LIVING THE DREAM/SLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORS 史上最高の泣きと歌心

LIVING THE DREAM/SLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORS 史上最高の泣きと歌心
アーティスト名SLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORS
スラッシュ・フィーチュアリング・マイルズ・ケネディ・アンド・ザ・コンスピレイターズ
アルバム名 LIVING THE DREAM
リヴィング・ザ・ドリーム

CD | ユニバーサル ミュージック | 2018年9月21日発売

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’12年の『APOCALYPTIC LOVE』時のメンバーで結束しながら、長らくツアー・サポートを務めてきたフランク・シドリス(g/元ザ・キャブ)を正式に迎え入れたスラッシュ(g)のリーダー・バンドの第3作(ソロ名義では通算4作目)。前作に続きマイルズ・ケネディ(vo/アルター・ブリッジ)の魅力を立てる舵取りがなされており、伸びやかな歌声で大きな世界観を丁寧に紡ぐ彼のメロウな個性を見つめながら、演奏家、作家としても技量を磨き広げていっているバンドマスター:スラッシュである。
ブルースとオルタナの暗さと湿り気を交配させ、マイルズの渋い低音を引き出したヘヴィ・バラード「Lost Inside The Girl」のダイナミクスと深さは、このコンビの1つの到達点か。同曲も含め、朗々とした歌い回しに共振したかのようなメロウなギター・リックも豊富な今作は、溢れる歌心に対するスラッシュのアンサーを追うのも一興。暴発するシンガーに合わせて獰猛に弾きまくり…というこのバンド外のキャリアに見られたアプローチは、ここでの相方の個性に合わせて鳴りを潜めた感がある。映画音楽やクラシック音楽を吸収した体の壮大なバラード「The One You Loved Is Gone」「The Great Pretender」のソロにおける、史上最高の泣きと歌心は筆舌に尽くしがたい。リズミカルなリフの刻みとアルペジオを絡ませた「My Antidote」のモダンなアプローチも刺激的だ。この男は今も成長している。

【文】菅原健太