BAND-MAID結成10周年ツアー最終日、33曲を披露した横浜アリーナ公演!

BAND-MAID結成10周年ツアー最終日、33曲を披露した横浜アリーナ公演!

BAND-MAIDの結成10周年を記念した全国ツアー“BAND-MAID 10TH ANNIVERSARY TOUR”のファイナル公演が11月26日に横浜アリーナにて開催されたが、あまりに濃密かつ気合いの入った内容は今なお鮮明に脳裏に焼きついている。

「今日は横浜アリーナだから、それに10周年だし、気合いを入れてすごいすごいセトリにしてきちゃったからっぽ……ご主人様、お嬢様、(=ファンの呼称)楽しむ準備はできてますかっぽ!」

これはライヴ序盤の小鳩ミク(g, vo)のMCで、その予告通りにこの日のセットリストは実に全33曲(!)が用意されており、約3時間40分に及ぶ内容となっていた。もちろんただ単に長尺だったわけではなく、BAND-MAIDの特性を活かしながら魅せる緩急のついた構成はライヴ・バンドとしての自信を感じさせ、この瞬間にすべてを賭けんとする彼女達の気合いがみなぎっていた。

実際、「DOMINATION」で幕を開けたステージは、前のめりな楽曲のテンションと生々しくハード・エッジなバンド・サウンドがあいまってオーディエンスを瞬時にBAND-MAIDワールドにいざない、客席からはリフレインを叫ぶ大きな声が上がる。暖機運転など不要と言わんばかりにのっけから急激な盛り上がりを見せ、続けざまに哀愁のサビが光る「glory」、メランコリックな単音リフが印象的な「alone」、そして「Play」、「Unleash!!!!!」と切れ目なしで連打した冒頭5曲の流れは強烈なインパクトがあった。十分すぎるほどの弾数を用意していることもあってか、贅沢に感じられる曲配分である。また、シンガロングできる楽曲を使った盛り上げ方のうまさはさすがで、この辺りの手腕は全世界を相手に駆け抜けてきたBAND-MAIDならではの地力を感じさせた。

一気呵成にたたみ掛けた冒頭を経て、一転ミッドテンポの「Thrill」は、大地を踏みしめて闊歩するかのような重心の低いアンサンブルで突き進み、SAIKI(vo)の歌唱もよりストロングなスタイルでオーディエンスの心をつかみにかかる。その後、「Don’t you tell ME」の間奏に入ると、KANAMI(g)とMISA(b)がドラム・キット後方のより高い位置で向き合いながらソロ・バトルを披露。フリーで交互にフレーズを繰り出していき、その様を前に野太い歓声があちこちから上がっていた。

SAIKI
SAIKI Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

MISA_KANAMI
MISA & KANAMI Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

BAND-MAID 全景2
Pic: MASANORI FUJIKAWA

また、「influencer」の導入部分では、ゼマイティス製のシグネチュア・モデルを手にした小鳩ミクが悠然と舞台中央で仁王立ちになり、間をたっぷりとりながら力強くパワー・コードを鳴らしてオーディエンスの注目を一身に集める(そんな彼女の成長したたくましい姿を、のちほど小鳩のギターの先生であるKANAMIが絶賛する微笑ましいシーンもあり)。同曲では、音数の多い躍動感あるフレーズを得意とするMISAらしいベース・ソロを経て、KANAMIのギター・ソロに突入。尺的にはコンパクトながら、タッピングなども織り交ぜた閃光の如きフラッシーなリードを凝縮して聴かせるセンスが秀逸だ。一方、次曲のインスト「from now on」においては咽び泣くメロディアスなギター・フレーズがフィーチュアされていたりと、ギター・キッズ視点でも熱くさせられるバンドだということは今一度伝えておきたい。

小鳩ミク
小鳩ミク Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)
MISA
MISA Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

和気あいあいとしたメンバーのMCを挟み、優しくも力強さを兼ね備えた「Daydreaming」で一旦クール・ダウン。このセクションは「Memorable」や「about Us」などのバラードを配して、BAND-MAIDの“柔”の側面を存分にアピール。SAIKIのソウルフルな歌声がより際立ち、大きな拍手喝采を浴びていた。かと思えば、「Rock in me」が始まるとギターを置いてハンドマイクを手にした小鳩ミクがアリーナ外周をぐるりと歩いて回りながら歌唱し、オーディエンスのごく至近でパフォーマンス。アイドル性高めの立ち居振る舞いで魅了しつつ、曲が終わるタイミングでしっかりとメイン・ステージに戻ってくるところまで、さすがのエンターテイナーぶりを見せてくれたのだった。

さて続いては、SAIKIとKANAMIがアリーナ中央にあるサブ・ステージへ移動してスタンバイ。2人はスツールに座り、歌とアコースティック・ギターのみによる「Different」と「anemone」を披露する。先ほどのバラード・セクション以上にSAIKIによる情感豊かで心の機微が伝わる熱い歌唱はリアルに響きわたり、オーディエンスがその世界にグッと引き込まれていくのが分かる時間であった。特別なメニューはまだ終わらず。今度はメイン・ステージに運び込まれたグランド・ピアノのもとにSAIKIが向かい、何と弾き語りで「Choose me」を披露! バンド編成のオリジナル・ヴァージョンとはガラリと印象を変えたその姿形に驚かされるだけでなく、ドラマティックなアレンジが実に見事で、加えて、ここでもまた確かな歌の魅力に唸らされた。人前でのピアノ弾き語り自体が初だったとのことだが、いやはや恐るべきポテンシャルの持ち主である。続く「onset」は楽器隊のタイトなアンサンブルが光るインスト、また「Brightest Star」は小鳩ミクが全編でリード・ヴォーカルをとる曲だったりと、BAND-MAIDの魅力をあらゆる方向から多面的に伝えていく趣向で、長丁場であってもダレることがない。

KANAMI_SAIKI
Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

SAIKI_Piano
Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

ここまでで約2時間が経過、今度は今宵のお給仕(=ライヴの呼称)のために小鳩がしたためてきた手紙を読み上げる場面も。BAND-MAID結成に始まり、今のメンバーに出会えたこと、10周年を迎えること、横浜アリーナでお給仕を行なうことなど、すべてが奇跡のような話であると、BAND-MAIDに関わるすべての人たちに感謝を述べる。さらに恒例の“おまじないタイム”は言うまでもなく彼女の独壇場で、場内を独特の熱気でたっぷりと満たした後は、終盤に向けて「FREEDOM」から再びアクセルを踏み込んでいった。ここではAKANE(dr)のドラム・ソロも組み込まれており、演奏時以外の彼女が醸し出す雰囲気からは想像し難い(?)、スリリングなフィルを織り交ぜたアクティヴなドラミングは問答無用にエキサイティング。笑顔をふりまきながらも激しいツーバスを踏み込んでしまうAKANEの存在感もまたBAND-MAIDには欠かせないピースなのである(ドラム・ソロから超ファストなリズムの「BLACK HOLE」へなだれ込む展開も最高だった)。さらにMISAのベース・ソロをイントロダクションにした「DICE」もあり、プレイヤーとしての各人にフォーカスする構成は徹底している。

小鳩ミク
Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)
SAIKI
Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)
AKANE
AKANE Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)
MISA_AKANE
Pic: Viola Kam (V’z Twinkle)

その後、まだ発展途上だった10年前の貴重なお給仕映像などをサプライズ的に挟み(ちなみに当時、小鳩ミクは黒色のSTタイプ・ギターを手にしていたことを映像で知る)、最終コーナーは「NO GOD」から、未音源化のナンバー「Magie」、骨太かつグルーヴィに聴かせる「Manners」、写真/動画撮影OKとなったオリジナル・ヴァージョンの「Choose me」まで、テンション高めの楽曲を並列していく。2014年のインディーズ1stアルバム『MAID IN JAPAN』収録曲で、〈前へ〉という伸びやかなリフレインが印象的な「FORWARD」では、まばらな観客の前で演奏する時代のBAND-MAIDの映像が流れ、改めて10年の軌跡を感じさせる演出が感動を誘った。

そして、「広い会場でみんなと大合唱したいねと言って作った曲です」とSAIKIに紹介されたラスト・ナンバーは「endless Story」だった。その願いを叶えるがごとくオーディエンスによるシンガロングが広い会場にこだまし、声出しが解禁されている現在のお給仕でこそ真価を発揮する楽曲なのだと実感させられる。こうして全33曲+αを放ち、BAND-MAIDとは何たるかが分かるいわば“全部乗せ”のステージは、大きな余韻を残して幕を閉じた。

SAIKIが「横浜アリーナの舞台に立ってみたい」と口に出したのはおよそ5年前だったとMCで告白していたが、そんな夢の舞台に立ちつつも、「次は“ソールドアウトありがとう!”と言いたい」と、浮き足立つことなく正直な想いを吐露していたことが印象に残っている。また小鳩ミクは、「世界征服しなきゃならないから、もっともっと大きくなっていくっぽ!」と力強く宣言。結成10周年の節目を超えて、気持ちも新たにまだまだ前へ進んでいくことを決意した彼女達だが、この日のお給仕、そしてこれまでの軌跡を鑑みれば、おそらくそう遠くない未来に次なる夢も現実にしていくのだろうと思わされるのである。

BAND-MAID 全景
Pic: MASANORI FUJIKAWA
BAND-MAID-all
Pic: MASANORI FUJIKAWA

BAND-MAID @横浜アリーナ 2023.11.26 セットリスト

1 DOMINATION
2 glory
3 alone
4 Play
5 Unleash!!!!!
6 Thrill
7 Shambles
8 Don’t you tell ME -session-
9 After Life
10 Sense
-session-
11 influencer
12 from now on
13 Daydreaming
14 Memorable
15 about Us
16 Mirage
17 Bubble
18 Rock in me
19 Different ~Acoustic
20 anemone ~Acoustic
21 Choose me ~Acoustic
22 onset
23 Brightest Star (新曲)
-session~
24 FREEDOM
-dr SOLO-
25 BLACK HOLE
26 DICE
27 HATE? -session-
28 NO GOD
29 Magie (新曲)
30 Manners
31 Choose me
32 FORWARD

33 endless Story -session-

アーティスト公式インフォメーション
BAND-MAID Official Web Site