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ヤング・ギター2021年10月号では、アーニーボール・ミュージックマンとスターリン・バイ・ミュージックマンがラインナップする様々なギターの中から、ジョン・ペトルーシ・モデルに絞って徹底分析する特集を掲載。その誌面で紹介している8本のギターを、HAGANEのギタリストよしださくらが弾きまくるスペシャルな映像を公開中だ。前後編合わせてたっぷりとお楽しみいただきたい。
さて、当ページにはスケジュールの関係上、誌面に載せることができなかったインタビューを掲載させていたこう。現在アーニーボール・ミュージックマン社でCEOを務めている、ブライアン・ボール氏だ。氏には今回の主役であるジョン・ペトルーシ・モデルに関して、そして同ブランドの基本的な理念などについても語っていただいた。
パフォーマンスの邪魔をせず長時間演奏できる楽器は非常に重要なんです
YG:まず、基本的なことをお聞かせください。現在市場には多くのギター・メーカーが存在しますが、その中でアーニーボール・ミュージックマンというブランドはどのようなポジションにいると、ブライアンさんはお考えですか?
ブライアン・ボール:まず強調しておきたいのは、アーニーボール・ミュージックマンのギターがすべて、細部に至るまで細心の注意を払って設計・製作されているということです。新しいモデルを企画する時はいつも、ユーザーのみなさんに最高の演奏体験をもたらす楽器を提供するため、世界有数の腕を持つデザイナーとエンジニアたちが日夜努力を続けています。特にこだわりの強いプレイヤーのみなさんに満足していただくため、ユニークで革新的なデザインと機能を備えた、ハイエンドの限界を押し広げる楽器を製作する…。アーニーボール・ミュージックマンはそんなギター・ブランドだと言えます。
YG:兄弟ブランドであるスターリン・バイ・ミュージックマンに関しては、どのような存在だとお考えですか?
ブライアン・ボール:アーニーボール・ミュージックマンと同様の機能を持つギターを、より手の届きやすい価格帯でお届けするブランドです。特に若いプレイヤーに素晴らしい価値を提供したいと考えており、ミュージックマンというブランドの存在をみなさんに知ってもらう役割も果たしています。
YG:アーニーボール・ミュージックマンとスターリン・バイ・ミュージックマンのラインナップの中で、現在最も人気のあるモデルはどれでしょう?
ブライアン・ボール:ギターで言えば、現在はジョン・ペトルーシのモデルがトップですし、ベースで言えば“StingRay”は何十年も前からのベスト・セラーです。しかし“Cutlass”や“Sabre”といった新しいギター群も、年々売り上げや人気を上昇させています。
ちなみに歴史のある人気モデルに関してはほとんどいずれも、オリジナルが誕生した当時のパーツ構成で作り続けるようにしています。中には塗装やハードウェアの仕上げ、バインディングやフレット・マーカーといった、外観上のオプションを変更してきたものもありますが。それにベースの中には、5弦や6弦といった選択肢を追加したり、複数のピックアップを搭載したモデルもありますね。例えば“StingRay”は現在“StingRay Special”として再発されており、さらにショート・スケールに改変したモデルも存在します。その他にも今までに、実に数多くの傑作を生んできたという自負があります。
YG:今回の特集記事のメインである、ジョン・ペトルーシ・モデルについていくつか教えてください。最初の“JP”モデルが誕生したのは20年前のことですが、先ほどの話にもあったように現在はブランドを代表するモデルにまで成長しており、ラインナップの中で強い存在感を放っていますね。このような超プロ仕様のハイエンド・ギターが、世界中の人々に受け入れられている理由は何だと思いますか?
ブライアン・ボール:それはおっしゃる通り、世界中でも最高のギタリストたちが要求するスペックに対して、正確に応えられるよう設計しているから…それに尽きると思います。いわば精鋭とでも言うべきアーティストたちが使用する道具そのものを、顧客のみなさんがご自身で使用でき、その恩恵を自分の演奏で実感することができる。それは素晴らしいことですよね。また別の例ですが、ミュージックマンからシグネチュア・モデルを出しているアーティストが、急にギターが必要になった際、最寄りの楽器店に行って自分のモデルを手に入れた…という話をいくつか聞いています。
ミュージックマンのギターはどのお店にあるものもすべて同じ高い品質で作られていますから、彼らはそれを信用してくれていたんだと思います。
YG:ジョン・ペトルーシと共に新しいモデルを作る際は、どのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか? 常に新しいネタを投げ合っているわけですか?
ブライアン・ボール:そうですね。私たちとジョンは1つのチームですから、新しいエキサイティングな楽器のアイデアを絶え間なく交換し続けていると言えます。ジョンは先見の明があり、常に様々な案を頭の中に持っているんです。彼は私たちをどんどん追い込んでくれます(笑)。それに応えるのは、メーカーとして当然のことですね。楽しいアイデアが次々と送られてくるので、退屈することがないんですよ。
YG:ミュージックマンとジョン・ペトルーシのパートナーシップ20周年を記念して、“John Petrucci 20th Anniversary” 、そして“Majesty 20th Anniversary”という最新モデルがリリースされましたよね。これら20周年記念モデルの、開発コンセプトを教えてください。
ブライアン・ボール:“John Petrucci 20th Anniversary”では、ボルト・オン構造で作られてきた過去の“JP”シリーズの様々な要素を、1本に融合させることを目指しました。例えばボディーのフォアアーム・スクープ、フィギュアド・メイプル・トップ、ピエゾ・ピックアップ、ブースト機能…などです。そして“Majesty 20th Anniversary”に関しては、ジョンのシグネチュア・コレクションの中でも欠かせない存在となったこのモデルを改めて称えたい、それが目的でした。20周年記念モデルでは専用フィニッシュ、ゴールド・インレイ、木目の詰まったマホガニーのネックとボディー材などを採用して、よりグレードの高いものを目指しています。
YG:今の話にも出てきましたが、“John Petrucci 20th Anniversary”のボディー・トップの肘が当たる部分に入れられている、半円状の削り込み…フォアアーム・スクープは非常に独特ですよね。これは初代ジョン・ペトルーシ・モデルの特徴の1つであり、確か2016年に発表された“JP16”にも採用されていたと思います。今回、20周年の最新モデルに再びこのデザインが採用されているのは面白いですね。
ブライアン・ボール:そうですね。キャリアを通じて、自身の楽器に対するジョンの要求は常に変化してきました。それは彼の演奏スタイルが常に進化しているからで、弾き方が変わっても快適にプレイできるよう、楽器にも進化を求めていたということです。それにジョンの体格も年々変化していますし、それに伴ってデザインを変更しなければいけないこともありました。ジョンぐらい演奏する音数も機会も多いアーティストにとって、パフォーマンスの邪魔をせず長時間演奏できる楽器というものは、非常に重要なんです。
YG:細かい話をお聞きしていいでしょうか? “John Petrucci 20th Anniversary”に搭載されているピックアップはディマジオ“Crunch Lab”と“LiquiFire”で、これは2010年の“JPX”で採用されていた、ちょっと懐かしい組み合わせですね。このピックアップを選んだ理由は何ですか?
ブライアン・ボール:ディマジオの最新ピックアップである“Dreamcatcher”と“Rainmaker”は、“Majesty 20th Anniversary”の方に搭載することにしたので、それとは違う組み合わせにしたかったんです。ある意味過去の“JP”シリーズへのオマージュとして、“Crunch Lab”と“LiquiFire”ピックアップを“John Petrucci 20th Anniversary”に乗せたわけです。
YG:“Majesty”シリーズ全般について、以前から気になっていたことをお聞きしてもいいですか? 2014年に最初の“Majesty”が発売された時、ジョン・ペトルーシ・ファンの誰もがその革新的なデザインに驚きました。もっと分かりやすく言えば、見たことのない形に少しビックリしてしまいました(笑)。あれから7年が経ちましたが、ユーザーからの評価は現在のところ、どんな具合に落ち着いていますか?
ブライアン・ボール:新しい機種を発表するたびに…特にジョン・ペトルーシ・モデルの場合は、ファンのみなさんから非常に情熱的な反応が返ってきます。プレイヤーの方々にデザインの変更点やその理由を十分に理解してもらうため、我々自身がニュー・モデルを実際に弾き込んでみる必要があるんです。“Majesty”の場合は、いったん市場に充分に出回り、たくさんの方々に試奏してもらう時間が経った後は、圧倒的に好意的なフィードバックが返って来るようになりました。現在では、私たちが作っているギターの中でも最も売れているモデルなんですよ。
YG:“Majesty 20th Anniversary”のルックスで最も目立つ部分は、ボディーの中央に配置されているシールドと呼ばれる部分だと思います。最初の“Majesty”で既に採用されていましたが、これはどういう発想で誕生したものなのでしょう?
ブライアン・ボール:ボディーにメイプル・トップを採用するための、1つの工夫ですね。このデザインのおかげで独特な美しいルックスだけでなく、スナッピーなトーンを得ることができました。今まで常に様々な木材の組み合わせを試してきたんですよ。
YG:“Majesty”と同様に、アーニーボール・ミュージックマンには非常に独創的なデザインのアーティスト・モデルがいくつもありますよね。アルバート・リー・モデルを筆頭に、セイント・ヴィンセント・モデルも面白い形ですし、ジェイムズ・ヴァレンタイン・モデルも細かい仕様は非常に独特です。こういった他で見たことのないようなギターを生み出せるのは、何故だと思いますか?
ブライアン・ボール:楽器のデザインを新たなレベルに押し上げることに情熱を持っているスタッフがそろっており、プレイヤーの理想を実現するために、常に新しいものを作り出そうとしているからだと思います。また私たちは、同じ考えで音楽や楽器に接している何人ものアーティストたちと仕事をする機会を得てきました。そういった方々のために独創性の高いツールを作りたい、そういう気持ちがミュージックマンのデザインを際立たせているのだと思います。
YG:最後に、アーニーボール・ミュージックマンとジョン・ペトルーシのファンにメッセージをお願いします。
ブライアン・ボール:私たちが作る素晴らしいギター&ベースをサポートしていただき、本当にありがとうございます。これからも世界中のプレイヤーに驚きとインスピレーションを与えるような楽器を提供していきたいと思います。