此岸礼讃／人間椅子

　“和風”ではない、地に足の着いた“土着”のヘヴィ・ロックを鳴らすトリオの、’90年のデビュー作から数えて16枚目のスタジオ盤。“21世紀のロック”を目指した和嶋慎治（vo, g）は、自分達の音楽の踏襲と解体を試みたそうだが、サバス風リフはあれどドゥーム・ナンバーがないのはその表れか。また、R・フリップ的な手法を用いず斬新な転調やコードを聴かせるヘヴィ・プログレ「春の匂いは涅槃の薫り」には、その心意気が特に見て取れるが、全体とすれば驚愕するほどの変化はない。前作に続き、陰湿さに欠く作風でもあるが、これは前向きな心情の表れと解釈。鬼気迫る「今昔聖」の三味線風ソロに、身震い。 （菅原健太）