コラボ増量、速弾き三昧! Shred RACERS ONLINE “F2”配信ライヴ・レポート

コラボ増量、速弾き三昧! Shred RACERS ONLINE “F2”配信ライヴ・レポート

日本人ロック・ギタリストによる“速弾き”満載のライヴを国内外に向けてオンライン配信する、ヤング・ギターと文化放送主催のイベント“Shred RACERS ONLINE”。8月末に開催され好評を博した第1回に続き、9月26日には早くも第2回となる“F2(フレット・ツー)”が行なわれた。

これに先立ち、ヤング・ギターの企画(2020年10月号掲載)にて“F2”の出演者──国内外で人気を集めるメタル・ギター・ウーマン:SAKI(Mary’s Blood、NEMOPHILA、AMAHIRU)、15歳のハイパー・テクニカル・プレイヤー:Li-sa-X(Li-sa-X Band)、未来からやって来たサイボーグ・ギタリスト:Ediee Ironbunny(IRONBUNNY)という3名が一堂に会したトーク・セッションが実現。この鼎談では「“Shred RACERS ONLINE”ではどんなステージを見せたいか?」というテーマで意見を出し合う一幕があり、各ギタリストから様々なアイデアが飛び出した。レーサーXの「Scarified」をツイン・ギターで再現したり、3人でペリフェリーの曲をやったりしてみたいと目を輝かせたLi-sa-X。DJやラッパーを招いて、シュレッド・ギターとコラボレーションさせたら面白そうだと語ったEdiee。ゲスト・ヴォーカルであるFuki(Unlucky Morpheus)にMary’s Bloodの曲を歌ってもらいたいと胸を躍らせていたSAKI。この記事を読んで、“F2”への期待がより一層高まったファンもいたことだろう。はたして、これらアイデアの数々はどれだけ実現できたのか──その点にも注目しつつ、2回目の“Shred RACERS ONLINE”の模様を振り返ってみよう。

なお、“F1”ではMCによるアーティスト紹介や出演者のインタビュー映像などが各セクションの合間に挟まれていたが、今回はそういった演出が一切なく、よりスムーズでテンポのいい進行だったことを最初にお伝えしておきたい。もちろん、ライヴ以外の要素も取り入れた前回の構成も十分に楽しむことができたが、間断なく演奏が展開された“F2”の方がショウに対して没入しやすかったように思う。また前回との違いとしてもう1つ特筆しておきたいのが、ギタリスト同士のコラボレーションが増量していたことだ。各アーティストが自身のセットリストのラスト1曲で次の演奏者をステージに呼び込み、ともに演奏するという、いわば“GENERATION AXE”的なリレー方式を取り入れることで、“Shred RACERS ONLINE”ならではの特別感を高めることに成功していた。

Li-sa-X

Li-sa-X

この日の一番手を務めたLi-sa-Xのステージは、Edieeが参加した1曲を除き、すべてギター/ベース(HAYATO)/ドラム(和樹)のトリオ編成で演奏。アイバニーズのカスタム・モデルを手に、インストゥルメンタルに徹したアンサンブルを披露してくれた。’17年のデビュー・アルバム『Serendipity』でもカヴァーしていた、アニメ『ドラゴンボールZ』の主題歌「Cha-La Head-Cha-La」(影山ヒロノブ)で爽快なスタートを切ると、そこから自身のオリジナルである「Serendipity」「Hammock」「P.R.O」や、ガスリー・ゴーヴァンのカントリー・ナンバー「 Rhode Island Shred」を連打。中でも印象的だったのが「P.R.O」で、エモーショナルなタッピング・フレーズや難解なオブリを含んだコード・アルペジオなど、彼女の非凡な演奏スキルにあらためて驚かされただけでなく、より豊かになった表現力にも圧倒された。

5曲を終えたところでEdieeをステージに呼び込むと、「“Shred RACERS ”でぜひやってみたい」と語っていたレーサーXの「Scarified」を彼とのツイン・ギター編成でプレイ。オリジナルではポール・ギルバートが弾いたパートを(若き日のポールの写真入りTシャツを着た)Li-sa-Xが、ブルース・ブイエのパートをEdieeが担当し、特盛テクニカル・ツイン・ギターをビシッときめてくれた。これだけで「今日はもうお腹いっぱい!」と満足してしまうほどの充実した演奏だったが、“F2”はまだ始まったばかりである。

Ediee & Li-sa-X

Ediee Ironbunny

Ediee Ironbunny

Li-sa-Xが退場し、そのままEdieeのソロ・セクションに突入。出だしから目の覚めるようなタッピング・フレーズが炸裂するオリジナル・インスト「Number Eight」、“F1”でも演奏された“Shred RACERS ONLINE”のテーマ曲「Highside Racing」という2曲を、パワフルなドライヴ・サウンドと鮮やかなテクニックで華麗にさばいていく。続いてFukiがステージに登場すると、Edieeのギターからアグレッシヴなメタル・リフが放たれ、イングヴェイ・マルムスティーンの「 I’ll See The Light, Tonight 」がスタート。間奏パートではスウィープやタッピングを交えながら、獅子奮迅のごとき怒涛の高速ピッキングで鮮やかに長尺ソロを弾きコナして見せた(ちなみにEdieeは基本的にメタリック・ブルー・フィニッシュのコンバット・ギターズ製7弦モデルを使っていたが、同曲のみメタリック・レッドの6弦モデルを使用)。

Fuki

この後、和風の絢爛な衣装に身を包んだSAKIも合流して演奏されたのは、アニメ『鬼滅の刃』の主題歌である「紅蓮華」(LiSA)だ。オリジナルにはないタッピングのハモリ・フレーズやソロ回しなど、ギター的なトッピングがふんだんにまぶされたアレンジで“Shred RACERS”流に料理された「紅蓮華」は、原曲とはひと味違う充実の仕上がりとなっていた。またこの曲では、IRONBUNNYのメンバーであるKotono(vo)のアグレッシヴなダンスがフィーチュアされた場面もあり、よりエンターテイメント性が高まっていたことも付け加えておこう。

Kotono

SAKI

SAKI

FukiとEdieeが一旦ステージを離れると、マイケル・シェンカー・グループの「Into The Arena」を皮切りにSAKIのセクションがスタート。キラー“Fascist Vice”の7弦モデルを手に、タメを効かせたチョーキングで情感たっぷりに哀愁のメロディーを奏でる、熱いプレイで魅了してくれた。ここから彼女は、IRONBUNNYのKotono&Minami(vo)とともにMary’s Bloodのスピード・メタル・チューン「アルカディア」をプレイし、さらにFukiも加わったトリプル・ヴォーカル編成でIRONBUNNYの「 Lightning Speed」を畳み掛けるように激奏。それらの次に披露されたのは、事前のトーク・セッションでSAKIがFukiに歌ってもらいたいと熱望していたMary’s Bloodの「Wings」だ。どこまでも突き抜けるようなハイ・トーンと力強さが光るFukiの歌唱は同曲にばっちりはまっており、SAKIのギターとの相性も抜群で、今回が初めての共演というのは信じ難いほどの説得力を秘めたコンビネーションだった(ちなみにSAKIは、「Wings」と先の「アルカディア」に関しては7弦ではなくキラーの6弦カスタム・モデルを使用)。

Minami

“F2”もいよいよ終盤にさしかかると、3人のギタリストがステージに勢揃いし、この日のために制作されたスペシャルな楽曲「richromatic」が演奏された。このタイトルは“三原色”を指す言葉であるが、なるほど、同曲は三者三様のカラー(個性)がぶつかり合う三つ巴のバトル・ソングでありながら、一方で美麗なハーモニー・パートなども含んだ、三位一体となって紡ぎ出すギター・インストでもある。こうした深いレベルでのコラボレーションは前回にはなかったものであり、この日のハイライトであるとともに、“F2”の大きな功績だったと断言したい。

Ediee Ironbunny、Li-sa-X、SAKI

そしてショウのラストを飾ったのは、ゲスト・ヴォーカリスト3名も含んだ全アーティストが集合しての豪華セッション。演目はラウドネスの名曲「Crazy Doctor」だ。間奏におけるLi-sa-X→SAKI→Edieeという順番のソロ・リレーから、3人がタッピングでハモるキメのパートに至る展開は、快哉を叫びたくなるほどエキサイティングだった。また、キラーの“KG-Exploder”を手に両手タッピングを繰り出すという、高崎 晃へのリスペクトが滲み出たSAKIのナイス・パフォーマンスも忘れてはならない。

Fuki、Li-sa-X、Minami
Fuki、SAKI

こうして大団円を迎えた“F2”に続く“Shred RACERS ONLINE”の第3回となる公演“F3”も実施予定とのことだ。ラインナップはまだ発表されておらず、どんな顔ぶれとなるのか楽しみなのはもちろんだが、個人的には「richromatic」のようなコラボ曲が新たに生み出されることを期待している。世界中に配信される日本発の“速弾き”ライヴ・イベントがどういった動向を見せるのか、続報を待つとしよう。

ALL
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Shred RACERS ONLINE F2 2020.9.26 セットリスト

ベース:HAYATO
ドラム:和樹

Li-sa-X

1. Cha-La Head-Cha-La(影山ヒロノブ)
2. Serendipity
3. Rhode Island Shred(GUTHRIE GOVAN)
4. Hammock
5. P.R.O
6. Scarified(RACER X)[with Ediee Ironbunny]

Ediee Ironbunny

1. Number Eight
2. Highside Racing
3. I’ll See The Light, Tonight(YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE)
4. 紅蓮華(LiSA) [with Fuki、Kotono & SAKI]

SAKI

1. Into The Arena(THE MICHAEL SCHENKER GROUP)
2. アルカディア(Mary’s Blood)[with Kotono&Minami]
3. Lightning Speed(IRONBUNNY)[with Fuki、Kotono&Minami]
4. Wings(Mary’s Blood)[with Fuki]

Session

1. richromatic[Li-sa-X, Ediee Ironbunny and SAKI]
2. Crazy Doctor(LOUDNESS)[All member]