今回、NAMMショウ・レポートを行なってくれたSyuが現地を訪れた最大の目的は、彼がエンドースするESPのブースにて(1月22日・23日の両日)デモンストレーション演奏を披露すること。このレポート当日(23日)、Syuの出演前に同ブースでデモ演を行なっていたのがジョージ・リンチ(KXM etc.)で、言わずもがな彼らは同じESPエンドーサーであり、2人はかつてYGの企画で共演も果たしている。そこで、この絶好のタイミングに乗っかり、Syuとジョージに対談をしてもらうこととなった。ジョージはデモ演直後、Syuは出番直前という状況だったが、2人はリラックスして打ち解けた様子で、ざっくばらんに語り合ってくれた。
これほど長く続いたものなんて、俺の人生には他にない(笑)——ジョージ
Syu(以下S):デモンストレーション、お疲れ様でした! 手応えはどうでしたか?
ジョージ・リンチ(以下GL):……(苦笑)。いや、昨日は良かったんだよ。でも、今日はあまり良くなかった。何があったかというと、クルーが俺のアンプや機材をバラしてセッティングを変えてしまったんだ。それを元通りにするほどの時間もなくてね…。こういうことはめったに起こらないんだけど、早くステージを降りたくてたまらなかったよ…(苦笑)。
S:それでもピッキングが強烈で、特にピッキング・ハーモニクスの音なんて素晴らしく気持ち良かったです。
GL:ありがとう。そう言ってもらえると、ちょっとは気が楽になるよ(笑)。
S:ジョージさんはほぼ毎年、NAMMショウへ来ているんですか?
GL:そうだね。たぶん、最初に来たのは’80年代半ば——もう30年以上、ほぼ毎年ここに来てギターを弾いているよ。だから、今回だってちゃんとパフォーマンスできなきゃいけなかったのに!(笑)
S:当時からESPのギターを使っていたんですか?
GL:具体的にいつ頃から使い始めたかは思い出せないけど、’80年代半ばからだったことは確かだ。だから、NAMMでもずっとESPを弾いてきたことになる。30年か…俺の人生の半分だよ!(笑)
S:ESPは今年で40周年ですけど、ジョージさんはその半分以上を一緒に過ごしてきた…ということですね。
GL:ESPから何かもらえないのかい? 時計とか盾とか…(笑)。
YG:30周年の際には、お2人には弊誌の企画で一緒にセッションをしていただきましたよね。大村孝佳さんとガス G.と一緒に4人で。
GL:あれはもう10年前か…。君は女の子みたいだったよな!
S:赤いコスチュームを着ていたから…(笑)。
GL:赤いドレスだったろ?(笑) 可愛い顔をしてて…、実は口説こうとしていたんだよ!(笑)
S:(笑)。あの時、ジョージさんには「君は日本のランディ・ローズだ」って言ってもらえましたよ。
GL:もう10年も前だけど、みんないいプレイをしていたことは憶えているよ。ちなみに、キミはESPを使い始めてどれぐらいなの?
S:11年ぐらいになります。
YG:お2人とも、それほど長期に渡ってESPギターを使い続けてきたわけですが、その理由はどんなところにあると思いますか?
GL:俺は、これまでにESPと一緒に作ってきたすべてのギターを本当に気に入っている。ヴィンテージ・ギターの良さと新しいテクノロジーを合わせ持っているというか…両方の良い点を備えたハイブリッドでハイ・クオリティなギターばかりだったからね。ごく最初の頃に作ってもらった“神風”や“Yellow Tiger”なんて、いまだに現役でプレイしているぐらいだからね。
S:ジョージさんが言ったように、ヴィンテージ・ギターの良さとESP独自の最新技術の融合というのは、僕も凄く感じます。プレイしていて、本当に快適なんですよ。僕は、自分の好きなように結構ワガママな感じでギターを作ってもらってますけど(笑)、凄く丁寧に作ってくれてて…とにかく弾きやすい。
GL:うん。どんなギター・メーカーでも、とりあえずアーティストの要望に応えるギターを作るだけの技術は持っていると思うけど、問題はそのクオリティだよね。格好・形だけなら、どのメーカーだってそれなりのものを作ることはできると思う。ただ、そこに高いクオリティも持たせるとなると…。でも、30年前に俺がESPと組んで以来、他のメーカーに移る理由が全く見い出せないほど、ESPのギターはクオリティの高いものだった。そしてSyuが言ったように、こちらのどんな要求にも応えてくれるので、俺自身が持っていた色んなアイデアを試すことができて、それも俺にとっては大きなメリットだった。そうやってESPと俺は共に成長してきたと思っているよ。友達になり、家族のようになり、ここまで来たんだ。これほど長く続いたものなんて、俺の人生には他にないんじゃないか?(笑)
ジョージさんみたいな音が出せなくて、イライラしてギターを投げそうになった(笑)——Syu
S:これが僕のシグネチュア・モデルで、“CRYING STAR”といいます。
GL:ああ、確かにスターみたいだな。(弾いてみて)とても鳴りが良いね! それに、(ボディーをコンコンと叩いて)こうやっても木の鳴りが分かるんだよ。叩いて、その音に耳を澄ますんだ。その時の音が良ければ、アンプに繋いで鳴らした時の音もきっと良いはずなんだ。これ(“CRYING STAR”)は叩いた時の音も良いね。
S:なるほど。さすがですね(笑)。
GL:今思うとバカな話なんだけど——昔、ツアーに持って行ったギターがポリ系のちょっと分厚い塗装だったんだ。それが当時の俺にはボディーの鳴りを殺しているように思えてさ…。ツアーの途中で、サウンド・チェックの最中にドライヴァーで塗装を全部はがしてしまったよ。おかげでただの木片になってしまった(笑)。
S:あらら…(笑)。
GL:せっかくカスタム・メイドしてもらった特別なグラフィックのギターだったのにね(苦笑)。俺はそうやってギターをイジくり回してしまうことがよくあるんだよ。でも、そうすることでいろんな知識を得ていったんだ。
S:ジョージさんは、自分でギターも作ってるんですよね? YGで記事を読んだことがあります。
GL:そうなんだ。もう50本ぐらい作ったかな。年間10本で、もう5年続けているよ。ESPカスタム・ショップの職人に習いに行ったりもしたし、ギターを作る時はそこの機械を使わせてもらったりしているんだ。ブランド名は“Mr. Scary Guitars”っていうんだけど、そのうちESPを吸収して、“Mr. Scary Guitars”の一部門にしてしまおうと思っているんだ!(笑)
S:今度、僕のギターも作ってもらえたら嬉しいですね(笑)。ただ、ジョージさんが弾くとどんなギターでもジョージさんの音になるので、やっぱり大事なのは“手”なのかな…とも思いますけど。
GL:まぁ、そうであってほしいとは思うけど、必ずしもそうとは限らないよ。俺にも弾けないギターだってあるし、俺らしい音やプレイにならないこともある。そういう意味でも、俺とEPSギターはやっぱり相性が抜群なんだと思う。
S:なるほど。そういえば、数年前にカヴァー・アルバム(『CRYING STARS -STAND PROUD!-』/’10年)を作った時、敬意を込めて「Kiss Of Death」(オリジナルはドッケンの’87年『BACK FOR THE ATTACK』収録)をカヴァーさせてもらったんですよ。
GL:へぇ、それは聴いてみたいな。「Kiss Of Death」か…、興味深いね。
S:でも、ジョージさんみたいな音が出せなくて、イライラしてギターを投げそうになりましたよ(笑)。
GL:当時のレコーディング環境も関係しているからね。今の時代には存在しないような機材を使っているから、俺にだって同じような音が出せるかどうか…(笑)。