初のガールズ対バン・イベント開催
どのバンドにも“想定外の出来事”はつきものだが、彼女たちの活動はプラス面、マイナス面も含めて、結成時に思い描いていた未来とは違ったシチュエーションが次々に巻き起こる運命とともにあったのかもしれない。バンドのスタートとほぼ同時にコロナ・ウィルスによる世界的パンデミックが起き、それでも動画配信をはじめとした独自の活動によってアルバム・デビュー前から海外からも熱視線を受けることになったのは、プラスとマイナスが混在するNEMOPHILAならではのステータスだったと言えるだろう。
そんな状況から約7年──これも本人たちにとっても想像していなかった未来像だったはず──葉月(g)とむらたたむ(dr)が在籍する最後のステージが訪れることとなった。
今年の8月7日にリリースされたオフィシャル・アナウンスにて、突如発表されたふたりの脱退(むらたに関してはこの時点ですでに脱退となっており、以降のステージはサポート・メンバーとしての参加)。前月までは北米ツアーを廻っていて、その上首尾がSNSで伝えられていたところでの同告知であるから、ファン、関係者ともに大いに驚いたことは言うまでもない。2024年には音楽的支柱だったSAKI(g)がバンドを離れているが、これでオリジナル・メンバーの3/5が別の道を進むことになる。もしかしたらパンデミック以上に、当時の誰もが予知することのできなかった現状だと言えるだろう。
そしてふたりのラスト・ステージとなるのが、NEMOPHILAがプロデュースするフェス形式ライヴ・イベント“天壌無窮極音道中”だ。これまでも対バン・ツアーや“地平天成獄音道中”といったバンド発信の企画を開催してきた彼女たちだが、今回は初の“ガールズ対バン・イベント”となる。会場となるEX THEATER ROPPONGIに集いしは、NEK!、TRiDENT、East Of Edenという、いずれもNEMOPHILAとの共演がある実力派バンドたち。当然ながら会場はスタンディング・エリアから指定席まで、彼女たちの、そして葉月とむらたのNEMOPHILAメンバーとしての最後の姿を観ようとするファンでギッシリだ。すっかり涼しくなった10月中盤ではあったが、場内は半袖でも汗ばむくらいの熱気に包まれている。
NEK!

イベントはまず、NEK!からスタート。2024年に結成された4人組ロック・バンドの彼女たちは、トップ・バッターにふさわしく元気ハツラツとした音で会場を盛り上げ、Natsu(g)とHika(vo, g)の勢いのあるギターでフェス自体の雰囲気を一気に明るいものにしてくれた。
NEK! SETLIST
1. MAZE
2. Fool
3. Scrap Book
4. MUTE
5. ENDLESSGAME
6. GiMMiCK
7. Get Over
8. MAGiC VoX
9. Dreams!!!
TRiDENT

続いては、NEMOPHILAとは朝まで呑み明かしたこともある仲だというTRiDENT。ガールズ・バンドらしいポップで派手なルックスだが、レスポールをかき鳴らすASAKA(vo, g)のプレイを含めその音は非常にタイトでハード。ファンの合いの手も大きく、早速クラウド・サーファーが出現するほどの勢いだった。
TRiDENT SETLIST
1. KICKASS
2. メイヒテンセイ
3. Haha!
4. Candle
5. NEO FUTURE
6. NEW ERA
7. CRY OUT
8. be with you
East Of Eden

East Of Edenは独自のカラーを持ったバンドだけに、フェス形式ではあったとしても、一気にステージを自分たち色に染めていく。7弦ギターを弾くYuki(g)のテクニカルなプレイはもちろんのこと、ヴァイオリンのハイ・ピッチなフレーズと5弦ベースのクランチィな低音の対比がカッコよく、新曲「Ghost Sequence」の(ほぼ)初披露もあり、前2バンドとはまた違ったアプローチでフロアを大いに沸かせてくれた。
East Of Eden SETLIST
1. Telepathic
2. Shooting Star
3. Ghost Sequence
4. Chasing The Moon
5. IKIZAMA
6. Evolve
短い時間ながらそれぞれの個性を見せてくれた3組だが、どのバンドも自分たちのワンマンであるかのようなレスポンスを引き出していた。これはもちろん彼女たちのサウンドの魅力が第一だが、「今日のバンドは全部好きだ!」という広い視野を持ったオーディエンスたちの熱狂力にもアッパレと言いたい!
NEMOPHILA:塊となって放たれる5つの出音

イベント開始から約3時間、ついにNEMOPHILAの出番がやってきた。オープニングSEに乗り、むらたたむ、葉月……と順々にメンバーがステージへと出てくる。いつもどおりの登場シーンではあるが何か意味深にも感じてしまうのは、やはり本日が特別なステージだからか…。この日は今年6月からバンドにジョインし、先の韓国公演でもサポートを務めたiKAを擁するツイン・ギター体制。壇上のプロダクションもバンド・ロゴのバックドロップと楽器類のみと非常にシンプルなのは、この日もいつもどおり自分たちのライヴを全力で見せるだけ……という気持ちの表れなんだろうか。
そしてショウは「アナタダレ」で幕を開ける。mayu(vo)のシャウトが轟くと、会場のヴォルテージは急上昇! 同日としては初の純粋なツイン・ギターということもあり、音圧もこれまでにないものだ。4人編成となってからのヘヴィ・グルーヴ・チューンで、アイバニーズ製シグネチュア・モデル“HZK1”を構える葉月は、グッと腰を落とし弾きっぷりでも重々しさを作っている。もちろんむらたのドラミングも最初からビシビシのタイト感を誇り、5つの出音がギュっと塊となって放たれていく。そしてその音に向かってオーディエンスは手を挙げ声を上げ、全力で応えていくのだ。




葉月のプレイでスタートする「OSKR」は、現ギター・コンビのうま味が堪能できる1曲だった。真っ黒のE-II“EC-7 ET”を操るiKAはあくまでもサポート的な立ち振る舞いではありつつ、エッジの効いた刻みを常に鳴らし続けるからこそ、スタジオ・テイクとはまた違ったガチガチした曲として轟く。交互に弾くショート・フレーズの掛け合いでも息はぴったり。mayuの歌も自然と突っ込み気味になり、それに拍車をかけるようにフロアではタオルがビュンビュンと回されていった。続く「開花宣言」でもmayuの「はづきぃぃ!」の声でギター・ソロが始まり、そこにiKAがハーモニーを重ねることで、こちらもスタジオ・テイクよりも断然スリリングかつ肉感的なリード・パートとなった。ラストのチョーキングもバシッとキマった!

ここで最初の挨拶が入るが、メンバーについては触れず。もしかしたら、逆に自然体のライヴで本体制をシメようというのか? それもNEMOPHILAらしいのかもしれない。
「ここからは地獄と化します。イケますかーっ!?」の合図で始まったのが、そのとおりのヘヴィ・チューン「ZEN」。mayuのグロウルにも一層力が入る。そんな曲調だからこそなのか、葉月はお立ち台に座り、すっと足を伸ばしながら妖艶かつ軽やかにプレイ。轟々としたギター・フレーズをすまし顔で弾く、穏やかな彼女の個性がより出たひとコマなのではないだろうか。片やiKAは足を踏ん張り迫力の表情でギターを弾く。この両名のコントラストはバンドの多様性をより広げる大きな要素になってきていただけに、今日が最後というのは改めて惜しい。
このセクションはうねる重低音がテーマのようで、ここから「BRAINWASH」「-業-」が連続して演奏された。「BRAINWASH」のブレイクダウン、ベースとドラムが一体化する「-業-」のイントロなど、ガールズ・バンドでこのヘヴィネスを出せるのは世界中探しても彼女たちだけだと言い切れる。ハラグチサン(b)は腕を大きく動かし8分を刻み、むらたもまるでドラムに沈み込むかのようにビートを打ち出す。その上であえてラフにギターを弾くというのが、このグルーヴの作り方だ。


それぞれのポジティヴな道に向かって
セットも中盤となり、このタイミングで葉月、むらたの脱退についてmayuから語られた。とはいえ経緯を説明するようなものではなく、ハラグチサン、iKAの挨拶に次いで彼女が見せたアクションは“ハグ”。葉月、むらたと、ゆっくりと抱き合う。途中言葉を交わしているようにも見えた。
しんみりとしてしまうシーンでもあったが、そこは地獄のゆるふわバンドだ。「歌詞はポジティヴだけど、地獄にする!」で始まった「RISE」で空気は一片、フロアにはサークル・ピットも出現し一気にカオティックに! “強く生きるために進もう”“必ず越えて行ける未来信じて”といった同曲の歌詞は、まさに今の彼女たちにピッタリでもあり、今バンドは変革の真っ只中で、それぞれポジティヴな道に進もうとしているというこの瞬間のメッセージそのものだ。フロアも前へ前へと押し寄せていく。


曲は進み、いよいよセットは終盤に。1stアルバム収録の「鬼灯」はSAKIと葉月のシュレッド・リレーがスリリングなナンバーだったが、当コンビでもそれは負けていない。フル・ピッキングからタッピング〜チョーキングという葉月の十八番を受けて、iKAは男前なワウ・ワークで自身の強みをアピール。そこに葉月が歩み寄り、肩を並べてのツイン・ハモもキメていく。上手ではハラグチサンの扇風機ヘドバンも炸裂だ!
このギター・ソロ・アプローチは「雷霆 -RAITEI-」でも惜しげもなく繰り出され、こちらではさらにタッピングでのハモりも披露された。そしてmayuの「ラストの曲!」との掛け声でスタートしたのが「OIRAN」。NEMOPHILAにとって初のオリジナル曲であり、バンドのコンセプトの指針にもなった曲だ。今聴いても和テイスト、7弦ギター&5弦ベースでのヘヴィ・ロック感、そしてキャッチーなコーラスとが融合した、彼女たちのアイデンティティそのものを具現化した曲だと感じさせてくれる。“METAL WEEKEND 2019”で初披露して以降、代表曲として何度もプレイされた音像はいつもどおりかもしれないが、エモーショナル度は確かに違った。iKAに次いでリードを取った葉月だが、最後のチョーキングとともに上を見上げるような仕草は、そのサステインを噛み締めているかのよう。すぐさまツイン・パートに入り、怒涛のラストに向かって会場一体で曲は進んでいった。



「OIRAN」のアウトロも終わり、ギターを掲げ退場していく葉月。ステージは暗転するが、当然オーディエンスからの歓声が止むことはない。ここでアンコールがないなんてことはないだろう……果たしてステージは明転し、衣装を変えたメンバーが再登場。これには割れんばかりの拍手だ。
「本当に最後の最後、一発かます!」というセリフと「ウォォ!」という咆哮で始まったのは「REVIVE」。1stアルバムの1曲目であり、初めて5人で有観客ライヴを行なった渋谷公演の公演名にも入れた本ナンバーを外すことなんてできないに決まっている。葉月のヘヴィ・リフは自身のヘドバンとともに激しさを増し、ここまで立ちっぱなしで疲労感はピークのはずのフロアにもサークルができ、このメンバーでの最後の演奏を一緒に盛り上げようというファンたちの気概は会場の隅々まで充満していく! 彼女たちの曲のなかでも特に明るいコーラス・パートを持った曲であり、会場全体を照らす真っ白い照明とも相まって、暁光のなかでプレイしているかのようだ。
葉月も最後となるであろう当曲のタッピング・ソロを執るが、その表情に気負いはなく、むしろ清々しさが表れているように見える。逆にハラグチサンは眉根を寄せて、寂しさを振り払うかのように気合いを入れて吠えている……これも当ライヴでの印象的なシーンだった。
そして「REVIVE」エンディングの音も消え、全13曲の演奏は終わった。記念撮影を挟み、メンバーはステージをあとにしていく。葉月とむらたは最後までステージの左右へと足を運び、ゆっくりと挨拶をし、何度もお辞儀をしてステージ袖へと消えていった。

実はセット途中のMCにて、この日の気持ちをマイクに乗せていた葉月とむらた。当日だけのメッセージを公開するのは無粋とも言えるが、ここに葉月の言葉を要約して紹介したい。
「カッコよくいこうと思ったんだけど最初から涙腺がヤバくて(苦笑)。7年間、皆さんありがとうございました。7年はスゴく長い時間で、みんなとともにかけがえのない時間を過ごしたなと思っています。楽しいことだけじゃなくて、しんどかったこととか、コレできるのかな?ということもみんなで乗り越えてきたよね。私たちは違う道を歩むんですけど、音楽を続けていけば道は交じり合うと思うので、最後まで笑顔でいたいなと思います。本当に7年間ありがとうございました!」
彼女の言葉どおりメンバーはそれぞれの道を歩んでいくが、音楽の道はすべてどこかで交錯する。必ず交わるタイミングが訪れるはずだ。
ライヴ後も目を真っ赤にしていた葉月。しかしそのステージは「これまでで一番100点が出た気がします」と伝えてくれたほど、いい演奏、いい表情が届けられたものになったようだ。葉月、むらた両名の脱退は、この7年間のバンド史において最も大きな想定外だったことだろう。ただしこれからの行動で、この出来事を4人にとってプラスに変えることもできるはず。次なるひと足で、それぞれ自らの道を開いていってほしい。葉月、むらたたむ、そしてNEMOPHILAの今後にも大いに期待!
East Of Eden SETLIST
1. アナタダレ
2. OSKR
3. 開花宣言
4. ZEN
5. BRAINWASH
6. -業-
7. RISE
8. Just Do It!
9. VS:EGO
10. 鬼灯
11. 雷霆 -RAITEI-
12. OIRAN
[encore]
13. REVIVE
葉月の最新インタビューをヤング・ギター最新号に掲載!
なお、11月10日発売のヤング・ギター2026年12月号にて、当イベント後日に行なわれた葉月の最新インタビューを掲載。NEMOPHILAメンバーとしてのラスト・ライヴ、KOIAIの最新映像作品『KOIAI LIVE TOUR 2026「Starting Over」 in TOKYO -HEAVY KAWAII FES 2026-』について語る…!!



