アーティスト名 | BLACK LABEL SOCIETY ブラック・レーベル・ソサイアティ |
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アルバム名 | CATACOMBS OF THE BLACK VATICAN カタコンベ・オヴ・ザ・ブラック・バチカン |
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ザック・ワイルド(g, vo, piano/プロデュースも兼務)率いるブラック・レーベル・ソサイアティ(BLS)の、4年ぶりの9作目。前作のオジー・オズボーン・バンド的な疾走感はザックにとってイレギュラーだった…か——今作は初期ブラック・サバス風にウネるリフを軸にするヘヴィ・ロック作となっており、コーヒー・ブレイク的なアコースティック・ナンバーも3〜4曲毎に入り…と書くといつものBLSらしい作風と思うかもしれないが、しかしこれまでのようなダウンやC.O.C.っぽいストーナー/スラッジ・メタルとは似て非なる印象がある。それはバラードに顕著だった持ち前のメロウさがヘヴィさと融合しつつあるためで、良いリフの前に良い曲を作ろうという意志が感じられるというか、具体的にいうと曲構成にアリス・イン・チェインズ的な雰囲気が感じられるのだ(歌唱法も脱オジーだ)。その完成度こそ現状ではアリス・イン・チェインズには及ばないが、ギター・ソロに注視してみても、荒々しさは感じさせるものの、その実、丁寧に練り込まれていることを感じさせ、ここにも作曲家として覚醒しつつあることが見え隠れする。
ザックはギタリストとして桁外れだが、元々’70年代のシンガー・ソングライター的なセンスも持ち併せた才人でもある。今後も、コンポーザーとしてより高い場所を目指せるだけの余白がまだたっぷりと残されている——そんなことを思わせてくれる、久々の意欲作だ。
(菅原健太)
’13年のライヴCD/DVD『UNBLACKENED』(CDにはスタジオ新録の6曲も収録)は、エレクトリック楽器を基本にしつつ、「Takillya(Estyabon)」「Speedball」などのスリリングで豪快なアコースティック・ギター、「Sweet Jesus」「In This River」などの繊細なピアノをフューチュアした、“Unblackened(非ブラック化)”な作品だった。穏やかなサウンドと、そういう場では一層渋さが光るザックの歌声が満載されたあれは、その意味で、ザック史に残るスペシャル盤と言えた。
それを鑑みれば、次は反動で爆発、ヘヴィな1枚になるという予想もできたが、実際に届けられた本作品に“ヘヴィまっしぐら”のイメージは薄い。実際にカウントしてみると、“非ブラック化”を引き継ぐようなソフトな曲はボーナス含めて13曲中、「Angel Of Mercy」「Scars」「Shades Of Gray」+ボーナス「Hell And Fire」の4曲だけ。数はそう多いと言えないが、ヘヴィ曲の方のヘヴィ純度まで加味すると、全体的には“重い”というより“多様”という方が当たっている。依然、地べたを這うような地鳴りもあるが、そこを集中的に狙っていた頃とは違う。
ソロ・プレイに関しては、荒々しさが増量。つまりザックらしいアレンジの痕跡はあるが、お馴染み感のあるペンタトニックでのインプロヴァイズ的要素が増えたのでは…と思わせる。1つ挙げると、それがハマッた「Angel Of Mercy」のアウトロは特筆であり、“非ブラック化”のものとしてグッとくる!
(福田真己)