アーティスト名 | JOE SATRIANI ジョー・サトリアーニ |
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アルバム名 | THE ELEPHANTS OF MARS ジ・エレファンツ・オブ・マーズ |
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サッチ師匠による前作からちょうど2年ぶりとなる通算18作目で、既発曲のPVを観る限りでは、名セッション・ドラマーのケニー・アロノフが再びレコーディングに参加しているようだ。ツアー等がすべてキャンセルとなったコロナ禍のロックダウン中に時間の制約なしに制作された作品で、これまで以上に視覚的な想像力を掻き立てる楽曲が多く、誤解を恐れずに言えばバンド・サウンドで迫るロック・ギター・インストというよりは、むしろ実験的な要素をふんだんに取り入れた異空間BGMといった雰囲気で、エキゾティックなSF映画のサントラ風ですらある。流麗なレガートや高速ピック・タップ、さらにワウやアーミングを駆使した独特の技巧フレーズも随所で登場するが、聴きどころとなるのはシンプルながら表情豊かに立体的な音像で迫るメロディーの数々と、伸びやかなロング・サステインが印象的なギター・トーンだろう。特にバラード調の「Faceless」と「Desolation」の美しさは絶品! ファンキー・フュージョン路線の「Pumpin’」をはじめ、「E 104th St NYC 1973」や「Night Scene」などでエレクトリック・ピアノが効果的に使用されている点も新鮮だし、「Not Of This Earth」の続編のような「Sailing The Seas Of Ganymede」の緊張感にもドキッとさせられる。本人が“理想的”と断言したクオリティの本作では、過去数作とはベクトルこそ異なるものの、実に“探索”しがいのある奥深い世界観を楽しむことができる。
【文】Masa Eto