ONE MORE LIGHT/リンキン・パーク

ONE MORE LIGHT/リンキン・パーク
アーティスト名LINKIN PARK
リンキン・パーク
アルバム名 ONE MORE LIGHT
ワン・モア・ライト

CD | ワーナーミュージック・ジャパン | 2017年5月19日発売

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iTunesのジャンル分けで“Metal”とタグ付けされるのが一級の皮肉に思えてくる。メタル・ギターはほぼなし、腹に響くビートもシャウトもここにはない。徹頭徹尾“歌”を中心に据えた作品であり、リンキン・パーク史上最大の冒険作と断言してよい。前作『THE HUNTING PARTY』(’14年)はペイジ・ハミルトン(g)やトム・モレロ(g)をゲストに迎えたメタル全開の仕上がりだっただけに、今回もその延長かと思っていた。しかし、聴けども聴けども優しく包容力のあるメロディーが流れてくる。プロデューサーにリック・ルービンを起用して一皮剥けた『MINUTES TO MIDNIGHT』(’07年)の驚きなど比較にならない。

自分自身、当初は非常に困惑した。チェスター・ベニントン(vo)による内省的なソロ・アルバムと言われれば納得もするが、あくまでもリンキン・パークの新作なのである。困惑が気持ちよさに変わったのは、およそ10回ほどリピートしてから。すーっとメロディーが入ってくるようになり、純粋に完成度の高いアルバムとして楽しめるようになった。

彼らの狙いは、私のようなステレオタイプな聴き手の思考を吹き飛ばすことにある──そう確信できるチャレンジングな作品。マイク・シノダ(vo etc.)が歌う「Invisible」は名曲だと思う。ともあれ、生まれ変わったリンキン・パークを素直に祝福したい。

【文】小口正貴