アーティスト名 | PAUL GILBERT ポール・ギルバート |
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アルバム名 | VIBRATO ヴィブラート |
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’10年の『FUZZ UNIVERSE』に続く待望のソロ名義フル・アルバム。インスト曲だけではなく久々にポールのヴォーカル曲も収録されている。大注目は本作のコンセプトだ。まず冒頭からハイ・テンションなコード進行で幕を開け、②はジャズ/フュージョン系インスト曲。マーシャル系の歪みではなく、柔らかいオーヴァードライヴ系の歪みでジャズ的アプローチのソロが炸裂。タイトル曲③はフュージョン系ファンクの歌モノ。この曲のソロも含め、随所に「ファズ?」とも思える潰れ気味のソフト・ディストーション・サウンドとオクターヴァー(オクターヴ・ユニゾン?)を組み合わせたステレオ・サウンドを多用。また④を始めプログレ的アプローチの曲があるかと思えば、⑤は王道系マイナー・スロー・ブルース。⑥はかのデイヴ・ブルーベックのジャズ・スタンダードだ(ちなみにテーマは9拍子を多用)。そしてラスト3曲ライヴ録音は、イエス、マディ・ウォーターズ、AC/DCのカヴァー曲。
各曲のスタイルだけ見れば支離滅裂とも思えるが、本人もレコーディング・メンバーもヴィジョンは細く絞り込まれ統一されている。「技巧モノは他のバンドでやるから、ソロはとにかく楽しい曲をやろう!」、そんな肩の力の抜けたメッセージが感じられ、シンプルに楽しみながら一気に聴き終えてしまう。テクニカルなプレイだけを期待する人は少々拍子抜けするかもしれないが、彼の音楽性を好きな人なら聴き応えも楽しさも満点だ!
(安保 亮)
’97年の初ソロ『KING OF CLUBS』は“MR.BIGのポールが作った作品”だった。以降、レーサーX再結成やフレディ・ネルソンとのユニット、そしてMR.BIG再集合もあったが、今や完全に独り立ちするソロ・ミュージシャン。当然か。早いもので、ソロのキャリアは何と15年に及ぶわけだから。祝!15周年だ。ポールは「全然気づかなかった」ということだが。
本作品は久々の歌入りとなったが、インタビューで強調しているように、インテンション(“intension/緊張、強さ”ではなく“intention/意志、意図”)を重要なキーワードにしたギター・プレイが聴き所だ。『GET OUT OF MY YARD』(’06年)以降のインスト三部作で、あらゆる観点からの演奏スキルを追求したポールだが、今回は、それらとまた別次元のギター作品だと言えるかもしれない。簡単に言えば、指グセに任せたフレーズではなく、意図を持ってプレイを構築する…、これがここで示したポールなりのインテンション。カズーでの即興をギターに置き換えた③のソロ、あるいは今月の付録DVDでも紹介しているモダンなブルース、それを発展させたジャズ的アプローチ、更にポールとしては新しいコードの響き…、これら特筆すべき進化にインテンションの効能が見て取れる。
付け加えておくと、カヴァー3曲中、イエスの⑨はコピーの完成度が痛快でお薦め。EL&Pを始めとするプログレ系がポール十八番なのは知っていたが、これにはヤラれた脱帽!という感じ。
(福田真己)