UNDERWORLD/SYMPHONY X

UNDERWORLD/SYMPHONY X
アーティスト名SYMPHONY X
シンフォニー・エックス
アルバム名 UNDERWORLD
アンダーワールド

CD | ビクター | 2015年7月22日発売

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ラッセル・アレンはアドレナリン・モブの活動でワイルドなシンガー像を常時更新中だし、マイケル・レポンド(b)も昨年発表したソロ・プロジェクト作品(マイケル・ロメオ/gも参加)がかなりストレートに荒っぽいパワー・メタル作品だったのでどうなることかと思ったが、やはりこのバンドの名の下に集まった時に発動する重厚ドラマティック願望や作り込み意欲の高さには圧巻のひと言しかない。“プログレッシヴ・パワー・メタル”を実践すること20年超の老舗が4年ぶりに放つ9作目。安心爽快なスケール感で迫る。

ダンテ『神曲』に題材を取ったコンセプト作とのことで歌詞やメロディーに多くの知的遊びが凝らされているらしいが、’02年作品『THE ODYSSEY』のような凝り過ぎ感はなく、各曲の起承転結が練り込まれていてキャッチーささえ浮かび上がってくる場面も多い。ネオ・クラシカルな弾きまくりをモダンなリフや突撃感と掛け合わせて曲をドライヴするロメオのギターとマイケル・ピネーラの鍵盤も冴えまくり、高速高難度フレーズが求められるタイミングや尺がドラマ性の中で的確に計算されている様子。アレンの歌も野性味と叙情性の両面がちゃんと引き出されている。これらはひとえにメンバー全員の高いアンサンブル意識の賜物。“プログレッシヴ”と“パワー”を折り合わせる手腕に洗練が著しい、王者渾身の1作だ。
(平野和祥)