アーティスト名 | SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS スラッシュ |
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アルバム名 | WORLD ON FIRE ワールド・オン・ファイア |
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スラッシュ(g)のソロ名義としては3作目となるアルバムが登場した。前作『APOCALYPTIC LOVE』(’12年)と同じようにアルター・ブリッジのマイルズ・ケネディ(vo)、ザ・コンスピレーターズと名乗るトッド・カーンズ(b)&ブレント・フィッツ(dr)の2人をフィーチュアしたバンド・スタイルで制作されているが、ツアーを通じて4人の一体感が増し、“バンド”としてのクリエイティヴィティが上がったことを示すかのような力作に仕上がっている。
前作はスラッシュらしさが存分に発揮されたという意味で期待通りの作品であったが、本作はその次作というよりハードルの高い期待を遥かに越えた、良い意味での想定外の内容になったという印象だ。ハード・ロックというスタイルはそのままに、どの曲もギター・プレイ、ヴォーカル・メロディーなどすべてのパートにおいて驚くほどのグレード・アップが図られており、何よりも曲そのものの完成度の高さが際立つ。4ピースの生々しさや躍動感を全面的に出しているのが特徴で、あくまでもスラッシュのギターを主役にしているのが聴きどころだ。切れ味鋭いギター・リフから始まるアップ・テンポな「World On Fire」に始まり、多彩なサウンドとプレイを織り交ぜたバッキング、スポンティニアスかつメロディアスなソロなど、正直、スラッシュがこんなギターを弾くのかと思うようなフレーズも満載されている。まさにスラッシュの魅力がリアルかつダイレクトに発揮された作品。
(Jun Kawai)
リフ/リードともに独自のスタイルを持ち、一聴してその人だと分からせるプレイヤーをギター・ヒーローと呼ぶならば、スラッシュは間違いなくそこに名を連ねるべき人物だ。だが同時に、この人ほどバンド・アンサンブルの中にあってこそ力量を発揮できるプレイヤーもいないのではないか。そのバンドは、エゴの寄せ集めでもダメだし、彼の名前にぶら下がるだけの連中でも輝けない。クリエイティヴであることに貪欲なロックンローラーどもこそが、スラッシュをスラッシュたらしめるのである。
ソロ名義で3作目となる本作は、’12年の前作『APOCALYPTIC LOVE』と同じメンバーで制作されており、生々しくライヴ感満点だった前作よりもさらにスタジオ・アルバムとして緻密にプロデュースされてはいるものの、バンド・アンサンブルはより強固なものとなっており、それゆえにスラッシュのプレイがさらに映える。平たく言えば、名義こそソロだが、ギターを中心としたバンド・アルバムとして非常に優秀な作品に仕上がっている。そしてもう1つ特筆すべきは、スラッシュはもちろんのこと、制作に関わった誰もが本作と往年のガンズ・アンド・ローゼズとの比較を全く恐れていない、ということだ。ヴォーカルの爬虫類度を高くしてスタイルの異なるリズム・ギターが入ったら…という想像が否でも膨らむが、本作はそこに何の遠慮もこだわりもない。だからこそ、ここまで吹っ切れた快作が生まれたのだ。
(小澤明久)