA ARCTICA

次に観たのは、メイン・ステージのファスターでスターターを務めたソナタ・アークティカ!

ソナタ・アークティカ

午後12時半にしてはかなりのオーディエンスが詰め掛けていたが、いきなり最新作『CLEAR COLD BEYOND』(’24年)収録曲の連打で幕開け、セット後半まで初期ナンバーが全くプレイされなかったのもあってか、正直あまり受けは良くなく、メンバーの熱演も少々空回り気味…。それでも、「Tallulah」(’01年『SILENCE』収録)が7曲目に披露されて以降は、しっかり持ち直してはいた。

トニー・カッコ
Tony Kakko(vo)

エリアス・ヴィルヤネン
Elias Viljanen(g)

Metal Battle結果発表

続いて、13時半からヴァッキンガー・ステージでSKILTRON、そして、14時からヘッドバンガーズ・ステージでアルカトラスを…と思ったものの、13時45分からプレス・テントで“W:O:A Metal bttle”(以下MB)の結果発表があるのでどちらもパス。少し早めにバックステージへ行くと、各国代表バンドとその関係者が、みな一様に緊張の面持ちで集まっていた。

まぁ、間違いなくPARAMENAの優勝で決まり! それで日本代表が3連覇を果たすことも確信していたが、時に番狂わせが起こることもあるっちゃある。それでも上位5バンドに入らないことはまずない…と、その時は何ら疑いなくそう思っていた。

第5位から順にバンド名がコールされていく中でも、「流石に5位ってことはないだろう」「3位のハズがない」などと余裕の構え。第2位でも名前が呼ばれなかったため、「よっしゃ〜、やっぱり優勝で決まり…!!」と、実はその時点で、もうPARAMENAの面々にフライングで祝福の言葉をかけていたりもした…。

第1位発表の直前、プレンゼンターとして呼び込まれたのは昨年の優勝バンド:ファントム・エクスカリバー!

ファントム・エクスカリバー

ちょうど1年前、彼等は’22年度優勝バンドのセーブル・ヒルズにその名をコールされた。今回もその時と同じく、日本代表が日本代表の優勝を発表するものだと思っていたら──意外にも、告げられた優勝バンドはデンマーク代表だった…!!

デンマーク代表

ここで改めて結果を報告しておくと、第5位はコロンビアのINFO、第4位はルーマニアのDOOMSDAY ASTRONAUIS、第3位は中国のFIVE PENALTIES(華語名:倶五刑)、第2位はポーランドのAQUILLA、そして優勝はデンマークのTHUS…ということに。PARAMENAは惜しくも第6位だったと噂されるも、5位未満のバンドについては──これは毎回のことだが──オフィシャルには公表されていない。

結果発表を終えて、落胆を隠しきれないPARAMENAの面々には、励ましの言葉がひっきりなしに掛けられていた。中には、「あれだけ盛り上げ、熱狂を引き出した日本代表が5位以内に入らないのはおかしい」と、憤りを隠さない某国代表やそのスタッフまでもが。個人的にも、「審査員はPARAMENAのあのステージを本当に観たのか?」なんて疑念が湧いてきたりも。ただ、他国の代表が日本代表3連覇を阻止するべく、“No more Japan!”をスローガンに、負けじと奮闘しまくっていたのも事実ではある。よって、結果は結果として受け止めるしかない…。

BEAST IN BLACK

どうしても納得がいかない気持ちを抑えきれないまま、あ〜そういえば…ジ・アミティ・アフリクションも、ブルース・ピルズもMB結果発表と時間がカブっていて観逃したな〜なんて思いつつ、とぼとぼ向かった先はメイン・ステージ。そこに待ち構えるは、フィンランドの“黒野獣”(バスドラに注目!)ことビースト・イン・ブラック!

ビースト・イン・ブラック

意外にも彼等は、これが初WOA。首魁アントン・カバネン(g, vo)がかつて在籍していたバトル・ビーストは、MBフィンランド代表として臨んだ時も含めれば、4回もWOAのステージに立っているのに…! ただ、「ようやく…!」との思いは、ファンは勿論のこと、きっとバンド自身も噛みしめていたことだろう。

ヤニス・パパドプロス
Yannis Papadopoulos(vo)

アントン・カバネン
Anton Kabanen(g, vo)

カスペリ・ヘイッキネン
Kasperi Heikkinen(g)

マテ・モルナール
Mate Molnar(b)

アッテ・パロカンガス
Atte Palokangas(dr)

彼等の“キャッチーだが熱い!”パフォーマンスは最初から鬼気迫るモノがあり、万単位の大観衆がどんどん熱狂の渦へと惹き込まれていく。アントン&カスペリのシュレッド合戦も、頻発されるフォーメーション・プレイの熱さも、相変わらず凄まじいことこの上ナシ! 日本人としては、ここWOAでも「One Night In Tokyo」(’21年『DARK CONNECTION』収録)が終盤のキメ曲として効果的に機能していたことも嬉しい限りだった。

ビースト・イン・ブラック
ヤニス&アントン

ビースト・イン・ブラック@Wacken Open Air 2024 2024.8.2 セットリスト

1. Intro(SE)〜Blade Runner
2. Hardcore
3. The Fifth Angel
4. Born Again
5. Sweet True Lies
6. Power Of The Beast
7. Die By The Blade
8. Beast In Black
9. Blind And Frozen
10. Cry Out For A Hero
11. One Night In Tokyo
12. End Of The World

SPIRITBOX

続いて、お隣のハーダー・ステージに登場したのはSPIRITBOX。カナダ産のプログレッシヴ・メタルコア5人組だ。いま最もヒップで影響力のあるバンドであるから、ステージ前にはWOAとしては若めなオーディエンスが大集結。そのパフォーマンスは、初期のMVで観られたアートな感覚とは裏腹に、妙に淡々としていたようにも思ったが、公私にわたるパートナーでもあるコートニー・ラプランテ(vo)とマイケル・ストリンガー(g)は、共に静かなる激情を秘め、その衝動に突き動かされた多くの観客が、思い思いにモッシュやクラウド・サーフに興じ、あるいはウォール・オブ・デスで日頃の鬱憤を吹き飛ばそうとしていたのも事実だ。

コートニー・ラプランテ
Courtney LaPlante(vo)

マイケル・ストリンジャー
Michael Stringer(g)

LIV KRISTINE

SPIRITBOXを序盤で抜け、ヴァッキンガーへ向かうと、そこにはゴス好き、フォーク好きが待ち構えており、16時45分の予定時刻を少し過ぎて、元シアター・オブ・トラジディーで元リーヴズ・アイズでもあるリヴ・クリスティンがステージにその姿を現した。

過去に在籍した2バンドのイメージをそのまま引き継ぐ佇まいのリヴは、当時の最新ソロ作『RIVER Of DIAMONDS』(’23年)から「Shaolin Me」でショウをスタート。またまたメイン・エリアへ逆戻りするため、2曲目の『RIVER Of DIAMONDS』表題曲までしか観られなかったが、その後はシアター・オブ・トラジディーやリーヴズ・アイズの楽曲をガッツリ歌ったらしい。う〜ん…残念!

リヴ・クリスティン
Liv Kristine(vo)

サシャ・ダネンバーガー
Sascha Dannenberger(g)

ここで、WOAでの飲食事情を少し。20年前はハンバーガーかピザ、あとポテト以外は肉しかない…といった状況だったWOAだが、ここ10年ほどで選択肢が一気に増え、今ではベジタリアンやヴィーガンにも対応していたり。だが、やはり今でも人気のフードはやはり肉! 中でも、文字通りの豚の丸焼きはインパクト絶大で、見た目はちょっとグロいものの、味の濃さと脂っこさはビールによく合うんだそう。

豚の丸焼き

もう一品、いつも大行列になっているのが、日本風に言えば豚串。これまた甘辛のタレが実に美味で、フェス期間中、一体どれぐらい焼かれるのか…と気になるぐらい、いつも大量にグリルされまくっている。

豚串

ちなみに、’24年はビール一杯(通常サイズ)が5.5ユーロ、コーラは5ユーロ、水(ミネラルウォーター)は4.5ユーロだった。円安の今だと、特にソフト・ドリンクは日本円に換算すると「高っ!」となってしまうので、何も考えずに注文することをオススメしておこう…。

ドリンク・コーナー

FEUERSCHWANZ

ファスターへと戻ると、次に控えしはドイツ現地でトップ・アクトとなって久しいフォーク・メタラー:フォイヤーシュヴァンツ!

フォイヤーシュヴァンツ

おふざけ中世楽団を出発点に、徐々にメタル・テイストを強めながらバンド・ラインナップを固めていった彼等は、今や出すアルバムが常にチャート上位に入り、No.1作も少なくない大人気グループ。日本では一部マニアにしか知られていないが、現地では老若男女に幅広く支持されている。

メンバー全員(ダンサー&パフォーマー担当含む)がファンタジックな甲冑や“中世+サイバーパンク”といった衣装に身を包み、炎を大量に使うド派手なステージングもなかなか特徴的だ。

ハウプトマン・フォイヤーシュヴァンツ
Hauptmann Feuerschwanz(vo,lute)

ホジ
Hodi(vo, bouzouki, pipes)

ハンス
Hans(g)

ヨハンナ
Johanna(vln)

ミーズ
Mieze Musch-Musch(dance&perform)

Mieze Myu(dance&perform)
Mieze Myu(dance&perform)

推定4万のオーディエンスは、どの曲でも歌いまくり、踊りまくり、そして呑みまくり! アンコール披露されたマノウォーのカヴァー「Warriors Of The World United」には、SALTATIO MORTISの面々が乱入し、正に呑めや歌えや踊れやの大騒ぎとなっていた。

フォイヤーシュヴァンツ

GENE SIMMONS

いかにもWOAといった、フォーク・メタル人気&フォイヤー人気にひたすら圧倒されていると、75分のショウなんてあっという間。しかし、剣とドラゴンと蜂蜜酒の世界に没頭するのもそこまで──続いてハーダー・ステージには、世界的ロック・スターがWOA初お目見えし、現実世界へと引き戻してくれる。

ジーン・シモンズ

そう、ジーン・シモンズ・バンドだ! 「Deuce」(’74年『KISS』収録)で始まり、他にもKISSナンバーがたっぷり披露されるショウは、言わずもがな大盛り上がり。脇を固めるブレント・ウッズ&ジェイソン・ウォーカーのギター・チームも、それぞれ良い仕事っぷりで、かつてデビュー前にジーンがプロデュースを手掛けたヴァン・ヘイレンの「House Of Pain」(’84年『1984』収録)や、レッド・ツェッペリンの「Communication Breakdoen」(’69年『LED ZEPPELIN』収録)、故レミー・キルミスター追悼でモーターヘッドの「Ace Of Spades」(’80年『ACE Of SPADES』収録)など意外なカヴァーも飛び出した。尚、ツェッペリンを歌ったのはジェイソン、モーターヘッドを歌ったのはドラマーのブライアン・ティッシーだ。

ジーン・シモンズ
Gene Simmons(b, vo)

ブレント・ウッズ
Brent Woods(g)

ジェイソン・ウォーカー
Jason Walker(g)

面白かったのが、途中でオーディエンスの中から子供達をステージへ招き、ドイツ語もかなり堪能なジーンによるほのぼのインタビュー・タイムがあったこと。そういえば、“LOUD PARK 17”で来日した時も、観客をステージに上げていたな…と思い出したりも。あの時は子供達ではなかったが。

ジーン・シモンズと子どもたち
ジーン・シモンズ

BLIND GUARDIAN

ジーンに続いては、ファスター・ステージにてブラインド・ガーディアン!

ブラインド・ガーディアン

WOA常連の彼等は、これが8回目の聖地でのパフォーマンスとなる。(コロナ禍下の’00年に行なわれたオンライン・フェス“Wacken World Wide”出演も含めると9回!) 何と初出演は’92年──第3回WOAというから凄い。彼等は、’22年リリースの現時点での最新作『THE GOD MACHINE』に伴うツアーをまだ続けていて、その一環としてのWOA参戦となったが、セットリストは古めの楽曲が結構目立っており、新旧双方のファンが大いに楽しんだに違いない。

ハンズィ・キアシュ
Hansi Kursch(vo)

アンドレ・オルブリッチ
Andre Olbrich(g)

マーカス・ズィーペン
Marcus Siepen(g)

圧巻だったのは、毎度恒例の「The Bard’s Song – In The Forest」(’92年『SOMEWHERE FAR BEYOND』収録)での数万人による大合唱だ。WOAでそれを体験するのは過去にも何度かあったが、いつも鳥肌が立つ。でも、この文字通りのバラッドでクラウド・サーフするヤツって何なんでしょ…?(苦笑)

ブラインド・ガーディアン@Wacken Open Air 2024 2024.8.2 セットリスト

1. Imaginations From The Other Side
2. Blood Of The Elves
3. Nightfall
4. The Script For My Requiem
5. Violent Shadows
6. Skalds And Shadows
7. Time Stands Still (At The Iron Hill)
8. Bright Eyes
9. Secrets Of The American Gods
10. The bard’s Song – In The Forest
11. Majesty
12. Lost In The Twilight Hall
[Encore]
13. Sacred Worlds
14. Valhalla
15. Mirror Mirror

そんなブラガを序盤に一旦抜け、ラウダー・ステージへ向かう際にランニング・オーダーを確認していると、20時からヘッドバンガーズ・ステージでプライマル・フィアがプレイするのを、うっかり見落としていたことに気付いて愕然…。実はこのWOA出演のあと、アレックス・バイロットが脱退してしまい、その相棒トム・ナウマンもそれからしばらくしてバンドを去り、何と看板ツイン・ギター・チームがいなくなってしまう。だからこそ余計に観ておきたかったのだが…。

PAIN

気を取り直してラウダーに着くと、ちょうどペインのショウが始まるところ。ヒポクリシーのピーター・テクトグレン(g, vo)が率いる、ヴィジュアル系(?)エレクトロ・メタラーだ。

ペイン

スクリーンを効果的に使い、メンバーが何度も衣装替えするそのパフォーマンスは、視覚的な仕掛けが色々と施されていて、また、意外にもキャッチーな楽曲ばかりなのもあって、初見でも大いに楽しめる。序盤、ダーク・メタルってな出で立ちだったピーター達は、以降、防護服っぽいつなぎに着替えたり、毛皮ヴェストを着て謎のゴージャス仕様になったりと、全く観客を飽きさせない。

ピーター・テクトグレン(
Peter Tagtgren(g, vo)

セバスチャン
Sebastian Svalland(g)

3曲目にプレイされた「Call Me」(’16年『COMING HOME』収録)では、サバトンのヨアキム・ブローデンがスクリーンに登場し、まるで衛星中継にて間接共演か…ってな演出になっていたのも面白かった。

ヨアキム

MIKKY DEE WITH FRIENDS

そのペイン@ラウダーも早々とあとにし、次はW:E:Tステージへ。21時15分からミッキー・ディーが何かやると聞いたからだ。すると、そこではミッキーによるレミー追悼ライヴが行なわれていた。

MIKKY DEE WITH FRIENDS

直前に出演キャンセルになったバンドがいて、その穴を埋めるべくミッキーが手を挙げた…とも聞いたが、詳細は定かではない。ミッキーとステージを共にし、レミー&エディ・クラーク役を務めるのは、イエテボリのバンド:THE DRIPPERSの面々とのこと。ただ、WOAに出るため急遽で組んだのではなく、ミッキーは数年前からMIKKEY DEE WITH FRIENDS名義で、言ってみればただ楽しむためだけに、またレミーの遺産を後世に伝えるために、ごく小規模で時々このトリビュート・バンドをやっているらしい。

ミッキー・ディー

あとで分かったことだが、このMIKKEY DEE WITH FRIENDSは、夕方にもヴァッケン村のパブを使ったLGHクラブステージで30分ステージをコナしたそうで(それが元々の出演枠だったか?)、実はこのW:E:Tは2ステージ目だったり。しかし、ミッキーのパワフルなドラミングは疲れなんて微塵も感じさせず、終盤にはアイラ・ブラック(g)やチャック・ガリック(b)の飛び入りなんかもあったそうだ(アリス・クーパー・バンドの後者は、2曲ほどヴォーカルも執ったらしい)。

KORN

ようやく夜の帳が降りようとしていた午後10時半──ハーダー・ステージにKORNが降臨! 最初、ステージ前には紗幕が掛かっており、それがゆっくり上がっていって、『THE SERENITY OF SUFFERING』(’16年)収録の「Rotting In Vain」でショウがスタートした。

KORN

半分残した紗幕をスクリーンとしても使い、派手なライティングで視覚効果を高め、再び紗幕を降ろして、バンドがその向こうで演奏するのかと思ったら、また上がって観客に激を飛ばし…といった演出も実に見事だ。

ブライアン“ヘッド”ウェルチとジェイムズ“マンキィ”シェイファーの7弦ギター・コンビは、共に重低音リフを刻みまくり、エフェクティヴなノイズも放ちまくって、オーディエンスを爆裂サウンドに捕らえ込んでいく。

ヘッド
Head(g)

マンキィ
Munky(g)

ヴォーカルのジョナサンの観客掌握術も実に見事だ。ドレッド・ヘアーを振り乱し、全身を使って躍動感を生み出し、絶妙のタイミングでステージ前へ出てきてサビを歌わせると、何度も何度も大合唱が起こる…起こる! 躍動感といえば、ドラムのレイ・ルジアーの激しくタイトなプレイも重要な役割を担っており、サポート・ベーシストのラ・ディアスがアクティヴなステージングで、活休中のフィールディの不在を感じさせなかったことも特筆しておきたい。

ジョナサン・デイヴィス
Jonathan Davis(vo)

ラー・ディアス
Ra Diaz(b)

レイ・ルジアー
Ray Luzier(dr)

KORN@Wacken Open Air 2024 2024.8.2 セットリスト

1. Intro:4 U(SE)〜Rotting In Vain
2. Here To Stay
3. A.D.I.D.A.S.
4. Clown
5. Start The Healing
6. Good God
7. Ds Solo〜Blind
8. Got The Life
9. Falling Away From Me
10. Coming Undone(Incl.:We Will Rock You@QUEEN)
11. Ds & B Jam〜Somebody Someone
12. Y’All Want A Single
13. Shoots And Ladders(Incl.:One@METALLICA)
14. Twist
15. Divine
16. Freak On A Leash

THE 69 EYES

その後、23時頃にブルヘッド・シティへ向かい、W:E:Tステージへ到着すると、そこはゴスのムードに満たされていた。程なく演奏をスタートさせたのは、ダークでメランコリックなスリージー・ロケンローを聴かせるフィンランドのザ・シックスティ・ナイン・アイズだ。

ザ・シックスティナイン・アイズ

キャリア35年を誇る彼等にとって、これがWOA初出演。よって、メンバー全員ハンパなく気合いが入っていて、ダウナーなゴス・テイストを発散しつつも、各人のプレイには少なからず力が漲っている。

ユルキィ69
Jyrki 69(vo)

ティモ=ティモ
Timo-Timo(g)

バジー
Bazie(g)

中でも、ティモ=ティモ(g)の存在感が際立っており、常にフロントマンのユルキィ(vo)よりも前へ前へ出て、どんどん観客をアジりまくる彼は、まさにバンドのエンジンそのもの。コーラスを入れることが多く、よってマイク・スタンドの前に釘付けとなるバズィ(g)の分も、ティモ=ティモはひたすらエネルギッシュに動き回っていた。

TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA

そして──この日も大トリの出番がやってくる。ザ・シックスティ・ナイン・アイズを早々に切り上げ、インフィールドへ戻ってくると、ファスター・ステージでは一大メタル・オペラがその幕を上げようとしていた。そう、トビアス・サメットによるアヴァンタジアだ…!!

アヴァンタジア

この時、アヴァンタジアはヨーロッパ各国の夏フェスを巡るツアーの真っ最中。毎回、微妙に異なるそのメンツは以下の通りであった。

●トビアス・サメット<vo:エドガイ>
●ボブ・カトレイ<vo:マグナム>
●ジェフ・テイト<vo:元クイーンズライク>
●ロニー・アトキンス<vo:プリティ・メイズ>
●ケニー・レクレモ<vo:H.E.A.T>
●エイドリアン・カワン<vo:セヴン・スパイアーズ>
●ハービー・ランガンス<vo:ファイアーウインド>
●キアラ・トリカリコ<vo:ムーンライト・ヘイズ>
●サシャ・ピート<g:元ヘヴンズ・ゲイト>
●アーネ・ヴィーガント<g:SANTIANO>
●ダーク・シュレヒター<b:ガンマ・レイ>
●フェリックス・ボーンケ<dr:エドガイ>
●ミロ・ローデンベルク<key>

大所帯によるフル・スケールの劇的スペクタクル・ショウが魅力のアヴァンタジアだが、この時もシンガーが入れ替わり立ち代わりして新旧ナンバーをトビアスと熱唱&激唱! プレスのライヴ撮影が許可されているのは最初の3曲だけなので、「The Scarecrow」(’08年『THE SCARECROW』収録)で登場したロニー以外──ボブやジェフ、それから新顔のケニーの姿を捉えることは、残念ながら叶わなかったものの、みんなそれぞれに個性を発揮してファンタジックな世界観を盛り立てまくりだ。

演奏陣では、今回ダークが初参加。しかし、文字通りのパワーハウス:フェリックスによるパワー満載ドラミングとの相性は抜群で、トビアスとも旧知の仲だからして、全く新参との印象は受けない。一方、総合プロデューサー的な立場も担うサシャは、いつもながらの自由度の高いギター・プレイでもって、エモーショナルに愛器デューゼンバーグを歌わせていた。

トビアス・サメット
Tobias Sammet

ロニー・アトキンス
Ronnie Atkins

サシャ・ピート
Sascha Paeth

ダーク・シュレヒター
Dirk Schlachter

フェリックス・ボーンケ
Felix Bohnke

アーネ・ヴィーガント
Arne Wiegand

エイドリアン、ハービー、キアラの3名は、基本ステージ後方でコーラス要員を務めているのだが、それぞれにメインを任される曲もあって、その中では、「Reach Out For The Light」(’01年『THE METAL OPERA』収録)で見事にマイケル・キスク役をコナしたエイドリアンがズバ抜けて素晴らしかった。また、当時76歳(!)だったボブの変わらぬ歌声に、心底感動したという人も沢山いたことだろう。

(左から)Adrienne Cowan、Miro Rodenberg、Herbie Langhans、Chiara Tricarico

サシャ&エイドリアン
Sascha&Adrienne

トビアス&ロニー
Tobias&Ronnie

トビアス&エイドリアン
Tobias&Adrienne

トビアス・サメッツ・アヴァンタジア@Wacken Open Air 2024 2024.8.2 セットリスト

1. Spectres
2. Reach Out For The Light
3. The Scarecrow
4. Dying For An Angel
5. Alchemy
6. Invincible
7. Promised Land
8. The Story Ain’t Over
9. Let The Storm Descend Upon You
10. Farewell
11. Shelter From The Rain
12. Lost in Space
[Encore]
13. Lucifer
14. Sign Of The Cross〜The Seven Angels

午前1時45分、アンコール含め1時間半にわたってファンタジックなメロディック・メタル絵巻を繰り広げたアヴァンタジアのショウは、ステージ後方から花火が次々と打ち上げられる中で終演。だが、その時点でまだブルヘッドでは最終バンドの演奏が続いており、LGHクラブ・ステージでは明け方近くまでDJイベントが行なわれるなど、WOAメタル・マラソンは終わりを知らないかのよう。まぁ、連日のように朝まで飲み明かすヴァッケナーにとっては、午前2時や3時などまだ宵の口であろうが…。

WOA会場
 

アットエリーゼ

ヤング・ギターに過去掲載されたギター・スコアのPDFが、
“アットエリーゼ”にてダウンロード購入できます!

関連記事

関連書籍