アニソンでシュレッド! Shred RACERS ONLINE “F3”配信ライヴ・レポート 2021.3.4

アニソンでシュレッド! Shred RACERS ONLINE “F3”配信ライヴ・レポート 2021.3.4

昨年8月に第1回、9月に第2回が行なわれた、ヤング・ギターと文化放送主催の配信ライヴ“Shred RACERS ONLINE”。これまでにEdiee Ironbunny(IRONBUNNY)、YUI(CYNTIA)、Seiji&Yuki(D_Drive)、Li-sa-X、SAKI(Mary’s Blood他)といった日本が誇る“速弾き”の使い手たちが出演し、国内外の視聴者に熱いロック・ギター・パフォーマンスを届けてくれた。

そんな“Shred RACERS”の第3弾となる“F3(フレット・スリー)”が、去る3月4日に開催。約5ヵ月のインターヴァルを挟んで実施された今回のテーマは、“アニソン”である。本記事の下部に掲載しているセットリストを見ていただくと一目瞭然だが、昭和の名作から現代の国民的タイトルまで様々な人気アニメの主題歌や挿入曲がセレクトされており、各アーティストのオリジナル・ナンバーやHR/HMの定番曲のカヴァーが中心だった前2回とは異なる趣向のイベントとなった。出演ギタリストは、これが2度目の“Shred RACERS”参戦となったYukiとSAKI、そして今回初参加となる国内屈指の多弦ギター・マスター:ISAOの3人。さらにゲスト・ミュージシャンとしてヴァイオリニストの星野沙織が参加した他、ヴォーカルでは声優の森久保祥太郎、SAKI(CYNTIA)、EYE(Mary’s Blood)、 さくら“シエル”伊舎堂(Damian Hamada’s Creatures)らが、強烈な歌唱でイベントに花を添えた。ライヴ全編を通してリズム隊を務めたのは、前2回同様、HAYATO(b)&和樹(dr)のチームである。

さて、“アニソン”という新たな切り口で企画された今回の“Shred RACERS”だが、もう1点これまでと異なるポイントとして言及しておくべきことがある。それが、本イベントのオープニング・アクト出演をかけたオーディションの開催だ。募集されたのはヴォーカル1名およびギター1名で、出演希望者はMary’s BloodのSAKIが楽曲制作を手掛けた課題曲「悶絶歌」の演奏動画をSNS上にアップする形でオーディションに参加した。その結果選ばれたのが、Symphonia Quardeadといったバンドで活動中のReiji(g)と、ヴォーカリストの神谷レイラの2人。イベント当日には、上述の「悶絶歌」と「めぐりあい」が披露された。バラード調の原曲をモダンなラウド・ロックへと大胆にアレンジした後者では、ピエロ風(?)のメイクを施した奇抜なルックスのReijiが、ヴォーカルの裏でもお構いなしに両手タッピングやスウィープによる派手なリックを連発。オーディション合格者としての矜持を感じさせる、堂々たる演奏で先陣を切ってくれた。

神谷レイラ
神谷レイラ
Reiji(Symphonia Quardead etc.)
Reiji(Symphonia Quardead etc.)
HAYATO
HAYATO
和樹
和樹

ISAO

ISAO
ISAO

イベント本編の一番手を務めたISAOは、ESPの8弦シグネチュア・モデル“SNAPPER-8 ISAO Custom “RAIDEN-8″”を手に「Z・刻をこえて」からショウをスタート(ヴォーカルはCYNTIAのSAKI)。原曲のポップで軽快な雰囲気は踏襲しつつも、低音弦を活かしたヘヴィな刻みやブラッシング、指板を広く行き来するオブリなどを交えた独特なギター・アレンジが光る。また間奏のソロのみならず、曲の終盤でも「まだだ、まだ終わらんよ!」とばかりに連打された流麗なスウィープも彼ならではのプレイだ。続いて、ヴォーカルがEYEに交替して演奏されたのは、ストレートな’80年代HR/HMナンバーの「TOUGH BOY」。伸びやかな高音と力強いハスキー・ヴォイスを的確に使い分ける彼女の歌唱は、この曲にどんぴしゃでハマッており、ISAOの奏でるシンプルでワイルドなリフと相乗しながら、快活なアンサンブルを作り出していた。

3曲目の「オベリスク」では星野をステージに迎え入れ、5人編成に。言うまでもなく、彼女のヴァイオリンが加わったことでアンサンブルの雰囲気がガラッと変わり、優雅かつ幻想的なサウンドで視聴者を引き込んでいく。特にギター、ヴァイオリン、ヴォーカルが即興的な演奏で絡み合いながら、一気に盛り上がるエンディング・パートは圧巻のひと言だった。そしてISAOのセクションの最後を飾ったのは、彼と星野のユニット:soLiのオリジナル・ナンバーである「Opening Gambit」。“アニソン”という今回のテーマからは外れる選曲だが(しかし“ゲーム音楽”というテイストを感じさせる)、ギターとヴァイオリンがユニゾンで奏でる甘美なメロディーがあまりに強力で、普段インストに馴染みがないようなリスナーをも虜にしてしまったに違いない。

星野沙織
星野沙織

SAKI

SAKI (Mary's Blood、AMAHIRU、NEMOPHILA)
SAKI (Mary’s Blood、AMAHIRU、NEMOPHILA)

星野の鮮やかなテクニックが冴え渡った独奏を挟み、キラー・ギターズの最新シグネチュア・モデル“KG-Fascinator Seven The Empress”を手にしたSAKIがステージに登場。さくら“シエル”伊舎堂をヴォーカルに迎えて演奏した1曲目の「Exterminate」は、ヴァイオリンとギターが織りなす伴奏に、シエルの人間離れした(まさに改臟人間ならではの!)力強いハイ・トーン・ヴォイスが乗る美麗なシンフォニック・メタル・サウンドが実に心地よい。続く「荒涼たる新世界」は、SAKIとシエルの両名が縁を持つ聖飢魔Ⅱのカヴァー。突き抜けるシャウトと王道のメタル・リフの組み合わせはまさに鉄壁で、初共演の2人ながら抜群のチーム・ワークを見せつけてくれた。そして3曲目に披露されたのは、SAKIのプロ・デビュー10周年を記念した自身初のインスト曲「BRIGHTNESS」である。ライヴで演奏されるのは今回が初めてであり、注目していたファンも多かったことだろう。速くて激しいリフ・ワーク、メロディアスなリード、シュレッドたっぷりめのソロといった、SAKIというギタリストを端的に表現する要素がちりばめられた同曲でのパフォーマンスは、この10年間における彼女の成長ぶりをしかと実感できるものであった。

さくら“シエル”伊舎堂
さくら“シエル”伊舎堂

そんなSAKIのセクションを締めくくったのは、「閃光ストリングス」「ペガサス幻想」という『聖闘士星矢』関連の楽曲2連発だ。中でもCYNTIAのSAKIとEYEのツイン・ヴォーカル編成で演奏された「ペガサス幻想」は、昨年Mary’s Bloodが発表したアニソンのカヴァー・アルバム『Re>Animator』に収録されたアレンジと同様の濃厚メタル・ヴァージョンで、音数多めのギターが終始大暴れ。小宇宙を感じずにはいられない、燃え上がる闘志のごときプレイが噴き出したのだった。

SAKI(CYNTIA)
SAKI(CYNTIA)

Yuki

Yuki(D_Drive)
Yuki(D_Drive)

インスト・バンド:D_Driveでの活動がメインのYukiにとって、ヴォーカル入りの編成で演奏する機会はあまりないという。それ故、数名のヴォーカリストとコラボレーションできる“Shred RACERS”のようなイベントは彼女にとって大きな楽しみであり、かつ刺激的でもあったようだ。実際、歌の裏で満面の笑みを浮かべながらがっつりとリズム・ギターを刻む彼女の姿は、ファンの目にも新鮮に映ったことだろう。一方で、リード・プレイヤーとしてのYukiの実力も随所で遺憾なく発揮。1曲目の「限界突破×サバイバー」からスリリングなタッピング・リックを含んだ20倍界王拳のごとき疾風怒濤のソロで魅せ、2曲目の「ハチノジディストーション」でも彼女らしい巧みなフレージングを繰り出していた。

EYE(Mary's Blood)
EYE(Mary’s Blood)

これら2曲を歌ったEYEに加え、さらに森久保祥太郎をステージに呼び込み、E-Ⅱの7弦モデルを駆使したヘヴィかつグルーヴィなバッキングが際立つ「LIGHT of JUSTICE」をプレイ。同曲は森久保が主役の声を務めている『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』のテーマ・ソングだが、続く4曲目も彼が主要キャラを演じた『NARUTO -ナルト-』の主題歌「Re:member」だ。声優だけでなくミュージシャンとしても長いキャリアを誇る彼のパフォーマンスは実にロック・スター然としており、一瞬で見る者を引き込む絶大な磁力を発していた。パワフルで色気に満ちた歌声と、Yukiのハードなギター・サウンドとの相性も抜群である。そして5曲目に演奏されたのは、ギター・インストにアレンジされた『ルパン三世』のテーマ曲。お馴染みの愛器:ESP“HORIZON-Ⅲ”を手に、主題のメロディーをなぞりながらも豊富なボキャブラリーを活かした多彩なフレーズを展開し、彼女の真骨頂を見せつけてくれた。

森久保祥太郎
森久保祥太郎

Session

“Shred RACERS”恒例のセッション・タイムでは、まずSAKI&Yukiのギター・チームにヴォーカルのSAKIとヴァイオリンの星野が組み合わさったスペシャル・ユニットで「WILD EYES」が披露された。イベントに先立って公開されたミュージック・ビデオと同様、着物風の衣装に身を包んでステージに登場した4人が躍動するその様は、豪華絢爛の一言に尽きる。原曲を歌う水樹奈々をリスペクトして止まないSAKIは、元の歌唱の細かいニュアンスまで見事に再現しつつ、彼女ならではの力強いヴィブラートなどで独自の色もしっかりと付加。そのヴォーカル・ラインに寄り添いながら、楽曲に幽玄な美しさをもたらす星野の演奏も耳を捕えて離さない。ぜひまたこのラインナップでの共演が見たくなる、今後に期待せずにはいられない素晴らしいコラボレーションとなった。

そして全出演者がステージに登場し演奏されたのは、もはや国民的アニソンと呼んでも差し支えない「紅蓮華」だ。間奏ではお約束の楽器陣によるソロ・リレーが展開されたが、ここでISAOは唐突に愛器をフロアに置いて『北斗の拳』に登場する某お爺さんの有名な場面を再現。まさかのギター放置プレイにチャット欄がざわついていたことも、ここに付け加えておきたい。

毎回異なるアプローチで視聴者を楽しませてくれる“Shred RACERS”。“アニソン”を謳った今回も充実の配信ライヴとなったが、果たして次回は…!?

Shred RACERS “F3”
Shred RACERS “F3”

Shred RACERS ONLINE F3 2021.3.4 セットリスト

※()内はオリジナルのアーティスト/アニメ作品名

ベース:HAYATO
ドラム:和樹

OPENING ACT:Reiji&神谷レイラ

1. 閃絶歌(作曲:SAKI、ギター・アレンジ&演奏:Ediee Ironbunny)
2. めぐりあい(井上大輔/『機動戦士ガンダムIIIめぐりあい宇宙編』)

ISAO

1. Z・刻をこえて(鮎川麻弥/『機動戦士Zガンダム』)
2. TOUGH BOY(TOM★CAT/『北斗の拳2』)
3. オベリスク(シェリル・ノーム starring May’n/『劇場版 マクロスF 虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜』)
4. Opening Gambit(soLi)

ヴォーカル:SAKI(1)、EYE(2, 3)
ヴァイオリン:星野沙織(3, 4)

SAKI

1. Exterminate(水樹奈々/『戦姫絶唱シンフォギアGX』)
2. 荒涼たる新世界(聖飢魔Ⅱ/『テラフォーマーズ リベンジ』)
3. BRIGHTNESS(SAKI)
4. 閃光ストリングス(CYNTIA/『聖闘士星矢Ω』)
5. ペガサス幻想(MAKE-UP/『聖闘士星矢』)

ヴォーカル:SAKI(1)、EYE(2さくら“シエル”伊舎堂(1, 2)、SAKI(4, 5)、 EYE(5)
ヴァイオリン: 星野沙織(1)

Yuki

1. 限界突破×サバイバー(氷川きよし/『ドラゴンボール超』)
2. ハチノジディストーション(桂小五郎/『幕末Rock』)
3. LIGHT of JUSTICE(森久保祥太郎/『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』)
4. Re:member(FLOW/『NARUTO -ナルト-』)
5. Lupin The Third(『ルパン三世』)

ヴォーカル: EYE(1, 2, 3)、 森久保祥太郎(3, 4)

Session

[SAKI(vo)、 SAKI(g)、 Yuki(g)、 星野沙織(violin)]
1. WILD EYES(水樹奈々/『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』)

[ALL CAST]
2. 紅蓮華(LiSA/『鬼滅の刃』)