観てはいけない!? ブラック・メタル映画『ロード・オブ・カオス』が3月26日(金)より全国上映

観てはいけない!? ブラック・メタル映画『ロード・オブ・カオス』が3月26日(金)より全国上映

’90年代前半のノルウェージャン・ブラック・メタル・シーンの狂騒を描いた映画『ロード・オブ・カオス』が、いよいよ’21年3月26日に全国公開される。海外での公開から2年ほど遅れたが、待ちに待った…との思いで喜んでいるブラック・メタラーも少なくないだろう。もっとも、これは決して特定の層だけに向けた映画ではない。ブラック・メタル・ファン…いや、HR/HMファンでなくともグイグイ惹き込まれる衝撃作だ。

監督はスウェーデン出身のジョナス・アカーランド(ヨーナス・オーケルンド)。ラムシュタインやオジー・オズボーン、メタリカから、マドンナやレディー・ガガまでを手掛ける売れっ子PV監督で、’02年に映画監督デビューした彼は、何と伝説的ブラック・メタラー:バソリーの初期メンバーだったというから驚く。原作は『ブラック・メタルの血塗られた歴史』として日本語版も出ている書籍『Lords Of Chaos』。映画冒頭には“Based on truth, lies and what actually happened (事実と虚構を織りまぜた、実際の出来事に基づく物語)”というテロップが出る。

ロード・オブ・カオス:
ジョナス・アカーランド監督

ノルウェーのブラック・メタル・シーンの暗部については、’90年代からセンセーショナルに報じられてきた。教会への放火や墓荒らし、果ては殺人に到るまで…。その中心に、ブラック・サークル(Black Metal Inner Circle)という集団がいたことを耳にしたことがある人もいるだろう。本作の登場人物の多くは、そのブラック・サークルの面々で、メイヘム、バーズム(ブルズム)、エンペラーなどのメンバー達だ。彼等が悪魔崇拝にどこまで本気だったのか──それは定かではない。しかし、すべての犯罪や背徳行為は話題作りのためのハッタリでも何でもなく、すべて現実に起きたことであった。

ロード・オブ・カオス

当然、主要な登場人物はほぼ全員が実在するミュージシャン達だ。メイヘムのメンバーはユーロニモスを始め、デッドやネクロブッチャー、マンハイムやヘルハマーなど、さらには、バーズムのヴァーグ(ヴァルグ・ヴィーケネス/カウント・グリシュナック)、エンペラーのファウストも。エンペラーはバンドとしては登場しないが、他にもユーロニモスの取り巻きのひとりとしてオカルタス(オクルトゥス)がいたり、配役上では“ヴァーグの運転手”としてブラックソーン(THORNSのスノーレ・W・ルーシュ)も出てくるし、キャストの一覧にはダークスローンのフェンリツの名前もある。

そんな実在のブラック・メタラー達を、マコーレー・カルキンの弟:ロリー・カルキン(ユーロニモス役)、ヴァル・キルマーの息子:ジャック・キルマー(デッド役)が演じているのも話題だ。一部では「本当にみんな、あんなにイケメン揃いだったの?」なんて風にも盛り上がっているとか。あと、アッティラ・チハーを彼の実息:アリオンが演じているのもマニア垂涎かも。流石は元(?)ブラック・メタラーが監督しただけあり、どの場面もなかなかリアル。登場人物達が着ているバンドTシャツや部屋に貼ってあるポスター、デモ・テープやライヴ告示フライヤーといった細かな小道具まで、あちこちにコダワリが満載されている。

ロード・オブ・カオス

色々リアル過ぎて、“R18+”指定になってしまったのも納得だ。特に、デッドの自傷パフォーマンスや自死の瞬間、2つの殺害場面など血みどろシーンのスプラッター描写は息を呑む。また、放火シーンのリアリティは勿論のこと、バンドの演奏シーンやレコーディング風景、プロモ写真やユーロニモスのレコード・ショップ:ヘルヴェテなどの“再現”も色々と興味深い。

ストーリーについては、ここでは詳述しないが、もし断片的にあれこれ見聞きしていたとしても、全編かなりショッキングだ。「噂には聞いていたが、アレもコレもすべて事実だったのか!」と戦慄を覚える人も少なくないだろう。自分がいかに並外れて邪悪か──それを証明するため凶行に走るヴァーグと、時にハメを外すも、なかなか一線を越えられないユーロニモス。当初、サークル内での主導権はユーロニモスが握っていたが、どんどんエスカレートしていくヴァーグが存在感を増し、次第に対立を深めていった2人は、破滅的な最悪の結末を迎えることに…。

彼等はみんな若く、いつしか歯止めが効かなくなってしまった…とはいえ、ある意味まだ未熟だったのかもしれない。実のところ、実家住みだったり、親に資金援助してもらったり…といったことも描かれているし。無論、飽くまでこれは映画であり、虚実ない交ぜの言わばセミ・ドキュメントだというのも上述の通り。但し、メイヘムの現メンバーやヴァーグ本人としては、本作について思うところが色々あり、言いたいことは沢山ある…とも聞く。よって、それらも踏まえた上で鑑賞に臨みたい。

ところで──日本語公式サイトlordsofchaos.jpには、各方面からコメントが寄せられているが、これがかなり面白い。映画の宣伝なのに、何と「観るな!」「観ちゃダメ!」といった声が少なくないのだ。それだけ凄まじいインパクト…ということか。これはますます興味をソソられる人が続出するのでは? 尚、Tシャツなど劇場限定オリジナル・グッズ、全国の上映劇場などについての情報も、詳しくは公式サイトやツイッター&フェイスブックを参照されたい。

『ロード・オブ・カオス』上映概要

『ロード・オブ・カオス』フライヤー

タイトル:
『ロード・オブ・カオス』

公開情報:
2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー
以降順次公開

原作:『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』(ele-king books/P ヴァイン)

音楽:シガー・ロス(『バニラ・スカイ』)
撮影:パー・M・エクバーグ(『ポーラー 狙われた暗殺者』)
編集:リカード・クランツ

原題:LORDS OF CHAOS/製作:2018年/イギリス・スウェーデン・ノルウェー合作 アメリカンビスタ/上映時間:117 分/レーティング:R18+

字幕監修:川嶋未来(SIGH)

アドバイザー:増田勇一

配給・宣伝:AMG エンタテインメント、SPACE SHOWER FILMS
提供:AMG エンタテインメント

公式サイト:
lordsofchaos.jp

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