ヤング・ギターの誌面で長年連載を続けてきたコラム『YG TUNE-UP FACTORY』が、ウェブ版にリニューアルして再スタート!
このコラムは、トップ・プロのシグネチュア・モデル製作現場に携わってきたESPギタークラフト・アカデミーの先生方が、誰にでもできるギターのチューンナップ、つまり調整方法を教えていく…というテーマーのもと、2017年1月号より2022年3月号まで、5年近くにわたり連載を続けてきた。このウェブ版では、過去に掲載された記事をもとに内容を再構成。モノクロ掲載だった誌面での画像もカラー化し、最新情報や追加要素などを随時加えて、より充実したクラフト&メンテ情報をお伝えしていくので、お楽しみに!
各パーツの状態を確認しよう
さて、今回のテーマは“ギターの健康診断”。本題に入る前に、まず最初に1つ質問をしよう。キミは自分のギターが本来の力を出せているか、知っているだろうか? 買ったばかりの新品のギター…もっと正確にいえば、工場から出荷された時のギターは最高のコンディションに整えられているものだ。しかし、日々弾いているうちに弦がビビる、ペグが固くて回しにくい、チューニングが安定しない…など、ちょっとしたトラブルを経験したことのない人はいないのではないだろうか。ただ、放っておいても大事には至らないので、そのまま弾き続けている人も多いと思う。
しかし! こうしたトラブルは、プロのクラフトマンに言わせれば「整備されていないポンコツ車に乗っているのと同じ」なのだそうだ。ギターをF1のレーシング・カーにたとえるなら、ギタリストはレーシング・ドライバー。ピット・クルーによって最高のコンディションに整えられた車に乗って、ドライバーはそのスキルを最大限に発揮し、見事な走りをみせることができる。同様に、プロのギタリストが素晴らしいパフォーマンスを行なえるのは、才能と努力で培われたスキルはもちろんだが、ピット・クルーにあたるリペアマンやメーカーのスタッフによって、しっかりと整備された抜群な状態のギターを使っているからこそ、さらに驚異的なプレイを生み出せるといえるのだ。弾き心地のよいギターを使えばテクニックの上達も早くなる!…そう期待するのも、決して間違いではない。
トラブルが起きた場合、パーツを交換することで改善をはかる方法もあるが、まずはキミのギターをあるべき状態に戻し、本来の状態を知った上で自分好みのテイストに変えていくよう、改造に進んでいくのがお薦めだ。
ヘッド、ネック、ボディー、コントロールなど、ギターは多くのパーツで構成されており(図1)、それぞれチェックすべきポイントがある。それを一通り下の表に“パーツごとのチェック・リスト”としてまとめていただいたので、第1回目となる今回は自分のギターを健康診断するつもりでチェックしてみよう。中でもビス(ネジ)に関して“緩みはないか?”という項目が多いが、ネジはギターの状態やサウンドを左右する大切なパーツであり、軽視してはいけいないことがお分かりいただけるだろう。
今後はこのリストに沿って解説を進め、メンテナンス編が完了したら前述のパーツ交換や改造、そしてギター製作…といった内容にも踏み込んでみたい。次回からは先生にバトンタッチし、順を追ってメンテナンスのやり方をレクチャーしていただこう。お楽しみに!
チェック・ポイント
図1◆各パーツの名称
パーツごとのチェック・リスト
ヘッド部
★ペグ
□取り付けナットは緩んでいないか?
□ツマミのトルク調整は適切か?
□裏面の取り付けビスが緩んでいないか?
★ストリング・ガイド
□サビなどの状態はどうか?
ネック部
★ナット
□溝が汚れていないか?
□弦が溝にフィットしているか?
□破損している箇所はないか?
★フレット
□汚れていないか?
□ヘコミやキズはないか?
□指板から浮いていないか?
★指板
□汚れていないか?
★ネック本体
□反りの状態はどうか?
□ジョイント部のボルトの緩みはないか?
ボディー部
★ピックガード
□ビスの緩みはないか?
★ブリッジ
□ビス関係の緩みやサビはないか?
□サドルの状態は?
□トレモロ・スプリングの調整は適切か?
★ストラップ・ピン
□緩みはないか?
配線・コントロール部
★ピックアップ
□出力バランスは適切か?
★スイッチ
□ノイズはないか?
□各ポジションでの不具合はないか?
★ポット
□ノイズが出ないか?
★ノブ
□緩みはないか?
★アウトプット・ジャック
□ノイズが出ないか?
□緩みはないか?
その他
□異音はないか?
□チューニングは安定しているか?