JAM Projectへの参加をはじめ、アニソン・シンガーとしての活躍で知られる福山芳樹が、今年の3月に最新ソロ・アルバム『マグノリア』を発表した。そしてこの夏、本作に伴うツアーを大阪、名古屋、東京の3ヵ所で開催。最終日にあたる東京公演が、先日渋谷にて行なわれた。シンガーとしてだけでなく、ギタリストとしても確固たるキャリアを持つ福山のパワーが炸裂する充実のライヴだったが、ここではまずそのレポートをお届けしよう。また、次ページでは福山本人による解説付きで当日の使用機材も紹介しているので、あわせてチェックして戴きたい。
参照:福山芳樹 “MAGNOLIA TOUR 2015”使用機材解説
ギタリストとしての福山の魅力を感じたソロ・ライヴ
まずは簡単に、福山のこれまでの経歴を紹介しよう。1991年、ロック・バンド:HUMMING BIRDのギタリスト兼ヴォーカルとしてデビューした福山は、2000年の解散までに同バンドで5枚のアルバムをリリース。その間にアニメ作品への楽曲提供も行なっており、中でも’90年代半ばの人気アニメ『マクロス7』への参加は大きな転機となった。福山は同作の主人公である架空バンドFIRE BOMBERのフロントマン、熱気バサラが劇中で歌うシーンの吹き替えを行なう “歌バサラ”を担当。楽曲制作と歌のみならずギターのレコーディングにも関わり、FIRE BOMBER名義で1995年にリリースされたアルバム『LET’S FIRE!!』は翌年の日本ゴールドディスク大賞アニメ部門において“アルバム・オブ・ジ・イヤー”を受賞するなど、大きな話題を呼んだ。FIRE BOMBERの楽曲はその後、福山ら実在するミュージシャンによって実写版ならぬ実写バンドのライヴで演奏され、放映から約20年経った現在に至るまで根強い人気を集めている。
2003年には、影山ヒロノブをはじめ5人のヴォーカリストで編成されるアニソン・グループ、JAM Projectへ加入し、国内外を問わずアニメ・ファンからの大きな支持を獲得する。また同年には1stアルバム『叫ぶ男の肖像』のリリースでソロ活動もスタート。ソロ名義では「キングゲイナー・オーバー」(’02年『OVERMANキングゲイナー』)「真赤な誓い」(’06年『武装錬金』)などといったアニメ関連の楽曲に携わることでも高い評価を得ている。そして今回、ソロ通算8枚目にあたる『マグノリア』が発表されたというわけだ。
ショウはまず、HUMMING BIRD時代の爽快なハード・ロック・チューン「遥かなる海へ」で幕を開けた。早速、力強い歌声とバンド・サウンドが満員の会場を熱気に包み、ぐいぐいと引っ張っていく。盤石の演奏でバックを固めるのは、ドラマーに元HUMMING BIRDの麻生祥一郎、ベースにはてつろうこと森田哲朗、そしてキーボードにPONchanこと横田 昭。それぞれ、国内で幅広く活躍する凄腕のベテランであり、F BANDという名称で、福山のソロ活動を長年支えている。このバンドは、とにかく全員が楽しそうなことが一番のポイントだ。福山も常にポジティヴなエネルギーを全開にして、楽しそうな表情でしっかりと歌いながら愛器のストラトキャスターを弾いている。ジミー・ペイジを思わせる風貌には一見ちょっと強面な印象もあるが、MCでの自然体な語り口調には場が和み、温和な人柄がにじみ出ているようだった。なお、現在も折に触れてマクロス・ナンバーを演奏することのある福山だが、本ツアーにおいてはそちらからの選曲はほとんどなし。自らが関わったマクロス7以外のアニソンと、オリジナル楽曲が中心のセットリストとなっていた。
6曲目からは、最新ミニ・アルバム『マグノリア』のコーナーだ。まずはピアノの前に座った福山がタイトル・トラック「マグノリア」を弾きながら歌い始める。6曲の収録曲すべてが披露されたが、本作は「ジャングルジム」「長い祈り」をはじめ温かみのあるサウンドのロック・バラードが多く、ステージにも作品同様の和やかなムードが漂っていた。そこへ福山の表現豊かなヴォーカル・メロディー、時折挟まれるバック・コーラス、そして歪みを効かせたギターのサウンドが、優しい曲調に熱さと芯の太さを持たせている。歌メロをリフレインさせた「黒い瞳のネロリー」や、マクロス楽曲にもあった福山特有のフレーズが顔を覗かせる「風と風」などのソロ・パート、そしてファンク風のグルーヴィなリフが印象的な「モヘンジョダロにて」など、巧みなギター・ワークで観客を魅了していた。
新作の後にはガラリと趣が変わり、歌詞や曲調の陰鬱な「鵺の森」「サナギ」といったバラードを、ピアノ演奏を交えて披露。その変貌ぶりにコンポーザーとしての奥深さを感じさせたところで、再び福山の本領発揮となる快活なハード・ロックの登場だ。「NANANA」でのアーミングを聴かせたソロ、「ゼロになれ」での怒濤の弾きまくり、「GET FREE」でのジミー・ペイジやブライアン・メイを彷彿とさせるメロディアスなリックなど、ロック・ギタリスト然たるアティチュードに溢れている。喉の調子も実に良く、「複眼」のようなヘヴィ・チューンでも強靭でしなやかな歌声やシャウトをみせつけてくれた。場内のテンションも上がる一方で、パワー漲るキメの1曲「真赤な誓い」では最大級の大合唱が起こり、この日のクライマックスに。
アンコールは各バンド・メンバーをフィーチュアしたメドレーが行なわれるのが恒例となっており、この日はツアー最終日ということで通常よりも大幅に尺を延長。ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンなど、福山直系のルーツといえるクラシック・ロックのカヴァー曲の連打で大きな盛り上がりをみせ、3時間に及ぶライヴは大盛況の内に幕を閉じた。
福山芳樹+F BAND 〜YOSHIKI FUKUYAMA MAGNOLIA TOUR 2015〜セットリスト
1. 遥かなる海へ
2. DREAM JACK
3. 俺は今日から宇宙人
4. しあわせの涙
5. MIRACLE SKY
6. マグノリア
7. 黒い瞳のネロリー
8. 風と風
9. ジャングルジム
10. 長い祈り
11. モヘンジョダロにて
12. サナギ
13. 鵺の森
14. 羅針盤〜go ahead〜
15. 複眼
16. NA NA NA
17. ゼロになれ
18. GET FREE
19. 真赤な誓い
20. この空の下に君がいるから
Encore
21. RIDE ON THE NIGHT
22. ねここしゃん〜君だけの翼〜Glory Days〜スイヘイリーベ〜魔法の呪文〜メドレー(Burn、Whole Lotta Love、Smoke On The Water、We Are The Champion、We Will Rock You〜魚つりの歌)〜ねここしゃん
(2015.7.26 at 渋谷club DUO)
参照:
福山芳樹 “MAGNOLIA TOUR 2015”使用機材解説