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マーティ・フリードマンのメタル・エンターテインメント!! 2019.7.5 @ eplus LIVING ROOM CAFE&DINING ライヴ・レポート

マーティ・フリードマンのメタル・エンターテインメント!! 2019.7.5 @ eplus LIVING ROOM CAFE&DINING ライヴ・レポート
レポート●坂東健太 pix : ©Stefan Nilsson, Roppongi Rocks

マーティ・フリードマンが持つギタリストとしての才能は何十年も前から疑うべくもないが、彼のエンターテイナーとしての才能は間違いなく日本に来てから花開いたものだと思う。筆者は幸運にも何度もインタビューさせてもらう機会を得ているが、その度に彼の日本語のボキャブラリーがすさまじい速度で増していることに驚かされた。最近のマーティのライヴは、メタル系では珍しいライヴ・レストランでのディナーショー形式が定番となっているが、これはそんな彼の2つの才能(と努力)を組み合わせるベストなあり方なのではないか。満員御礼の客席と見事にコミュニケーションを取る彼を見るたびにそう思わされるが…、この夜のライヴは若干様子が異なり、また違ったサプライズが用意されていた。

2部構成の第1部が始まったのは19:30で、開演直前にPAスピーカーから流れてきたのは、何だか聴き憶えのある曲。これは2006年4月から翌年3月まで放映された、かの有名なTV番組『ROCK FUJIYAMA』の企画アルバムに収録されていた「FUJIYAMAで会いましょう」だ。その明るい曲調に合わせて、いつも以上にテンション高めでマーティが登場。そしてゲストとして呼び込まれたのは、番組でMCを務めたKENNY GUYこと鮎貝 健、そしてロック刺客ROLLYの2人だ。この第1部はL.A.からの生中継という体裁でお届けするのだそうで、この設定も番組のまんま(唯一、超売れっ子になったSHELLYだけは都合がつかず、椅子の上に置いた顔写真での参加だった/笑)。

ちなみに、できれば3人の軽妙なトークの一部始終を書き起こしたかったところだが…。この第1部は撮影されていたようなので、何らかの形でみなさんの目に止まる機会があるはず。演奏だけに絞って話すと、ここではマーティが主にアコースティックをプレイしていたことがなかなかレアだった。とは言ってもあくまでも3人の個性的な歌がメインで、鮎貝のヴォーカルによるブライアン・アダムス「Summer Of '69」、ROLLYのヴォーカルによるマイケル・ジャクソン「Ben」(というかフィンガー5がカヴァーした「ベンのテーマ」のヴァージョン)、マーティのヴォーカルによるエルヴィス・プレスリー「Hound Dog」という選曲は、これも先述の『ROCK FUJIYAMA』つながり。このメンバーで生披露するのはおそらく初めてだったはずなので、懐かしさも含めてファンには面白い体験だったに違いない。また第1部の最後には、マーティが「日本の音楽はすべてロックだ」と言い張るお馴染みのコーナーも再現。「ソーラン節」とレッド・ツェッペリン「Black Dog」の見事なマッシュ・アップを、ROLLYとの息の合ったツイン・ギターで披露し、満場の観客すべてを笑顔にさせた。

マーティ・フリードマン、ROLLY、鮎貝 健

20:20頃からスタートした第2部はいわば通常運転のマーティ・フリードマン・ショウだが、この夜のセットリストは静かなテンションから始まりラストに向けてどんどん音圧が高まっていくという、ダイナミクスの構築が実に巧みだった。メンバーはマーティ以下、菰口雄矢(g)、清(b)、川口千里(dr)、古垣未来(key)、谷口いづみ(violin)、奥田日和(cello)という大所帯の編成。澄みやかなピアノの音色に導かれてマーティの太いクリーン・リードが始まると、それだけで鳥肌が立つほどの情感だ。そんな「Devil Take Tomorrow」に続く「For A Friend」では、歌うような色気のヴィブラートにますます磨きがかかる。穏やかで優しい曲調なのに息を飲むような緊張感さえ覚えるのは、それだけ表現に魂が込められているからに違いない。「Lovesorrow」でもコブシの効いたフレーズ回しが実に心地よく、ストリングスのピチカートや菰口のアコースティックが巧みにそれを支える。

マーティいわく、普段あまりやらないナンバーもいくつか用意していたそうで、そのうちの1つが「Japan Heritage Official Theme Song」。実は政府が認める日本遺産大使としての顔も持つ彼が、“日本遺産テーマソング”として書き下ろした曲だ(作品リリースはされていないがYouTubeで公開中なので、ぜひ検索していただきたい)。この夜のアレンジは美しいストリングスとの絡みや、激しさと静けさの対比が素晴らしく、それはこの後に続いた「Night」や「Tears Of An Angel」「I love you」「Undertow」でも同様。音源ヴァージョンとは違った生バンドでの魅せ方を常に変え続けている辺り、進化するアーティストとしての姿勢も如実に感じられる。中でも「I Love You」(尾崎 豊)は2本のギターのハーモニーが後半に効果的にフィーチュアされており、実に感動的。中盤における1つのハイライトだったと言えよう。

レア・ナンバーのもう1つは、映画『MIDNIGHT IN PARIS』からの「Bistro Fada」。マーティが映画のサントラからセレクトするというのも珍しければ、アコースティック・デュオ形式というのも珍しく、彼がジプシー・ジャズを爪弾くというのも実に珍しい。これぞ雑食ギタリストの真骨頂。さらに続いて「ロマンスの神様」(広瀬香美)もアコースティック&ピアノ&ストリングスのアンプラグド・アレンジで披露され、ほぼぶっつけ本番だったと思えない壮大な音色で会場を包み込んだ。

ここからクライマックスに向けて、バンドの音は一気に熱を帯びていく。ヘヴィ・プログレ「Whiteworm」では超テクニカルなテーマ・リフが一部の狂いもなくビシバシと決まり、分厚くパンキッシュなメタル・ヴァージョンの「雪の華」(中島美嘉)では流麗なツイン・リードで大盛り上がり(ここでは菰口の恐ろしくクレヴァーなソロもフィーチュアされていた)。またお馴染みの「Thunder March」では、2本のギターが延々と超速シーケンスするシーンで大喝采を浴びる。さらにふたたびROLLYが(ギターを持たずに)登場すると、彼の最新作からの「Eejanaika」という選曲で意表を突き、不思議なシャッフルのグラム・ロックを弾くマーティというこれまた意外なシーンも。それが終わるやいなや、間髪を入れず始まったのは必殺の「天城越え」(石川さゆり)だ。もはや誰にも真似のできない域に達した究極の演歌ヴィブラートで観客全員から「あまぎ〜♪」の合唱を引き出しつつ、猛烈な弾きまくりで大団円を迎えるのだった。

マーティ・フリードマン

マーティ・フリードマン“Guitar Spirit of 鰻 Night” @ eplus LIVING ROOM CAFE&DINING 2019.7.5 セットリスト

(第1部)
1. Summer Of '69
2. Ben
3. Hound Dog
4. ソーラン節〜Black Dog/LED ZEPPELIN

(第2部)
1. Devil Take Tomorrow
2. For A Friend
3. Lovesorrow
4. Japan Heritage Official Theme Song
5. Night
6. Tears Of An Angel
7. I Love You/尾崎 豊
8. Undertow
9. Bistro Fada(from Midnight In Paris)
10. ロマンスの神様/広瀬香美
11. Whiteworm
12. 雪の華/中島美嘉
13. Thunder March
14. Eejanaika(with ROLLY)
15. 天城越え/石川さゆり