WOA2024レポートDAY4:8月3日(土)

WOA2024レポートDAY4:8月3日(土)

早くも最終日。毎年言っているが、4日間なんてあっという間だ。いや…現地に着いた時は、いつも「4日間か〜。長いな〜。体力もつんか…?」なんて思うのに、3日目の夜には「えっ…もう明日で終わり?」と、急に寂しい気持ちになってくるから不思議だ。

土曜の朝に目覚めると、もうかなり疲労が蓄積されてきているにもかかわらず、アドレナリンなのかドーパミンなのか“何か”がドバドバ出てくるのはもっと不思議…。この日も天気は良好で、やや雲が多い時間もあったものの、最高気温は23℃と過ごし易く、午前11時頃には張り切ってキャンプ・エリアをあとにし、いざフェスティヴァル・エリアへ〜。

TANKARD

W:E:Tステージ

まずはW:E:TステージでBLACK SABBITCH(凄いバンド名だが、そこから想像される通り、米LA出身のオール・フィーメイル・ブラック・サバス・トリビュート・バンド)を観ようと思っていたのだが、シャトル・バスのタイミングが悪く、到着が思いの他遅くなってしまったため、あきらめてインフィールドへ。

そこでファスター・ステージのトッパーを務めたのは、地元ベテラン・スラッシャー:タンカードだ!

タンカード

’26年にアルバム・デビュー40周年を迎える彼等は、“Special Fruhschoppen Show”と銘打って11時半に演奏をスタート。“フリューショッペン”とはバイエルン地方における“ブランチでの朝呑み”で、要は「昼前から呑んで騒ぐぜ!」ということ。例年、最終日の朝イチ(もう正午に近い時間だが)は、みんな二日酔いで…というか、もはや三日酔い、四日酔いのためか観客少なめなのだが、既にファスター前には軽く数万人はいたように見える。

アンディ
Andy Gutjahr(g)

タンカードの酔いどれスラッシュは大ウケで、早速ビール片手にサークル・モッシュという猛者が大発生。もし暴れてビールをこぼしてしまっても、心配は無用だ。離れたビール・スタンドまでわざわざ買いに行かなくても、背中にビール・タンクを担いだ売り子がステージ前にもウロウロしているから、目の前でライヴを楽しみながら2杯目、3杯目と補充することが出来る。

ビールサーバー

FIDDLER’S GREEN

盛り上がるタンカードをあとにし、早々にラウダー・ステージへ移動。よって、最後の曲「(Empty) Tankard」(’86年『ZOMBIE ATTACK』収録)でのザビーナ・クラッセン(vo:ホーリー・モーゼス)の飛び入りを見逃してしまったが、ラウダーの一発目がフィドラーズ・グリーンとくれば、駆け付けないワケにいかない…!

フィドラーズ・グリーン

キャリア35年を誇る南ドイツ出身アイリッシュ・パンクスながら、WOA出演はこれが4回目。母国でのその人気は凄まじく、’23年リリースの現時点での最新作『THE GREEN MACHINE』はドイツの総合チャートで第5位にランク・インした。それなのに、ラウダーで朝イチ(しつこいようだが、実際には正午スタート)とはいかに…?

まぁ、これまでのより小さいヴァッキンガーよりは全然イイし、みんな朝からビールを浴びるほど呑みまくるWOAだから、早い時間だって何ら問題ナシ。ノリノリでフィドラーズ流スピード・フォークのシャワーを浴びまくって、観客は歌いまくり&踊りまくり!

ただ、メイン・ステージでの“次”に備えて、3曲ほどでインフィールドへ戻ることに。聞けば終盤には、トビアス・ハインドル(vln)がゴムボートに乗って観客という大海原へ漕ぎ出す(=ボートでクラウドサーフ)サプライズもあったそうで──生で観たかったな〜。

Rainer Schulz(b)&Ralf“Albi”Albers(vo, g, mandolin)

パット・プルツィヴァラ
Pat Prziwara(g, vo)

Tobias Heindl(vln)&Stefan Klug(accordion, bodhran)

フランク
Frank Jooss(dr)

RAVEN

午後12時45分、ハーダー・ステージに登場したのはNWOBHMの生き証人:レイヴン!!

レイヴン

前回出演から実に14年──その’10年はテント・ステージ出演だったから、まだちょっと時間は早いが、遂にメイン・ステージ進出とは何ともめでたい! ’24年はちょうど結成50周年(!)だったのもあり、二重にお祝いしたい気分だ。当時、彼等は“ European Inferno”と題したフェス・ツアーの真っ最中。首魁たるジョン(b, vo)とマーク(g)のギャラガー兄弟は、2人ともとっくに還暦を過ぎているのに、WOAでものっけから全開バリバリの激速パワーでステージ狭しと暴れまくってくれた。

ジョン・ギャラガー
John Gallagher(b, vo)

マーク・ギャラガー
Mark Gallagher(g)

マイク・ヘラー
Mike Heller(dr)

本当は、とりあえず最初の1曲だけにして、ブルヘッドへ移動しウルフを観るつもりだったが、レイヴンの爆裂パフォーマンスが素晴らし過ぎて、また、その11月に予定されていた来日公演
の予習も兼ねて、「こりゃ最後まで観ないと…!」となり、中盤以降、ランチというか遅めの朝食を摂りながら(北ドイツ名物ニシンの酢漬け:マチェスのサンドウィッチが超美味…!)、後半は遠巻きにてではあったが、古豪メタラーの奮闘ぶりをたっぷり堪能させてもらった。

マーク&ジョン
マーク

OOMPH!

続いては、14時からファスターでOOMPH!だ。母国語での活動もあって、日本ではあまり知られていないバンドだが、所謂ノイエ・ドイチェ・ヘアテのパイオニアのひとつとして、あのラムシュタインと並ぶ存在と言ってイイだろう。

OOMPH!

ヘヴィ&キャッチーでスタイリッシュなインダストリアル・メタル・サウンドに、多くのオーディエンスがピョンピョン飛び跳ね、またクラウドサーフもひっきりなし。ザクザク重いツイン・ギターの刻みに合わせて、腕を振り上げヘドバンに興じる者も少なくなかった。

クラップ
Crap(g)

フラックス
Flux(g)

DRAGONFORCE

再びハーダーへ戻って、お次は英国のハイパー・メロディック・スピードスター:ドラゴンフォース!!

ドラゴンフォース

まずは、ステージ・セットにド肝を抜かれる。ドラム・セットを挟むように、その左右には青と赤の巨大なドラゴンヘッド、その外側には、何とアーケード・ゲーム器を模したお立ち台が…! 実はかなり滅茶苦茶な組み合わせだが、ドラフォのレトロ・フューチャーな世界観とは妙にマッチしている…ような。勿論、ステージ中央にも通常の(?)お立ち台があり、サム・トットマン&ハーマン・リのギター・コンビは、必ずといってイイぐらいソロ・パートになるとそこへ飛び乗る。

ハーマン、サム、ビリー・ウィルキンス
Herman Li(g)、Sam Totman(g)&Billy Wilkins(g)

そういえば3人目のギタリストとして、ビリー・ウィルキンスがいたんだった。ドラフォ曲“弾いてみた”動画を見たハーマンが彼を気に入り、オンライン共演からライヴ起用にまで発展したのも、いかにもドラフォらしいエピソードと言えよう。

もうひとり注目は、’19年に脱退したフレデリク・ルクレール(b:現クリエイター)の後任として、サポート・メンバーに抜擢され、その後’22年に正式加入を果たしたアリシア・ヴィジルだ。女性プレイヤーらしい繊細なベース・ワークが光る彼女は、もうすっかりバンドに溶け込んでおり、アクティヴなステージングでも観客を魅了していた。

ハーマン、アリシア、サム
Herman、Alicia Vigil(b)、Sam

マーク・ハドソン
Marc Hudson(vo)

ジー・アンザローネ
Gee Anzalone(dr)

セカンド『SONIC FIRESTORM』(’04年)からの「Fury Of The Storm」でスタートしたショウは、新旧レパートリが上手くミックスされ、最新アルバム『POWER OF THE TRIFORCE』からも「Power Of The Triforce」と「Doomsday Party」が披露。前者では、『ゼルダの伝説』にちなんだ曲ということで、マークがゲーム内で入手出来て調理も出来る鶏肉をネタに、ニワトリのぬいぐるみを観客の中へ投げ込んだりも。

マーク
客席に投げ込まれたぬいぐるみ

いや〜しかし、1時間は短過ぎる…! 見せ場満載なショウに、しばらく実現していない来日公演(豪華なステージ・セットの持ち込みがネックになっている…との噂)にも大いに期待が高まった。

ハーマン&サム
ビリー&マーク
ハーマン

ドラゴンフォース @Wacken Open Air 2024 2024.8.3 セットリスト

1. Fury Of The Storm
2. Cry Thunder
3. Power Of The Triforce
4. Soldiers Of The Wasteland
5. The Last Dragonborn
6. Doomsday Party
7. My Heart Will Go On (Celine Dion cover)
8. Wildest Dreams (Taylor Swift cover)
8. Through The Fire And Flames

SEBASTIAN BACH

ドラフォ終わりでファスターへ向かうと、何だか急激に雲行きが怪しくなってきた。いや、もう降ってますか? でも、ずっと晴れてたから少雨ぐらいは良いかも。そんな中、お次に登場はセバスチャン・バック! そう、元スキッド・ロウのお騒がせシンガーだ。

セバスチャン・バック

ショウは16時半にスタート。そうして幕が上がったのが合図かのように、徐々に雨脚が強くなってきた…かと思うと、あれよあれよという間に土砂降りとなり、さらに雨脚はどんどん強まっていくばかり。ここにきて、まさかのゲリラ豪雨とは…。

それでも、ヴァッケナー達は全く動じない。無論、慌ててその場を離れる観客もいるにはいたが、WOAに通い詰めている猛者達にとっては、こんなのシャワー代わりと言わんばかり。みんな普通に(?)盛り上がっている。そもそも、メイン・ステージ前はだだっ広い野っ原でしかなく、雨宿り出来るところなどほぼ皆無。かろうじて、ビール・スタンドの狭い軒先に逃げ込むか、あとはトイレに駆け込むか…ぐらいしかない。ステージ前に居並ぶメタル・ガード(セキュリティ)達は「よっしゃ、やっぱり降ったか!」とばかりに、何故かみんな笑顔。まぁ、降らないことの方が珍しいワケで、「やっぱこれでこそWOAだよな〜」とはしゃぐその中のひとりに、「ようこそ北ドイツへ!」と言われたりも。

セバスチャン&ブロディ
Sebastian Bach(vo)&Brody DeRozie(g)

これがWOA初見参となるセバスチャンは、スキッド・ロウ時代のデビュー35周年を祝い、そのファースト・アルバム『SKID ROW』(’89年)収録曲をたっぷりやると事前にアナウンス。ショウ1曲目は最新ソロ作『CHILD WITHIN THE MAN』(’24年)から「What Do I Got To Lose?」で、2曲目には早くもセカンド『SLAVE TO THE GRIND』(’91年)表題曲が飛び出すも、以降は『SKID ROW』からたっぷり披露! となれば、雨だろうが何だろうが盛り上がるしかない。

豪雨もおかまいなしに熱狂しまくるオーディエンスに、超絶雨男に違いないセバスチャンも嬉しそうだった。

セバスチャン

驚いたのは、セバスチャンのショウ終盤で小止みになってきた雨が、彼の出番と連動しているかのように、終演間近になってすっかり上がったこと。いやはや、どんだけ強力な雨男やねん…!!

幸い、ゲリラ級の強い降りは短時間だったため、地面のぬかるみはそう酷くない。セバスチャンのショウ開始時には、「今年も遂に長靴の出番かな〜」なんて思っていたが、その必要はなかった。

TESTAMENT

時刻は夕方5時を回ったところで、続いてハーダー・ステージに登場したのは、米西海岸出身ベテラン・スラッシャー:テスタメント!!

テスタメント

前身バンド:LAGACYも含めるとキャリア40年超の彼等は、これが6回目のWOA参戦。同世代の米産スラッシュ・メタル・バンドの中でもかなり多い方だ。よって、フロントマン:チャック・ビリーはWOAのオーディエンスのツボを心得ており、序盤からガンガン煽って熱狂を引き出していく。また、アレックス・スコルニックの流麗かつエモーショナルなギター・プレイに目を奪われ、棒立ち状態になってしまった人も沢山いたことだろう。

チャック・ビリー
Chuck Billy(vo)

アレックス・スコルニック&エリック・ピーターソン
Alex Skolnick(g)&Eric Peterson(g)

スティーヴ・ディジョルジオ
Steve DiGiorgio(b)

セトリ全体を初期2作──『THE LEGACY』(’87年)と『THE NEW ORDER』(’88年)からの曲だけで構成していた作戦も功を奏し、終始クラウド・サーフが止まらず、モッシュにサークルにヘドバンに…と、推定4万人以上がガッツリ暴れまくる様は、何とも凄まじいモノがあった。’22年からドラマーを務めている現在26歳のクリス・ドヴァス(正式メンバーになったのは’23年)については、あまり個性を出すことなくバンド・プレイに徹していたことに、むしろ好感を持ったというファンもいただろうか。ただショウ中間部には、短いながらもドラム・ソロの時間をもらっていたので、スゴ腕だということは強烈な印象と共に伝わったハズだが。

アレックス
チャック

テスタメント @Wacken Open Air 2024 2024.8.3 セットリスト

1. Intro(SE)〜Eerie Inhabitants
2. The New Order
3. Apocalyptic City
4. Raging Waters
5. The Preacher
6. The Haunting
7. Trial By Fire
8. Ds Solo〜First Strike Is Deadly
9. A Day Of Reckoning
10. Do Or Die
11. C.O.T.L.O.D.
12. Alone In The Dark
13. Disciples Of The Watch
14. Over The Wall
15. Into The Pit

BEHEMOTH

続いて、ファスター・ステージに登場したのはベヒーモス! ポーランドが生んだ最凶エクストリーム・メタラーだ!!

ベヒーモス

アンチ・クライストを地でいく背徳的ステージ・セットは、これまでに増してインパクト充分。敬虔なクリスチャンだと、バックドロップを見ただけで卒倒するかもしれない。首魁ネルガル(g, vo)が、2匹のコブラに護られた特製マイク・スタンド越しに歌い(吼え)まくるのも、これまでと同様。いや、常に観客をアジりまくる彼は、ステージ前へ出てくることも少なくない。その際、もし眼が合ったら即座に呪い殺されてしまう…かも?

ネルガル
Nergal(g, vo)

セス
Seth(g)

オリオン
Orion(b)

彼等のライヴが素晴らしいのは、その邪教的世界観がすべてにおいて徹底的に貫かれているからだろう。だからこそ、ネルガルが「Hail Satan!!」などと叫んでも、その本気度の強固さ故に薄っぺらく聞こえたりしない。さらには、メンバー全員の演奏スキル(テクニック云々ではなく)が並外れていて、バンド・サウンドがタイトこの上ないのも、長年にわたってファンを惹き付けて止まない大きな要因であろう。

ネルガル

ULI JON ROTH

ベヒーモスを30分ほど観て、ブルヘッド・シティへ急ぐと、20時よりレジェンド弦仙がヘッドバンガーズ・ステージに大光臨!!

ウリ・ジョン・ロート

そう、唯一無二のスカイ・ギター・マスター:ウリ・ジョン・ロートだ!!

’24年の前半に“Interstellar Sky Guitar”とタイトルされた北米ツアーを行ない、ギター・コンチェルト的ナンバーやクラシック翻案曲、エレクトリック・サンの楽曲もセットに組み込んでいた弦仙。当然、WOAでもそのラインで選曲されるハズと思っていたら、まさかの『SCORPIONS REVISITED』(’15年)セットで「あれれ?」…と。

いや、それはそれで素晴らしいのだが、’13年も、’15年も、’17年もそうだったから、今回は蠍団以外で…と期待したのに──またまた毎度お馴染み「All Night Long」から始まってしまった。流石に4度目ともなると、「“ELECTRIC SUN REVISITED”は!?」と叫びたい気分だ。弟ジーノを偲び、途中「Don’t Tell The Wind」(’86年『ZENO』収録)をやってくれたのは、多くのファンの涙腺を崩壊させたに違いなかったが…。

ウリ
Uli Jon Roth(g, vo)

ニクラス・トゥアマン
Niklas Turmann(b, vo)

デヴィッド・クロジンスキー
David Klosinski(g)

ところで──ウリといえば、この土曜日の午後2時頃、バックステージにて自身の著書『In Search Of The Alpha Law』についての記者会見も行なっていた。スコーピオンズ作品を多数手掛けている伝説的プロデューサー:ディーター・ダークスも同席してのその内容については、このリンクを参照されたい。

解説中のウリ

ウリは間もなく来日公演を行なうが、その際も特別な公演でこの著書について話す機会があるそうなので、そちらも要チェックだ!

AMON AMARTH

そんなウリの文字通り神懸かり的ギター・プレイをしばし堪能し、8時半過ぎにメイン・ステージへ。次に登場したのは、スウェーデン産ヴァイキング・メタラー:アモン・アマース!!

アモン・アマース

彼等もまた、WOA常連中の常連で、何とこれが出演10回目! ステージ上には、古えのヴァイキング戦士の巨大石像が二体そびえ立ち、ドラム・セットも巨大なヴァイキングの兜の上に設置されている。ショウ開始と同時に、大きな火柱がドバドバ上がりまくるのも、アモンのライヴではいつもの光景だ。

メンバー全員が、今に生きるヴァイキング戦士そのものといったルックスなのも大きな魅力。その重厚なる佇まいは、どっしりヘヴィなバンド・サウンドと見事にシンクロする。ヴァイキンガーといってもフォーク・メタル一派ではなく、闘争本能を掻き立てるリフ一発の美学、野太いグロウルの“漢”臭さこそが肝で、勇壮にして雄々しい劇的デス・メタル一筋で勝負してきたのも、このバンドならではと言えよう。

ヨハン・ヘッグ
Johan Hegg(vo)

オラヴィ・ミッコネン
Olavi Mikkonen(g)

ヨハン・ソーデルベリ&テッド・ランドストロム
Johan Soderberg(g)&Ted Lundstrom(b)

アモン・アマース

FLOTSAM AND JETSAM

しかし、凍てつく北方の氷原でバトル…といった世界観に身を置いてばかりもいられない。ハッと我に返って、「次に行かなきゃ…」とブルヘッドへ向かうと──W:E:Tステージにて21時15分より、フロットサム・アンド・ジェットサムのショウがスタート!

フロットサム・アンド・ジェットサム

ベテラン・スラッシャーの彼等は、事前に“スペシャル・オールドスクール・セット”をやるとアナウンス。実際、デビュー作『DOOMSDAY FOR THE DECEIVER』(’86年)冒頭曲「Hammerhead」で幕開けたショウは、セカンド『NO PLACE FOR DISGRACE』(’88年)からのナンバーも含め、確かに初期レパートリーのみで組み立てられていた。

エリック・AK
Eric A.K.(vo)
マイケル・ギルバート&スティーヴ・コンリー
Michael Gilbert(g)&Steve Conley(g)

実はそのアモンとフロッツの裏で、クレイドル・オブ・フィルスがラウダー・ステージに登場していたのだが、流石に無理…と、早々に断念。一旦メインへ戻って、アモンの終盤を贅沢にもBGMに、マーチャンを買ったり、遅い夕食を摂ったりすることに。

コレ ↓ は昼間の様子だが、マーチャン・ブースが以前ほど混んでいない…というか、あまり混まなくなったのは、キャッシュレス(リストバンドのチップにチャージ)の恩恵と言えよう(あと、オンラインでの事前購入も可能になっていた)。

マーチャンダイズ

バンドTは、WOA限定デザインを売るバンドもいて、出演日にしか買えないこともあるから要注意。大半が30〜35ユーロで、もうちょい安く売るバンドもあれば、1枚50ユーロとかそれ以上…というバンドも。しかし、買おうかどうしようか迷っていたら、早々に売り切れてしまうことも少なくない。あと、フェスTは色んなデザインがあり(下記写真はその一部!)、やはり中心価格帯は30〜35ユーロで、これも人気のデザインは、金曜日にはもう在庫切れになっていた。

Tシャツ購入

アモン終演後、ファスター・ステージにて主催者から観客に向けての謝辞があり、’25年に出演が決定した最初の34バンド(第34回に合わせて)の発表が、何とも壮大に行なわれる。この年は、メイン・ステージ周りの巨大スクリーンすべてを使って、派手な照明やパイロを駆使し、スペシャル・アナウンスメント・ムービーが流され、一部生パフォーマンスもあって、さらには大規模なドローン・ショウも。それらは年々豪華になっていってるような。

WOA 2025のテーマは“エイリアン”。だから、ムービーもドローン・ショウも、やたらUFOが目立っていた。驚いたことに今年は、そのテーマに沿って、いつものフェス本体に加え、宇宙にまつわる展示ブースや、宇宙飛行士のパネルなんかも行なわれるのだそう。

実はその“2025 Announcement Show”をすっかり見逃してしまった。何故ならその時、ラウダー・ステージにいたからだ。(あと私事ながら、もうこの年でWOAは“卒業”──’25年は不参加と決めていたからでもあった) 遠くのメインで照明がピカピカ凄いことになってて、大量のドローンが飛んでいるのも見えたが、それどころではなく──22時45分からのメイヘムのショウに観入っていた…という次第。

MAYEHM

メイヘム

このノルウェージャン・ブラックの権化は当時、9月からの40周年ツアーの前哨戦とでも言うべき、サマー・フェス転戦の真っ最中。スクリーンを駆使したショウは、サブ・ステージとはいえかなりのスケール感だ。異形のアッティラ(vo)は芝居掛かった動きでステージ上を右へ左へ、上へ下へと歩き回って呪詛の言葉を吐きまくり、極悪ギター・チーム:テロックとグールも怒涛の刻みで邪悪な宴を盛り立てる。

アッティラ・シハー
Attila Csihar(vo)

テロック
Teloch(g)

グール
Ghul(g)

ネクロブッチャー
Necrobutcher(b)

そういえば、テロックとは違い、グールはコープス・ペイントをしていない。それを言うなら、唯一のオリジナル・メンバーであるネクロブッチャー(b)もそう。ただ──途中、亡きデッド(vo)とユーロニモス(g)に捧げられた「Freezing Moon」(’94年『DE MYSTERIIS DOM SATHANAS』収録)などでは、メンバー全員が頭巾をかぶった魔導士スタイルで演奏したりもしていたようだ。

ショウ最終盤には、伝説的EP『DEATHCRUSH』(’87年)からの3連打:「(Silvester Anfang〜)Deathcrush」「Necrolust」「Pure Fucking Armageddon」にて、オリジナル・ドラマー:マンハイム、’85〜86年在籍の初期シンガー:メサイアがゲスト共演。新旧のファンが感涙したのは言うまでもない。

ただ、早々にラウダーを離れ、一路ウェイストランド・ステージへ向かったため、実のところ冒頭2曲しか観られず…。というか、ウェイストランドの遠いこと…遠いこと! 歩いても歩いてもなかなか辿り着けず、やっとそれが見えてきた時、思わず「こんな奥にあるんか…」という言葉が口をついて出てしまった。

そこで既に演奏中だったのは、アンドラ公国の至宝:ペルセフォネ!!

PERSEFONE

ペルセフォネ

毎年ウェイストランドでは、主にスラッシュ系のバンドが次々出てくるのだが、何故かこの年は、内省プログ・メタラーの彼等がクロージングを務めていた。時に激烈に、時に幽玄に、エモーショナルに、テクニカルに独自音世界を構築していく彼等は、果たして野外だとどうなのか…と思ったら──幻想的な照明の下、真夜中近くという時間帯もあって、その深淵なるサウンドは余計に沁み入ったのである。

カルロス・ロザーノ
Carlos Lozano(g)

フィリップ・バルダイア
Filipe Baldaia(g)

無論、師弟ギター・コンビ:カルロス・ロザーノ&フィリップ・バルダイアの安定感と安心感のあるシュアなプレイも、心地好さの一因だったろう。このまま身を任せていたい気持ちがどんどん強まっていくも、またインフィールドまで遥々引き返さねばならないため、30分ほど堪能し、元来た道を戻ることに。

HÄMATOM & FiNCH

というか──いよいよWOA 2024も終幕が近い。ダブル・メイン・ステージの最後を飾るヘマトムの出番だ。このノイエ・ドイチェ・ヘアテの雄は今回、ハーダー・ステージにてジャンルを跨いだ“対決”を行なった。

ヘマトム

対決相手はラッパーのFiNCH。いや…何者なのか正直よく分からなかったが、ドイツ本国ではチャートNo.1も獲得している大人気ラッパーなのだとか。どうやらヘマトムは、敢えてジャンル違いの彼と“対決”することで、自らの可能性を突破しようと試みた…らしい。

ちなみに、ベーシストのヴェストが’23年に急逝し、その後しばらくセッション・メンバーを起用していたヘマトムは、’24年になって女性ギタリスト:ロゼを迎えている。ヴォーカルのノード、ギターのオスト、ドラムのズードは不動のままで、ベースレスのツイン・ギター編成となっていたのだ。

ノルド
Nord(vo)

オスト
Ost(g)

ロゼ
Rose(g)

ところで──この土曜日、FiNCHはベルリンだかでショウがあり、どう考えてもWOA出演は無理…と、当初この“対決”は実現不可能だと言われていた。しかし、ヘマトムからの挑戦を受けたFiNCHは、ヘリコプターをチャーターすると、自身のショウを終えてすぐ、WOA会場まで文字通り飛んできたという。

フィンチ
FiNCH

ステージ上には、両者を隔てる壁が設けられ、それぞれ交互に演奏。ヘマトムがヘヴィ・チューンを放つと、FiNCHはバカにしてダンスを踊り、逆にFiNCHがラップで対抗すると、ヘマトムの面々が「退屈じゃ」とばかりに無視を決め込む。ここはWOAだからして、FiNCHにブーイングを浴びせる観客も少なくなかった。

オスト&フィンチ
FiNCHのラップ・パフォーマンスに大あくびのオスト。

ところが、互いに「あれ? 悪くないな…」と、徐々に打ち解けてきたノードとFiNCHは、中盤になって握手を交わし、デイヴィッド・ハッセルホフの「Looking For Freedom」を一緒にカヴァーすると、それで一気に距離が縮まり、互いの曲をカヴァーし合ったりもして、最終的にはめでたし、めでたし…と。そうして歴史的(?)コラボを祝い、ステージ上の“壁”も取り払われるのでした〜。

オスト&フィンチ
「何か一緒にやる?」「イイね〜」と、すっかり打ち解けた2人。

まぁ、出来レースだとか言うのはナシね。壁がなくなって、いがみ合っていた両者が共演し、共に盛り上がる…というのも、ドイツ人には色々と刺さるのだろう。

ただし、一連の流れはすべてドイツ語で進行されていったし、そもそも現場では「FiNCHって誰?」状態だったので、最初「W:E:Tにインソムニウムを観に行けば良かった」とか思ったのは、今となっては内緒にしておこう。(?)

会場

そして──メタルとヒップホップの友情が育まれ、固い絆が結ばれた午前2時、’24年のWOAは静かにフィナーレを迎える。繰り返しになるが、終わってみれば、本当にあっという間だった。サラッと上記もした通り、これで個人的にはWOAを“卒業”し、この夏は(コロナ禍を除いて)20数年ぶりに猛暑の日本でのんびりしようかと。

ただ、今年行かれるみなさんはどうかお気をつけて。晴れでも雨でも──“RAIN OR SHINE”ということで、無二のメタルの聖地を存分に楽しんできてください! いや〜しかし、WOAにGNRが出る日がくるとはね〜。

WOA2025フライヤー

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