初期アーチ・エネミーの名作3rd再現のため、ブラック・アースが再集結! 2019.5.22 @渋谷クラブクアトロ

初期アーチ・エネミーの名作3rd再現のため、ブラック・アースが再集結! 2019.5.22 @渋谷クラブクアトロ

アーチ・エネミーの初期メンバーが集うプロジェクト:ブラック・アースに関して、司令塔マイケル・アモット(g)は以前のインタビューで「あくまでも特別な機会に行なうお楽しみバンド」と位置付けていたが…、ファンからの熱意が強ければそれに応えるのが彼らしいところ。LOUD PARK 17でのサプライズ的な出演が最後かと思いきや、今年5月にまたもや来日公演が実現してしまった。

このツアーで事前にアナウンスされていたのは、1999年発表の3rdアルバム『BURNING BRIDGES』の完全再現が行なわれるということ。あくまでも「息苦しいまでの重さと攻撃性を軸に美旋律を融合させる」というバランスだった1stと2ndに対して、この3rdでは普遍的な正統派メタルへ一気に歩み寄り、賛否ありながらも楽曲の圧倒的な魅力でさらにファン層を拡大した…そんな作品だったと筆者は認識している。ただ結果的にはヨハン・リーヴァ(vo)を擁する初期メンバーでの最後の作品となり、アンジェラ・ゴソウ(vo)を後任としたアーチ・エネミーはまた違ったフェイズへ移っていくわけであるが。

さて、ここでは遅ればせながら、5月22日に行なわれた東京・渋谷クラブクアトロ公演の模様を、その再現パートを中心としてお伝えさせていただきたい。

様々なクラシック・メタル・バンドの楽曲が会場を暖める中、ラウドネス「Crazy Nights」が一際大きな音量で始まると、ショウの幕開けを予感した観客は大合唱。続いて場内が暗転し、やや不穏なオルゴール的SEが…。その旋律を継いで「The Immortal」のイントロが、耳をつんざく爆音で始まる。作品の中では1stや2ndに通じるヘヴィな曲の1つで、それがモダンな高音質で蘇ると、何だか薄皮が一枚剥がれたかのような質感だ。

ステージ上の顔ぶれは2016年のツアー時と変わらず、現メンバーのマイケル、シャーリー・ダンジェロ(b)、ダニエル・アーランドソン(dr)に、ヨハン、クリストファー・アモット(g)という過去メンバーが合流する形。ヨハンはえらく恰幅が良くなったが、おかげで声の響きも太くなったような気がする。一方クリスはというと、若い頃は難しい顔で弾いているイメージが強かったが、1曲目から珍しく満面の笑顔だ。袂を分かった仲間がキャリアを重ねて手を組むと、こういった変化も見えて面白い。

アルバムの流れの通りに「Dead Inside」がそれに続く。ミドル・テンポのイントロからブレイクし、マイケルのメロディックなリフが始まると、フロアは爆走に合わせてのヘドバン合戦になりつつ、そのリフを大合唱。デス系のライヴではなかなか珍しいが、彼らの(アーチ・エネミーの)ライヴでは見慣れたシーンだ。速さは1.5倍増ぐらいで、この辺りは若い頃よりも攻撃力の制御が巧みになったからだろうか。

興味深いのは、マイケルとクリスの巧みなギター・コンビネーションが以前と変わっていないことだ。クリスがアーチ・エネミーを脱退して既に6年だが、それだけ長く離れていても血の繫がりの濃さが勝つということか。「Pilgrim」では艶気たっぷりにサビメロを奏でる兄から、高低差の大きいシュレッドでガンガン弾きまくる弟という、いかにもアモット兄弟らしい対比が見事。また「Silverwing」はライヴ・ヴァージョンならではの延長版ギター・ソロの中、きらめくようなツイン・ハーモニーを素晴らしい精度でぴったりときめ、拳を合わせる2人に会場中から惜しみない賛辞が贈られる。ちなみにこの曲こそ、『BURNING BRIDGES』の発表当時にポップさで賛否を引き起こした代表的存在だが、今やアーチ・エネミーにとってのキラー・チューンの1つとなっているのが面白い。普段ならショウの終盤に配置されるところ、4曲目での登場というのも再現ライヴならでは。

マイケル・アモット

クリストファー・アモット

明るいエンディングの余韻を引き裂くように、間髪を入れず「Demonic Science」が続く。緻密な攻撃的リフで押しまくりながら、サビの美メロで一気に落とす、この極端な展開も当作の特徴の1つだ。緊張と緩和の巧みさに唸りながらフロアに目をやると、相変わらずギターのフレーズに合わせてオーディエンスが歌う歌う。さらにジョン・サイクス的なブリティッシュHR風味の「Seed Of Hate」、メロスピ的なツイン・リードで疾走する「Angel Crow」というデス・メタル成分の薄い超キャッチーな2曲が続き、おかげで“オ〜オ〜♪”の歌声は倍増。その素晴らしいリアクションに、ステージの両サイドで旋律を奏でるマイケル&クリスの笑みが一際大きくなる。初期作品に対してここまでの思い入れで反応してくれるのはおそらく日本のファンだけで、だからこそ20年越しの再現ライヴがこの国だけで実現したと考えると、非常に感慨深い。

そして作品を締めるタイトル曲「Burning Bridges」が最後に続き、沈鬱なほどスローなリフが繰り出されると、フロアは再びヘドバンに興じる…。赤と青のダークな照明の中、ステージから去るメンバーを大歓声で見送りつつ、名作の再現劇は幕を閉じるのだった。

ここまでで時間にして約40分弱。もちろん彼らのライヴがこれだけで終わってしまうはずもなく、「Black Earth」のイントロを皮切りに後半戦がスタートする。ここまでに披露されなかった1st & 2ndアルバムの曲が並ぶことで、必然的に以降はデス・メタル色の強いダークでより攻撃的なサウンドが続くわけだが…、面白かったのは11曲目に披露されたブラック・アースとしての新曲「Burn On The Flame」。ベスト盤『PATH OF THE IMMORTAL』(2019年)で聴いた時にも感じられたことだが、過去楽曲の中に並んでいても違和感がない一方、アリッサ・ホワイト=グルーズ(vo)を擁する現行アーチ・エネミーにもしっかり通じるところがあって(マイケルが曲を作っているのだから当然だが)、新しいのに懐かしいという奇妙な感覚に陥ってしまった。ちなみにおそらくこの先しばらく、ブラック・アースとしての活動は封印されることになるだろうから、ライヴでこの曲を聴ける機会はほぼないはず。そういう意味でも今回のツアーは、ファンにとってレアな体験だったに違いない。

ブラック・アース

ブラック・アース 2019.5.22 @渋谷クラブクアトロ セットリスト

1. The Immortal
2. Dead Inside
3. Pilgrim
4. Silver Wing
5. Demonic Science
6. Seed Of Hate
7. Angelcrow
8. Burning Bridges
9. Black Earth〜Dark Insanity
10. Beast Of Man
11. Burn On The Flame
12. Dark Of The Sun
13. Eurica
14. Diva Satanica
15. Let The Killing Begin
16. Trancemigration Macabre
17. Bridge Of Destiny
[encore]
18. Aces High(IRON MAIDEN)
19 Bury Me An Angel
20. Fields Of Desolation〜Black Earth