２月８日（木）・９日（金）の２日間にわたって、プリティ・メイズのヴォーカリスト：ロニー・アトキンスがソロ名義で来日。３枚のアルバムを引っ提げた力強いパフォーマンスで、待ち望んだファンを魅了した。
肺がんと診断され、人生を見つめ直したロニーがソロ・キャリアの道を拓いたのは2020年のこと。それから2021年に『ONE SHOT』、2022年に『MAKE IT COUNT』、そして昨年は3rd『TRINITY』…と順調にリリースを重ねてきたことがすでに偉業とも言える上、ちょうどコロナも鎮まったタイミングで、こうしてデンマークからはるばる日本のファンに会いに来てくれたのだった。
セットは時折プリティ・メイズの楽曲を挟みつつ、基本的にはソロ３作品からのレパートリーが中心だ。ポジティヴ精神に満ちた良質なハード・ロック・ソングの数々は実に心地よいサウンドで、昨年10月に出た『TRINITY』の楽曲にもファンの反応は上々。中でも「Paper Tiger」はサビの大合唱になり、ロニーから「なんてラウドなんだ！ カワサキは最高だ!!」とお褒めの言葉がかかるほどだった。
演奏前に、楽曲のエピソードを明かしてくれることもあった。「娘に子供が出来たと言われて、おじいちゃんになるなんて思ってもみなかったけど…その子のために書いたんだ」と言って「Soul Divine」、「これは妻に向けた曲」と「Miles Away」…身近な人への思いが創作のインスピレーションに繋がり、音楽として形に残っていく。病をきっかけに動き出したともいえるこのソロ活動は、それゆえに彼の人生の新たな拠り所になっているだろうことが自然と感じられた。
また、筆者が観覧したのは２日目公演で、この日は中盤にちょっとしたアコースティック・セットが用意されていた。観客の手拍子も加わり、プリティ・メイズの「Sister Sinister」や先述の「Miles Away」、そしてKISSのカヴァー「Hard Luck Woman」を披露し、ハードなショウの合間に良いアクセントを添えてくれた。
ロニーのバックを固めるのは、プリティ・メイズの元ドラマー：アラン・ソーレンセン、現在プレイをキーボードとリズム・ギターの兼任に加えロニーのソロ作３枚ともプロデュースを手掛けるクリス・レイニー（g, key）。そして、ソロ・アルバムに参加しているポンタス・エグバーグ（b／キング・ダイアモンド）、サイラのマーカス・スネソンがリード・ギターという布陣だ。マーカスは『TRINITY』で数曲に参加しており、自身がソロを弾いた「Via Dolorosa」「Godless」などをはじめ、その華麗なテクニックで楽曲をドラマティックに盛り立てていた。
アンコールは「Future World」を筆頭に、プリティ・メイズの人気ナンバーで固められた。メタリックなリフとピアノの掛け合いはいつ聴いても強烈で、新たに大歓声が沸き起こる。「Back To Back」「Rodeo」、そして「Little Drops Of Heaven」で盛大に幕を閉じた。
まさに不屈の精神で健在ぶりを見せてくれたロニー・アトキンス。2019年より活動を休止していたプリティ・メイズも、今年は“充電完了”とばかりに再始動を果たし、ヨーロッパの夏フェスへ出演が決定している。ロニーには今後もどうか体を労りつつ、バンドやソロでその歌声を聴かせ続けてほしいと願った夜だった。
ロニー・アトキンス 2024.2.9 ＠川崎クラブチッタ セットリスト
1. Rising Tide
2. I Prophesize
3. If You Can Dream It (You Can Do It)
4. We Came To Rock *
5. Make It Count
6. Paper Tiger
7. Soul Divine
8. Via Dolorosa
9. Godless
10. Sister Sinister（Acoustic）
11. Miles Away（Acoustic）
12. Hard Luck Woman（KISS cover）（Acoustic）
13. Real
14. Trinity
15. A Place in the Night *
16. One Shot
［encore］
17. Future World *
18. Back to Back *
19. Rodeo *
20. Little Drops of Heaven *
* プリティ・メイズ楽曲
