ここ数年、毎年の恒例行事となっているソロ・アコースティック・ギタリスト:トミー・エマニュエルの来日公演が、今年は10月27日〜29日に行なわれた。初日は大阪、2日目と3日目は東京で開催され、オープニング・アクトにピアノ&カホン編成の日本人ユニット:→Pia-no-jaC←を迎えた最終日の渋谷TSUTAYA O-EAST公演には男女問わず幅広い年代のファンが集結。ここでは、その渋谷公演の模様を簡単にお伝えしよう。
ショウの冒頭を飾ったのは、今年9月にリリースされたニュー・アルバム『IT’S NEVER TOO LATE』収録の「Hope Street」だ。爽やかなコードの響きとメロディアスなベース・ラインがからみ合う同曲が挨拶代わりに披露され、そのまま同じく新作からのスピーディーなナンバー「El Vaquero」と続くと、観客はトミーの指元に釘付けとなり、彼が発するグルーヴに体が支配されて行く。その手に持つギターは、もちろんメイトン・ギターズ製のエレアコ“EBG808TE”だ。ステージ上にはこの他、“TE1”など2本の同社製モデルが用意されていた。
さて、歌ものも交えながら上記2曲のようなアコ・インストを中心に進行して行くトミーのステージは、中盤の「Over The Rainbow」で1つ大きな盛り上がりを見せた。まるでハープのような響きで聴かせるハーモニクスを駆使したアルペジオですっかりオーディエンスを虜にし、美麗なメロディーで酔わせた同曲は、まさに彼の魔術的なギターが炸裂した瞬間と言えるだろう。また渋い歌声を響かせた「I Heard That Lonesome Whistle Blow」を挟んでの定番インスト「Guitar Boogie」では約10分間にわたってトミーの卓越した技の数々──高速シャッフル・ビートに乗せた軽快なピッキング、滑らかなスウィープ・アルペジオに圧倒されたが、何よりも驚くべきはそのアドリブでのフレーズ構築力の高さ。溢れ出るリックの数々をあれほどスムーズに、かつ劇的につなげられるギタリストは本当に希有だろう。
続いて「ギタリストとして彼は何てうらやましい名前なんだろう。だから僕は、彼と一緒に演奏する時は“ギブソン・ラリヴィー”と名乗るんだ(笑)」と冗談を飛ばしてから演奏されたマーティン・テイラー作曲の「One Day」、ゴキゲンで陽気な雰囲気が心地好い「The Tall Fiddler」、新作のタイトル・トラック「It’s Never Too Late」、スネア・ドラム用のブラシを使ったパーカッション・パフォーマンスが順に披露された。本編ラストは恒例のザ・ビートルズ・メドレー(「While My Guitar Gently Weeps〜Day Tripper〜Lady Madonna」)から「Classical Gas」へと途切れることなく突入し、同曲の情熱的なコード・ワークでオーディエンスを打ちのめしたトミーは一端ステージから退場。そしてアンコールに応え再登場した彼は、温かなギター・トーンで「Since We Met」を演奏し、会場を優しく穏やかな空気で包み込んでこの日のショウを終えたのだった。
トミーのギター・パフォーマンスは、これからも日本のファンに求められ続けるに違いない。それは彼が毎回集まったオーディエンスの呼吸やフィーリングを感じて、それをしっかりと自身の演奏に反映できる、いわばコミュニケーション能力に長けたエンターテイナーであり、その都度ライヴが新鮮に感じられるからだろう。彼が来年、再来年…と日本でどんなショウを見せてくれるのか、これからも注目し続けたい。
メイトン・ギターズに関する詳細は、下記正規代理店のエースケーのオフィシャル・サイトでご確認を。
http://acek-corp.com/
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トミー・エマニュエル セットリスト 2015.10.29 渋谷TSUTAYA O-EAST
1. Hope Street
2. El Vaquero
3. Deep River Blues〜Cannon Ball Rag
4. Blue Moon
5. Nine Pound Hammer
6. Drivetime
7. Mombasa
8. Blood Brother
9. Angelina
10. The Hunt
11. The Mountains Of Illinios
12. Over The Rainbow
13. I Heard That Lonesome Whistle Blow
14. Guitar Boogie
15. One Day
16. The Tall Fiddler
17. It’s Never Too Late
18. guitar drumming perfomance
19. The Beatles Medley(While My Guitar Gently Weeps〜Day Tripper〜Lady Madonna)〜Classical Gas
[encore]
20. Since We Met