下降パターン時のノン・ピッキング・エクササイズ ニック・ジョンストン奏法コラム第6回

下降パターン時のノン・ピッキング・エクササイズ ニック・ジョンストン奏法コラム第6回

先月号のアルペジオ・エクササイズは上昇パターンが主題だったが、今回は下降パターンでのノン・ピッキングについて。つまり、高音弦側から低音弦側へのアルペジオ…、この際ニックはほぼピッキングせず、フィンガリングのみで音を出していく。これは彼に限らず、多くのテクニシャンがやっていることでもある。普通のレガート系プレイにも言えることだが、スウィープ・アルペジオの現代的スペシャリストにとって、これはもうMUSTの弾き方と言ってもいいかも。ではまず、ニックのお言葉を。

Nick’s Comment

複数の弦に渡ってアルペジオを下降する場合、僕は左手のフィンガリングだけでコナすようにしている。こうすると、液体のように滑らかなサウンドが得られるし、すべての音をクリーンに出すことに集中していられることが分かったんだ。実は、僕はオーソドックスなスウィープ・ピッキングが苦手でね。そこで、こうした方法でその弱点をカヴァーしなきゃならなかったんだよ。これはスウィープ・ピッキングの代替案として、とても役立つんじゃないかな。習得すれば大いに有益だ。君にも合うかどうか、試してみて。

例えばスウィープ奏法の権化:イングヴェイは、上昇時こそ痛快に連続ダウンのスウィープを決めるが、実は返りの下降はそもそも弾かないか、お茶を濁す。それは連続アップのスウィープでさほど勢いのあるアルペジオ・フレーズが生まれない…ということだろう。言い換えれば、連続アップはギタリストにとっての鬼門だということ。故に、多くのギタリストはフィンガリングだけで下降するというわけだ。ニックも然り。

Ex-1(図1)のCm9が今回の主たるエクササイズだ。6弦から1弦までは普通にピッキングするが、後半の1弦から6弦は、映像を観ての通り一切ピッキングしていない。また、それを使ったEx-2も、アルペジオ部分に関しては同じだが、2小節目のような普通の下降フレーズでも、ピッキングは極力減らしているというところに要注目だ。

Ex-1アルペジオ下降時ノン・ピッキング・フレーズ(基本)

●前半の[6弦→1弦]は普通に弾いて、後半の[1弦→6弦]はピッキングなし!
Ex-1 アルペジオ下降時ノン・ピッキング・フレーズ(基本)

図1■Ex-1のCm9アルペジオ
図1■Ex-1のCm9アルペジオ

Ex-2アルペジオ下降時ノン・ピッキング・フレーズ(応用)

●最後のアルペジオ部分はEx-1同様、[1弦→6弦]の下降時はピッキングなし! 2小節目のような普通の下降フレーズもピッキングは極力少なくしている。
Ex-2 アルペジオ下降時ノン・ピッキング・フレーズ(応用)

プロフィール

Nick Johnston

ニック・ジョンストンはカナダ出身のギタリスト。フル・シュレッドから繊細なニュアンスまで網羅する卓越した演奏テクニックと抜群のメロディー・センスで動画サイトなどを中心に話題を集め、2011年の『PUBLIC DISPLAY OF INFECTION』をはじめ、これまでに4作のオール・インスト・ソロ作品を発表。昨年9月発売の最新作『REMARKABLY HUMAN』で正式に日本デビューを果たした。本作には、ガスリー・ゴーヴァンやポール・ギルバートがゲスト・ソロを弾いた楽曲もボーナス・トラックとして収録。2017年2月にはアニマルズ・アズ・リーダーズのツアーに帯同して初来日を果たし、ライヴやギター・クリニックを行なうなど、国内でのさらなる活躍が期待されている急進中のロック・ギタリストだ。

インフォメーション

公式ウェブサイト:www.nickjohnstonmusic.com
フェイスブック:www.facebook.com/NickjohnstonOfficial

最新リリース情報

foxtails

『REMARKABLY HUMAN』/Nick Johnston

キングレコード|CD|2016年9月14日発売