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SPELLBOUND/YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE

スペルバウンド/イングヴェイ・J・マルムスティーン

アーティスト名 YNGWIE J. MALMSTEENユS RISING FORCE
イングヴェイ・J・マルムスティーン
アルバム名 SPELLBOUND
スペルバウンド


CD | ユニバーサル インターナショナル | 2012年12月5日発売

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往年のファンには言うまでもないことだが、もし、イングヴェイ・マルムスティーン('Sライジング・フォース)を聴いたことがない若い本誌読者がいるならば、ぜひいくつかの作品にはじっくり触れておいてほしい。ロック、とりわけヘヴィ・メタルの世界に革新をもたらした重要ギタリストとしての歴史的存在感は今も変わらずにある。約2年振りとなる本作を聴くと、改めて個性的もしくは普遍的であることの意味を考えさせられるのだ。

オープニングに配されたタイトル・トラックを耳にした際、瞬時に思い浮かんだのは'84年に発表された名作『RISING FORCE』。更に楽曲が進んでいくと、知らず知らずのうちに過去の様々なアルバムを想起していた。この辺りの感覚は聴き手によって異なるにせよ、やはり30年前に確立された自身のネオ・クラシカル・スタイルは頑なに貫かれている。哀愁漂うブルージーな味わいの(3)(10)、いかにも彼らしい取り組みの(5)(11)等々、予想していた以上に堪能できる内容だ。例によって、自宅スタジオにてすべてを自身で取り仕切ったサウンド・プロダクションには賛否両論があるだろう。ただ、昨今のテクノロジーで調整された音像とは一線を画す、フィンガリングやピッキングの荒々しいニュアンスまで如実に伝わる生々しさは、逆説的に訴求点にもなり得る。ヴォーカルを含めた全パートを本人が手掛けたのも話題だが、これによるマイナス・イメージはない。
(土屋京輔)

'83年、単身アメリカに渡った20歳直前の若きヴァイキングも、来年6月で50歳。キャリア30周年を迎える。その中でも珍しいのが、好みでないと言ってきたインスト系アルバムだが、今回、前作以上にその度合いを深めて来た。

“Pro Tools”の効用でオーケストレーションも高めることに成功した作曲&アレンジ、そしてすべての楽器をコナしてプロデュース、ヴォーカル曲は歌詞を書いて自ら歌っている((3)(4)(8)中、かつてないメタル的な歌い回しの後者2曲は新機軸!)。ついでに言うと、ストラトはストラップ・ピンがロック式にアップデートされた王者シグネチュア・モデル、マウントされたP.U.は超こだわりのセイモア・ダンカン“YJM Fury”、マーシャル・ヘッドは通常より胴回りが厚い“YJM100”、オベーションのエレアコは“YM63”“YM68”…等々、機材もことごとく“イングヴェイ印”だ。「俺が俺が」はそこまでに及んでいる!? 人の手を借りたのは録音機材を扱うエンジニアリングくらいか。

そんな中、編曲の妙で光るのは序奏のサンプル音源ヴァイオリンから「Far Beyond The Sun」彷彿(!?)で幕を開ける組曲(5)、モーツァルトのパラフレーズ(11)からの(12)、原曲は16歳の頃に録った(6)。ギターに関して言えば、お馴染み開放リックが心地好い(1)、アルペジオのキメまくり(9)、そして(5)が“動”、一方、“静”としては涙ナミダの(13)が特筆だ。これらによってファンはspellbound状態に陥るだろう。
(福田真己)