山本恭司(g, vo)、斎藤光浩(g, vo)というオリジナル・メンバー2人を核にしつつ、松本慎二(b)&小柳”Cherry”昌法(dr)をサポートに迎え、不定期的ながらライヴ活動を継続しているBOWWOW(現在の正式名称はギタリスト2人を示す“G2”をバンド名の末尾に加えた“BOWWOW G2”だ)。ここでは遅ればせながら、9月26日に恵比寿ガーデンホールにて行なわれた久々のライヴのレポートをお届けしたい。
ちなみに執筆前に、彼らが前回行なった2018年公演時のレポートを読み返してみたのだが。山本恭司はその時のアンコールのMCで「次が来年になるか再来年になるかわからないけど」と前置きしつつ、次回の開催を観客に約束して喝采を浴びている。まさかその後、新型コロナウイルスが蔓延して世界中のライヴ活動が封印されるとは、会場の誰も知るよしもない。とにかく彼らは約束通り、3年ぶりにステージへ戻ってきた。しかも今回は“45th Anniversary”という冠の下にであり、1978年にリリースされた彼らの代名詞的なライヴ盤『BOWWOW SUPER LIVE』を完全再現するという情報もある。開催前から特別なものになることが分かっているわけで、訪れるファンの期待も高まるというものだ。
ちなみに今もあらゆるコンサート活動が、新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って行なわれているのはご存知の通りで、このライヴでも「マスク着用、大声を出さない」が基本ルールとして適用されていた。その代わりに用意されていたのが、BOWWOW G2のロゴが大きくプリントされた応援用のスティックバルーン×2本。要はパンパンに膨らんだ硬めの風船を観客全員でバシバシ叩くことで、普通に拍手するより何倍も大きな音を会場中に響かせるわけで、これがかなりうるさくていい感じ(笑)。コロナ時代だけの特別な演出と考えれば、これもまた楽しからずや…である。
オープニングSEのギター・ソロが響く中、メンバーが照明に煽られながら順番に登場。「ROCK AND ROLL TONIGHT」の印象的なイントロからシャッフルのリズムでバンドが走り始めると、いよいよショウの幕開けだ。以前も感じたことだが、“G2”時代のBOWWOWは彼ららしい骨太ハード・ロックを基本に、より重心をズシンと下げたバンド・サウンドが特徴。今回のライヴでもそれは変わらない…と思っていたら、続いてお馴染みのハイ・スピードな「IN MY IMAGE」、リズミカルに跳ねる「ROLLING FREE」と、序盤は『ASIAN VOLCANO』(1982年)からの連発という予想外のハイ・テンションな展開に驚かされる。さらに『ERA』(2005年)の中でもコーラスが特に元気な「Rock Me」が続き、5曲目の勇壮で重厚な「TOUCH ME I’M ON FIRE」もまた『ASIAN VOLCANO』から(この曲を“G2”で披露したのはこれが初だとか)。ただ、1982年頃の彼らは喉を酷使するような暴力的ハスキー・ヴォイスが特徴的だったが、今の恭司は独特のコブシを効かせながら制御するような歌い方だし、光浩はより力の抜けた自然体。若い頃のアグレッションをしっかりコントロールしながら料理する辺りが、ベテランの成せる技だ。
光浩が歌う印象的なコード・リフの「ABNORMAL WEATHER」、バンド全体で一丸となってドラマティックに盛り上げるパワフル・バラード「BEHIND THE MASK」が前半を締め括ると、続いて予告通りにこの日のスペシャルなセクションが始まる。先述した『BOWWOW SUPER LIVE』の完全再現だ。直前のMCで恭司は「もちろん昔のままやってもいいんですけど、せっかく人生経験してきたんだから、微妙にヴァージョン・アップしてお届けします」と語っていたが、オープニングの「INTRODUCTION」から、オリジナル・メンバーだったキンサンこと佐野賢二(g)の雄叫び(通称“キンサケ”)まで恭司自身が再現するというこだわりが反映され、オールド・ファンの中にはニヤリとさせられた人も多かったはず。ちなみに揚げ足を取るならば、「微妙に」というのは少し語弊がある。あのライヴ盤を思い浮かべながら比較すると、「HEART’S ON FIRE」も「JET JIVE」も、何というか…全体的にものすごくドスが利いている。それは決して歌声だけの話ではなく、厚みの増したギター・サウンドも、フレーズの間の取り方も、各パートのコンビネーションもである。あのライヴ盤にパッケージされているのが抑え切れない若さのエネルギーだとすれば、40年以上経って代わりに手に入れたのは、人生経験から滲み出る迫力ということなのか。そして先述した通り、今の彼らは勢いを自由に制御して生み出すこともできる。
小柳のドラム・ソロもフィーチュアされたZEPを思わせる力強いインスト「EXPLOSION」に続いて登場したのは、BOWWOWのライヴでは定番中の定番である号泣ナンバー「STILL」だ。あのライヴ盤で聴ける22歳当時の恭司の早熟な表現力にはいつも驚かされるが、そこから40年以上を経て繰り出されるヴィブラートの説得力は、もはや誰にも真似できない領域に入りつつある。しかしこの日のギター的クライマックスは、この曲に続けて披露された彼のソロ・コーナーの方だった。テーマとなっていたのは“地球創生”。地球が宇宙の中でポツンと生まれ、海から生命が誕生し、恐竜やその他の猛獣たちがジャングルを闊歩、そこへ巨大な隕石が衝突して氷河期が訪れ、太陽光が届くようになるとまた人類を含む新たな生物が誕生するという、そんな物語をギター1本で表現していく。…実はこれは恭司自身がMCで説明した言葉をそのまま記しただけなのだが(苦笑)、こればかりは実際に観てもらわないと伝わらない世界。彼が継続して行なっているソロ公演“弾き語り弾きまくりギター三昧”でも披露されているとのことなので、実際に体感してみたい人は足を運んでみることをお勧めする。
そんなダイナミックなソロ・セクションが明けると、そこからは一気にエンディングへ向けて駆け抜ける、BOWWOW真骨頂のパワフル・ナンバー連発だ。まず繰り出されたのはスタジオ盤未収録ながらライヴで披露されることの多い「JUST A ROCKIN’ TIME」で、切れ味鋭いシャッフルのリズムで観客の身体を自然に動かしつつ、やはりドスを効かせていて迫力数倍。さらに『BOWWOW SUPER LIVE』には入っていなかったギター・オーケストレーション「PRELUDE」が挟まり(これがあるのと無いのとでテンションのアガり方が全然違う)、「GET ON OUR TRAIN」のリフが始まると、歓声を上げられないはずの観客席の熱が一気に跳ね上がる。間髪を入れないメドレー形式で「JUST ONE MORE NIGHT」がその熱をさらに押し上げ、最後は「THEME OF BOWWOW」だ。恭司が連獅子に扮して頭を振り乱しながら弾き歌うお馴染みの演出も、これだけ長く続ければもはや伝統芸能の域。ちなみにいつもなら過剰にハチャメチャなエネルギーを噴出するこの曲だが、この日は若干スピードを抑え気味の重厚なテンポで、F1カーと言うよりも暴走ロードローラーのパワー感だった(わかりにくい表現ですみません)。
バルーンのビシバシ音が一際大きくなったところで本編の幕は閉じる…が、すぐさまアンコールがスタート。一発目はいったん『BOWWOW SUPER LIVE』から離れ、勇ましくカラッと明るい「GETTING BACK ON THE ROAD」だ(これもまたもや『ASIAN VOLCANO』から)。そして間を置かず、やはり定番であるザ・フー・ヴァージョンの「SUMMERTIME BLUES」が始まる。勢いに任せて突っ走るのではなく、恭司と光浩=“G2”の聴かせる掛け合いソロもたっぷりとフィーチュアし、弾きまくりの中で大団円を迎えるのだった。
アンコール前のMCで恭司は、「まさかこの年齢でBOWWOWでこんな風にライヴをやっているなんて、20代の頃は想像していませんでした」と語っていた。確かにこの日本にロック・バンドは数あれど、45周年の冠を掲げてパフォーマンスを行なう存在が他にいくつあるだろうか。ぜひこの先も50、60と数を重ねていってもらいたい…と書くと無茶振りにも思えるが、確かローリング・ストーンズが2021年でデビューから58年のはずなので、決して夢物語ではないはず。といった具合に活躍を期待しながら、本稿を締めることにしたい。
BOWWOW 45th Anniversary:BOWWOW G2ライブ 2021年9月26日@恵比寿ザ・ガーデンホール セットリスト
1. ROCK AND ROLL TONIGHT(1982年『ASIAN VOLCANO』収録)
2. IN MY IMAGE(1982年『ASIAN VOLCANO』収録)
3. ROLLING FREE(1982年『ASIAN VOLCANO』収録)
4. ROCK ME(2005年『ERA』収録)
5. TOUCH ME I’M ON FIRE(1982年『ASIAN VOLCANO』収録)
6. ABNORMAL WEATHER(1982年『WARNING FROM STARDUST』収録)
7. BEHIND THE MASK(1977年『CHARGE』収録)
8. INTRODUCTION(1978年『BOWWOW SUPER LIVE』収録)
9. HEART’S ON FIRE(1976年『吼えろ!BOW WOW』収録)
10. JET JIVE(1977年『CHARGE』収録)
11. EXPLOSION(1978年『BOWWOW SUPER LIVE』収録)
12. STILL~guitar solo(1977年『SIGNAL FIRE』収録)
13. JUST A ROCKIN TIME(1978年『BOWWOW SUPER LIVE』収録)
14. PRELUDE~GET ON OUR TRAIN(1977年『SIGNAL FIRE』収録)
15. JUST ONE MORE NIGHT(1977年『SIGNAL FIRE』収録)
16. THEME OF BOWWOW(1976年『吼えろ!BOW WOW』収録)
[encore]
17. GETTING BACK ON THE ROAD(1982年『ASIAN VOLCANO』収録)
18. SUMMERTIME BLUES(1978年『BOWWOW SUPER LIVE』収録)