菰口雄矢&ニック・ジョンストン @汐留BLUE MOOD 2018.5.5 スペシャル・セッション・レポート&機材紹介

菰口雄矢&ニック・ジョンストン @汐留BLUE MOOD 2018.5.5 スペシャル・セッション・レポート&機材紹介

去る5月5日(土)、汐留BLUE MOODにて2人のギタリスト:菰口雄矢とニック・ジョンストンが出演するスペシャル・イベント“YOUNG GUITAR Special Session feat. Yuya Komoguchi & Nick Johnston”が行なわれた。

ソロ・アーティストとして、また様々なジャンルにおけるサポート・ミュージシャンとしてその腕を高く買われている国内屈指のギタリスト:菰口と、歌心の豊かなギター・インスト・ミュージック1本槍で国境を越えるファンを集め、昨年は日本デビューも果たしたニック。どちらも現在30歳、つまり同世代ということになるが、活動の場は異なれどギターに込める愛情とそこから流れ出る演奏力の巧みさで、共に多くのリスナーを惹き付けてきた。そんな彼らが向かい合ってギターを手にした時、どんな相乗効果が生まれるのか…? 開場時刻と同時にほとんどの席が埋まるのを見て、オーディエンスから大きな期待が寄せられていることを強く感じた。

1曲目は菰口のソロ曲「Mona Lisa」でスタート。ただ、ステージに上がっているギタリストは菰口1人…。本来なら、菰口とニックがお互いに曲を持ち寄って一緒にプレイする予定だったのだが、事情によりニックは彼の楽曲には参加せず。「どうやら曲を覚えてきてないとか…」と菰口がステージでバラしていたが…(苦笑)。急遽3人編成となった前半戦だが、そこはセッション経験の豊富なプレイヤー達、二家本亮介をベースに、そして川口千里をドラムに迎えたリズム隊の対応は柔軟だ。菰口のソロ作品『picture』(’14年)の中から演奏された「Shadows」はアルバムではゲストにマイケル・ランドウを迎えており、ニックとのギター・バトルを想定した選曲だったようだが、状況が変わったことで二家本のベースが大フィーチュア。躍動感に溢れたグルーヴ捌きやソロ回しでのメロディックなプレイには客席からも大きな歓声が上がり、バランスの良いトリオ・サウンドを見事に成立させていた。

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そしてやはり、特筆すべきは菰口のギターだ。説得力のあるメロディーに思わず聴き入ってしまうだけでなく、出てくる音色の1つ1つが洗練されている上、楽曲のスタイルに合わせて、またはその場の演奏や雰囲気に合わせて常に表情を変えて行き、決して退屈することがない。楽しそうにギターを歌わせるその姿に合わせて、観客も体を揺らしながら極上のサウンドに身を任せている。

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最後は名セッション曲の1つでもある、ビリー・コブハムの「Stratus」(’73年『SPECTRUM』収録)。ここでようやくニックが登場し、待望のギター・バトルがスタートした。どっしりしたリズムの上で早くも自由奔放なプレイを見せる彼に対して、菰口もテンションが上がるのか、一気にテクニカルなフレーズが増えていく。その熱気に煽られるように、エンディングでは川口千里のドラム・ソロが炸裂。小柄な体から発散される大きなエネルギーは圧倒的ながら、思わず「うわー、すごい」と顔がほころぶほど楽しくなってしまう。これにて、前半のセットが華々しく締めくくられた。

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休憩を挟んでの後半戦は、ニックの楽曲を中心としたセット。菰口と2人のインタープレイをじっくり堪能できる時間がやってきた。バックは引き続き、二家本と川口だ。現時点での最新作『REMARKABLY HUMAN』(’16年)は、雰囲気重視のゆったりとした楽曲が中心だが、初期作品ではガスリー・ゴーヴァンやポール・ギルバートなどとのギター・バトルを聴かせたり(註:これらは共に最新作の日本盤に再収録されている)、『IN A LOCKED ROOM ON THE MOON』(’13年)のようなアメリカン・コミック的なテイストのアートワークを彷彿とさせるコミカルでキャッチーなスタイルも得意とするなど、引き出しは多い。

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そんな中、セットの要となったのは最新作からの「Remarkably Human」などだったが、コードの巧みな響きを利用したバッキングに乗せて動くニックのメロディーはやはり絶品だ。ソロ・パートの交換も盛んに行なわれ、怒濤の速弾きや泣きのチョーキングの応酬など、白熱したバトルに何度も拍手がわき上がる。気がつくと、先ほどニックが弾いていたようなフレーズを菰口がプレイしたり、逆にニックが菰口のような弾き方をしていたり…。この日が初対面だったはずの両者がセッションを進めるにつれて、お互いのスタイルが入り交じる様子を見るのはとても興味深かった。

ジェフ・ベックの「Blue Wind」(’76年『WIRED』収録)をアンコールとして、2時間を超えるスペシャル・セッションは閉幕。ギターを通して、言葉以上に感情豊かにコミュニケートできる2人の奥深さを垣間見た思いだった。

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使用機材紹介

最後に、出演者全員の使用機材を紹介しよう。

菰口雄矢のギターはエキゾティック製の“XS-2 Silver Flip-Flop”。見る角度によって様々な表情を見せるフィニッシュのこのモデルが久々に登場だ。ピックアップはフロント&センターがリンディ・フレイリン製”Vintage Hot”、リアはベアナックル”Mule“。アンプは本人持参のボグナー製”Shiva”と“212CB”だ。足下は左上から、時計回りに以下の通り。

ストライモン“Dig”(デジタル・ディレイ)、同“Ola”(コーラス&ヴィブラート)、エキゾティック“SL Drive”(オーヴァードライヴ)、同“AC Booster”(ブースター)、TBCFX“Smoothcomp”(コンプレッサー)、ジェッター・ギア”Vibe“(ヴィブラート)、ヴェムラム“Jan Ray”(オーヴァードライヴ)、コルグ“Pitchblack Portable”(チューナー)、アーニーボール“VP JR.”(ヴォリューム・ペダル)、エキゾティック“Wah XW-1”(ワウ)、Musicom Lab“EFX MKIII+”、ストライモン“Flint”(トレモロ&リヴァーブ)、“Dig”と“Flint”用のタップ・ペダル

ニック・ジョンストンはシェクターUSA製の“Nick Johnston USA Signature”。シェクターから発売された2本目のシグネチュア・モデルだが、ネック材がウェンジ、指板がマッカーサー・エボニー、ボディーのフィニッシュがホワイトになっているのが新たな仕様だ。アンプはメサブギー”TC-100“と“4×12 Recto Standard Straight Guitar Cabinet”をレンタル。ペダルボードはなく、アンプ直でのサウンドを聴かせた。

二家本亮介のベースはサドウスキーメトロラインの5弦ベース“RV5 WL”。ペダルボードにはピーターソン“Stomp Classic”(チューナー)、エキゾティック“Bass RC Booster”(ブースター)、同“X-Blender”(エフェクト・ループ)、エレクトロ・ハーモニックス“Q-Tron”(エンヴェロープ・フィルター)、プロコのディストーション”RAT“のweedによるモディファイ版“RAT mod”、fsp製ループ・スイッチャーなどが組み込まれている。アンプはレンタル。

川口千里はバス・ドラムにトレードマークのヤモリが大きく描かれた、ヤマハ“PHX”のドラム・キット。この日はより多彩なフレージングを狙って、フロア・タムを新たに1つ増やしたとのこと。また、シンバル類はジルジャンで統一されている。

YOUNG GUITAR Special Session feat. Yuya Komoguchi & Nick Johnston 2018.5.5 @汐留BLUE MOOD セットリスト

[1st Set]
1. Mona Lisa
2. Snore
3. Shadows
4. Kenny
5. Stratus

[2nd Set]
6. Remarkably Human
7. The Deepest Breathe
8. Atomic Mind
9. Hypergiant
10. In A Locked Room On The Moon

[Encore]
11. Blue Wind